Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

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第二章 勝負の三年間 一年生編

第三十二話 「可能性は高くなる…」

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 八時四十三分、緑石北サッカー場のロッカールームへ向かう山取東高校女子サッカー部員。

 着替えていると、舞子はどこか心配そうに綾乃の横顔を見つめる。


 
 「どうしたの?綾乃ちゃん」



 綾乃のいつもと違う表情を見た舞子が尋ねる。綾乃は舞子の目を見つめると、僅かに顔を俯ける。



 「実は先程、会場へ向かっている時に…」



 綾乃は列車内での出来事を舞子へ話す。話を聞き、舞子は小さく数回頷く。



 「『強豪校』ってのを盾にしてるのかもね。山東って北東に勝ったことないらしいし」



 腕を組む舞子。

 
 
 「でもさ」



 舞子は続ける。



 「それってチャンスだと思う。相手は油断してるとも取れるし。もしかしたら…」



 綾乃は顔を上げ、舞子へ視線を向ける。


 
 「宮城先生も話していたように」



 舞子はその先の言葉を話すことはせず、綾乃の右肩を軽く「ポン」と叩き、瑞穂の元へ赴いた。


 綾乃は舞子の背中をしばらく見つめ、視線をロッカーへ。



 「確かにそうですよね…。そこを狙うことも戦術ですもんね。それに加えて、私達のサッカーを合わせれば…!」


 
 そう言葉を発した綾乃は目の前の棚へ置いた自身のタオルへ手を伸ばす。そして右手に取ると、タオルを見つめ、小さく頷く。


 
 「可能性は高くなる…」



 そう続けた綾乃は口元を緩める。


 そして、視線を舞子の背中へ。



 「勝ちましょう…!」



 
 
 十時三分。



 「ピーッ!」



 ホイッスルが鳴り響き、北東学園高校ボールで前半が開始。綾乃はベンチからチームメイトを鼓舞する。

 山取東高校は北東学園高校の巧みな攻撃を何とか封じる。しかし、なかなか攻撃のチャンスを掴めない。

 枠を捉えたシュートも出たが、GKのファインセーブに阻まれ、得点とはならず。

 無得点のまま試合は進み、前半終了のホイッスルが鳴った。


 ロッカールームへ下がる両校の選手。綾乃は最後に通路へ。

 舞子達がロッカールームへ入ったことを確認し、自身も入ろうとした。

 その時。


 「後半途中からいくぞ」


 振り向くと、宮城の姿。



 「しっかり準備しとけ」


 
 宮城の言葉に綾乃は力強く「はい」と応える。

 同時に、朝の出来事がフラッシュバック。綾乃は右手に握り拳を作る。



 「勝たせていただきますよ…!」




 
 後半もなかなか決めきれない状況が続く山取東高校。

 そして、〇対〇で迎えた後半十四分に宮城が動いた。



 「槇原選手に代わりまして、十八番、一ノ瀬綾乃選手が入ります」



 ピッチへ入った綾乃。すると視線の先には列車内で見かけた三人の選手の姿が。その瞬間、綾乃は舞子の元へ。


 
 「吉川先輩…」



 そして、声を掛けた。


 舞子は綾乃の話を聞き、小さく頷く。



 「頼んだよ」

 「はい」



 綾乃はそう応えると、ディフェンスに向かう。

 マークする相手は…。



 「勝たせていただきますよ…!」



 耳に届かない声量で綾乃はそう言葉を発した。
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