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話したかったけど…
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アミが店を出て15分後。僕は店内を歩いていた。気持ちを落ち着かせるために。
「アミちゃんのことそういう目で見てないのに、何でこんな気持ちになってるんだろ…」
自身に問いかけたが全く分からなかった。
ノートでは思いを伝えられたが、実際に自分の口から伝えたい気持ちもあった。だが、何だか分からない感情がそうさせなかった。
僕は松葉浩のCDを見つめながらため息をついた。
「松葉さんならこの気持ちをどんな歌詞で表現するのかな…」
そんなことを考え、僕は店を出た。
その頃、事務室では店長と副店長が話していた。
「コウちゃん、どうしたんだろうな。いつもなら自分からアミちゃんの所に駆け寄るのに。なんか照れてたみたいだけど」「そうねえ。コウちゃんらしくなかったわね」「それに、アミちゃんも話し掛けに行かなかったしな…。コウちゃんには気付いてたけど。何かあったのかな」「まあ、もうちょっと見守ってましょ」「そうだな」
恋ではない。この気持ちをなんと表現すればよいのだろうか。
家に戻り、部屋に入った。
「話したかったのに何で話せなかったんだろう…。口から思いを伝えるチャンスだったのに…」
ショップでの自分を恨んだ。
ふと、僕の目にアミのCDジャケットが映った。アミの曲を聴こうとCDを取り出そうとした。
だが、体が勝手にCDを取り出すことを止めた。
「何で止めてんだ…」
もう1度取り出そうとしたが取り出せなかった。
僕はCDを取り出すことを諦めた。
「何なんだよこの気持ち…」
翌日、僕は授業中ぼーっとしていた。「浩二、浩二」先生の声すら聞こえないくらいに。
放課後、先生が話し掛けてきた。
「珍しいな。ぼーっとするなんて」「すみませんでした。なんかある人の顔ばかり浮かんできちゃって…」「…。好きな子でもできたのか?」「え!?いや、そんなことじゃないですよ…」
僕は笑いながら返した。
「まあ、恋愛もいいけど勉強もしっかりな」「はい…」
先生は職員室へ向かった。
「恋愛…。か。俺、アミちゃんのことどう思ってるんだろう…」
それすらも分からなかった。
帰宅し、夕食を食べてもぼーっとする瞬間があった。「浩二、お味噌汁冷めちゃうよ。ぼーっとしちゃって。何かあったの?」姉が僕の様子を見て声を掛けた。僕は姉の声ではっとした。「ああ、ごめん。練習で疲れちゃったのかな…」すると「もしかして、好きな子できたの?」先生と同じことを突っ込まれた。僕はとっさに「いや、そんなんじゃないって」笑いながらそう返した。学校の時と同じような反応になってしまった。
夕食を食べ終え、部屋に入った。椅子に座り、天井を見た。「恋ではないんだよな…。それは分かってるんだけど…」この気持ちの正体は何なのか。そんなことばかりを考えていた。
翌日、部活が早く終わった。僕は店長の元を訪れた。「やあ、コウちゃん。部活の帰りかい?」店長は普段と変わらない対応をしてくれた。「うん…」と言い、僕の足は自然とアミのCDコーナーに向かっていた。
「あれ…」
僕は引き返し、雑誌コーナーへ向かった。
店長は僕の様子を見ていたようだった。だが、特に何も言わなかった。
僕は松葉浩が表紙の雑誌を手に取り、記事を読み始めた。だが、突然ため息がこぼれ、上を向いた。記事の内容は面白いのに何故だろうか…。
しばらくして、雑誌を棚に戻した。時計を見ると閉店時間が迫っていた。
「帰るか…」
従業員の「ありがとうございました」の声を聞きながら店を出た。
作業が終わり、店長と副店長が事務室で話をしていた。
「コウちゃん、何か考えてるみたいだったな。好きな人が自分のことどう思ってるんだろうみないな。まあ『好き』というより『気になる』に近いか」
店長の勘は鋭かった。
「何か私達にできることないかしら」「うーん…。ちょっとアミちゃんに電話してくるよ…」
店長は携帯電話でアミに電話をかけた。
「もしもし、アミちゃん。ちょっと話があるんだけど…」「どうしたの、店長」「実は、コウちゃん…」
店長は店での僕の様子を話した。
「えっ…」
アミは何だか照れたような返事をした。
「浩二くんがそんな目で見てるわけないじゃん!店長、何言ってんの!?」「いや『好き』じゃなくて『気になってる』って言ってるんだ。難しいかもしれないけど」
「好き」と「気になる」この違いを説明するのは意外と難しい。店長は自分なりの考えを伝えた。
「それで、お願いがあるんだが…」
店長はアミに内容を伝えた。
「…。それで浩二くん、喜んでくれるのかな…」「大丈夫。絶対うまくいくって!」アミは一瞬躊躇いを見せた。しばらくして「分かった…」とアミが返した。「よろしくな…」と店長が返し、通話が終了した。
土曜日。僕はいつものように店長の元へ。すると、店長が僕に駆け寄ってきた。
「どうしたの?店長」
すると1枚の封筒と手紙を渡された。封筒には住所が書かれていた。
住所はこの街の住所だった。
「店長。これ…」
すると、店長は少し間を置き「アミちゃんに向けて書きなさい。書いたら封筒に入れて店に持って来なさい。こっちから出しておくから」
そう言って店長は棚の掃除を始めた。
文通だ。
僕は渡された封筒と手紙を手にしてなぜかドキドキしてしまった。恋をしているわけではないのに。
