Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

最終章 勝負の三年間 三年生編

第二十一話 「壁にぶつかることは、成長の前触れだ」

「どうだった？　プロ選手に混じって練習してみて」

　練習終了後、監督である高梨雄也たかなしゆうやが綾乃に尋ねる。

「プレーの面で高い壁を感じました」

　そうこたえた綾乃の表情には微かに悔しさが滲んでいた。

　初日の練習で綾乃は何度もドリブル突破を阻まれ、パスをカットされてしまった。

　自身はまだまだ足元にも及ばない。

　そのことを思い知らされた。

　綾乃の言葉を聞き、高梨はグラウンドを眺めた後、口を開く。

「それに関して落ち込むことはない。寧ろ、プラスに捉えてほしい」

　高梨の言葉に続けるように、やさしい風が起こる。

　綾乃は髪が微かに揺れる感覚を覚えると、高梨の言葉を意味を探る。

　すると高梨は、綾乃の心の内を見透かしたように意味ありげな笑みを浮かべる。

「壁を感じることはネガティブな意味になるかもしれない。だけど、考え方によってはプラスの意味になる」

　高梨の言葉で、綾乃は彼の声に集中する。

　やがて、綾乃の耳にこのような言葉が届いた。

「壁にぶつかることは、成長の前触れだ」

　同時に、綾乃の心に潜んでいた僅かなネガティブな感情が消え去った。