Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

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第二章 勝負の三年間 一年生編

第四十四話 切り拓かれた道の先へ

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 十月三十日。


 「来月二日と三日に地区大会。その翌週に県大会。山東はシードで三日に試合。その試合に勝ては県大会」


 昼休みの廊下で舞子が綾乃に言う。

 綾乃は「なるほど」と言うように小さく頷く。


 「決勝まで進むと、翌年一月の東北大会に出場できるの。日程で言うと、選手権終了後。まあ、新人戦は東北大会までだから、優勝すれば、東北いちの称号を得ることができる。その称号は全国優勝よりは輝かないかもしれないけど、立派な成績だよね」



 東北大会は八校のトーナメント方式で優勝を争う。優勝しても全国への切符は手に入らない。しかし、その会場には。


 「大学、社会人チーム、そして、プロクラブのスカウトが足を運んでるっていう話だし。アピールの場になるよね。高校卒業後もサッカーを続けたい選手にとっては」



 共感するように頷く綾乃。



 「私は高校を卒業したら、大学に進学しようと思ってる。そのためには勉強もしないといけない。仮にスポーツ推薦を利用するとしても、一定以上の評定が必要だからね」


 
 綾乃は舞子の言葉を聞き、尋ねる。


 「吉川先輩はどちらの大学を志望されておられるのですか?」


 舞子は綾乃の問いに口元を緩め、彼女の目を見つめる。それからすぐ、視線を青空へ。

 鳥が一羽、青空の下を楽しそうに飛び回っている。舞子は鳥を目で追いながらこう答える。



 「城宮しろみやだよ」

 「城宮ですか…!」


 城宮大学は県内の私立高校、城宮学園高校の系列校。県内の大学女子サッカーでは全国大会の常連。しかし、城宮学園高校には女子サッカー部がない。

 舞子が山取東高校へ進学した理由の一つがそれだ。

 しかし、一番は。


 「サッカーの知識を身に付けたいからね」


 笑顔の舞子。



 「山東に進学したことは後悔してないよ。だって、瑞穂や陽太達みないな凄い選手に出会えたし。そして、綾乃ちゃんと同じチームになれたんだもん。今、凄く楽しいんだ!」


 
 楽しい。


 これは綾乃も同じ気持ちだった。


 舞子や真希、潤達のような選手と出会えたのだから。



 「長くて残り一年ちょっと。それまでよろしくね、綾乃ちゃん!」


 微笑み、綾乃の右肩に手を置く舞子。


 「はい!よろしくお願いします!」




 この日の練習終了後、新人戦のメンバーが発表された。舞子、瑞穂達は順当にメンバー入り。

 一年生部員も名前を呼ばれる。

 その中に。


 「十五番、一ノ瀬」


 宮城の声に引き締まった表情になる綾乃。

 そして目を閉じ、静かに息をつく。


 そのコンマ数秒後。



 「はい!」


 綾乃は凛々しい声で応える。


 一ノ瀬綾乃の夢への道が新たに切り拓かれた。


 
 「突き進みます…!切り拓かれた道の先へ…!」



 その道の先にはどのような景色が綾乃の目に映るのだろう。
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