「文通って…。何書けばいいんだろ…」
アミとの文通が始まった。
「アミちゃんのことそういう目で見てないのに、何でこんな気持ちになってるんだろ…」
自身に問いかけたが全く分からなかった。
ノートでは思いを伝えられたが、実際に自分の口から伝えたい気持ちもあった。だが、何だか分からない感情がそうさせなかった。
僕は松葉浩のCDを見つめながらため息をついた。
「松葉さんならこの気持ちをどんな歌詞で表現するのかな…」
そんなことを考え、僕は店を出た。
その頃、事務室では店長と副店長が話していた。
「コウちゃん、どうしたんだろうな。いつもなら自分からアミちゃんの所に駆け寄るのに。なんか照れてたみたいだけど」「そうねえ。コウちゃんらしくなかったわね」「それに、アミちゃんも話し掛けに行かなかったしな…。コウちゃんには気付いてたけど。何かあったのかな」「まあ、もうちょっと見守ってましょ」「そうだな」
恋ではない。この気持ちをなんと表現すればよいのだろうか。
家に戻り、部屋に入った。
「話したかったのに何で話せなかったんだろう…。口から思いを伝えるチャンスだったのに…」
ショップでの自分を恨んだ。
ふと、僕の目にアミのCDジャケットが映った。アミの曲を聴こうとCDを取り出そうとした。
だが、体が勝手にCDを取り出すことを止めた。
「何で止めてんだ…」
もう1度取り出そうとしたが取り出せなかった。
僕はCDを取り出すことを諦めた。
「何なんだよこの気持ち…」
翌日、僕は授業中ぼーっとしていた。「浩二、浩二」先生の声すら聞こえないくらいに。
放課後、先生が話し掛けてきた。
「珍しいな。ぼーっとするなんて」「すみませんでした。なんかある人の顔ばかり浮かんできちゃって…」「…。好きな子でもできたのか?」「え!?いや、そんなことじゃないですよ…」
僕は笑いながら返した。
「まあ、恋愛もいいけど勉強もしっかりな」「はい…」
先生は職員室へ向かった。
「恋愛…。か。俺、アミちゃんのことどう思ってるんだろう…」
それすらも分からなかった。
帰宅し、夕食を食べてもぼーっとする瞬間があった。「浩二、お味噌汁冷めちゃうよ。ぼーっとしちゃって。何かあったの?」姉が僕の様子を見て声を掛けた。僕は姉の声ではっとした。「ああ、ごめん。練習で疲れちゃったのかな…」すると「もしかして、好きな子できたの?」先生と同じことを突っ込まれた。僕はとっさに「いや、そんなんじゃないって」笑いながらそう返した。学校の時と同じような反応になってしまった。
夕食を食べ終え、部屋に入った。椅子に座り、天井を見た。「恋ではないんだよな…。それは分かってるんだけど…」この気持ちの正体は何なのか。そんなことばかりを考えていた。
翌日、部活が早く終わった。僕は店長の元を訪れた。「やあ、コウちゃん。部活の帰りかい?」店長は普段と変わらない対応をしてくれた。「うん…」と言い、僕の足は自然とアミのCDコーナーに向かっていた。
「あれ…」
僕は引き返し、雑誌コーナーへ向かった。
店長は僕の様子を見ていたようだった。だが、特に何も言わなかった。
僕は松葉浩が表紙の雑誌を手に取り、記事を読み始めた。だが、突然ため息がこぼれ、上を向いた。記事の内容は面白いのに何故だろうか…。
しばらくして、雑誌を棚に戻した。時計を見ると閉店時間が迫っていた。
「帰るか…」
従業員の「ありがとうございました」の声を聞きながら店を出た。
作業が終わり、店長と副店長が事務室で話をしていた。
「コウちゃん、何か考えてるみたいだったな。好きな人が自分のことどう思ってるんだろうみないな。まあ『好き』というより『気になる』に近いか」
店長の勘は鋭かった。
「何か私達にできることないかしら」「うーん…。ちょっとアミちゃんに電話してくるよ…」
店長は携帯電話でアミに電話をかけた。
「もしもし、アミちゃん。ちょっと話があるんだけど…」「どうしたの、店長」「実は、コウちゃん…」
店長は店での僕の様子を話した。
「えっ…」
アミは何だか照れたような返事をした。
「浩二くんがそんな目で見てるわけないじゃん!店長、何言ってんの!?」「いや『好き』じゃなくて『気になってる』って言ってるんだ。難しいかもしれないけど」
「好き」と「気になる」この違いを説明するのは意外と難しい。店長は自分なりの考えを伝えた。
「それで、お願いがあるんだが…」
店長はアミに内容を伝えた。
「…。それで浩二くん、喜んでくれるのかな…」「大丈夫。絶対うまくいくって!」アミは一瞬躊躇いを見せた。しばらくして「分かった…」とアミが返した。「よろしくな…」と店長が返し、通話が終了した。
土曜日。僕はいつものように店長の元へ。すると、店長が僕に駆け寄ってきた。
「どうしたの?店長」
すると1枚の封筒と手紙を渡された。封筒には住所が書かれていた。
住所はこの街の住所だった。
「店長。これ…」
すると、店長は少し間を置き「アミちゃんに向けて書きなさい。書いたら封筒に入れて店に持って来なさい。こっちから出しておくから」
そう言って店長は棚の掃除を始めた。
文通だ。
僕は渡された封筒と手紙を手にしてなぜかドキドキしてしまった。恋をしているわけではないのに。
「文通って…。何書けばいいんだろ…」
アミとの文通が始まった。
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