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第三章「ハイラント王国の危機」
第二十五話:次期王位継承者
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国際会議より帰ったハイランド王国の王ガイアスは、戦況を聞いて一つの決断を下した。
「現時点を持って、エリザベートの王太女としての地位を剥奪する!」
傍らに仕える国務大臣は言う。
「勇者パーティーの操縦に失敗し、魔王討伐にも失敗。近衛騎士団を消耗して国を危機に晒した、当然の決定ですな」
罪状を晒し上げれば、国民も納得しましょうとうなずく。
「全くだ。余に恥をかかせおって!」
国際会議では、英雄とたたえておきながら、自分の役に立たなくなったらこれだ。
ガイアスは冷酷な王であった。
国務大臣は尋ねる。
「陛下。それで、次はいかがなさいます」
「マクスウェルを呼べ」
呼ばれて現れたのは、長男のマクスウェルだ。
ガイアス王や、エリザベート姫と同じく金髪の美形だが、ひょろりと背が高くメガネをかけており陰気な印象がある。
「マクスウェル。かねてより、勇者に変わる戦力を用意できると言っていたな」
「はい父上。用無しになった猟犬を片付ける手段も必要ですので」
マクスウェルは、陰気な口調で言う。
策謀家のマクスウェルは、いまいち国民の人気がなく、長男でありながら王位継承者から外されていた。
しかし彼は、最初からエリザベート姫が失敗すると見越して、取って代わる戦力の準備を影で進めていたのだ。
「復活したという魔王を倒す手段にもなりえるか」
マクスウェルは、少し考えてから言う。
「想定とは少し違いますが、役立たずな勇者パーティーよりも確実に魔王を倒してみせます」
ただ、少々荒っぽいやり方なので、多少の犠牲は覚悟していただかなくてはならないと言う。
ガイアス王は、それにうなずいて言う。
「よろしい。では、長女エリザベートに変わり、長男マクスウェルを次の王太子と定め、国軍の指揮権を与えるものとする」
マクスウェルは、ビシッとその場に敬礼して恭しくお辞儀して言う。
「このマクスウェル。必ずや、お父様のお役に立ってみせましょう!」
「期待しておる」
それだけ言うと、準備があるというのでマクスウェルは急いで退散した。
ガイアス王の傍らの国務大臣が言う。
「勇者パーティーはいかがいたしましょう」
「エリザベートとともに、死んでもその場で魔王を食い止めろと命じろ。死守だ!」
魔王と一緒に死んでくれれば、処分の手間が省けると。
ガイアス王はつまらなそうに言って、うさを晴らすように外遊で買ってきた高価なワインを煽った。
全ての騎士を束ねる騎士団長アインは、ガイアス王に言った。
「陛下! 王都の民の避難を命じてください」
「避難、何を言っているのだ?」
「魔王の最終的な狙いは王都です」
「そんなことは、報告を受けて知っておる」
「でしたら!」
国務大臣は、とりなすように騎士団長アインに言う。
「アイン殿、偉大なる国王陛下は、国際会議で新たな条約を結んできたのです」
「条約とは?」
「魔族との戦いで出た被害を、同盟国家全体で補填するというもの。当然、復活した魔王との戦いで出た被害もそれに含まれます」
「大臣閣下の言っている意味がよくわかりかねる」
それと、王都の民を避難させないのと、何の関係があるのか。
国務大臣は、狡猾そうに笑っていう。
「民の被害は大きければ大きいほど、あとで我が国が物資として受け取れるということです」
「バカな!」
民あっての国ではないか。
アインはそう言いたかったが、ガイアス王は言う。
「魔王の狙いは王都。つまり、王都が破壊されている間は、その後ろにあるこの王城は安心というわけだ」
「なんと、ガイアス王は王都の民を盾とするつもりか!」
「草民など、失ってもしばらくすればまた生えてくるものだろう。我が身には変えられぬ」
「そんな……」
民の財産や命より、王城の守りや、被害に応じて条約でもらえる物資が増えることのほうが大事だというのだ。
ガイアス王のあまりの発言に、騎士団長のアインは空いた口が塞がらなかった。
「現時点を持って、エリザベートの王太女としての地位を剥奪する!」
傍らに仕える国務大臣は言う。
「勇者パーティーの操縦に失敗し、魔王討伐にも失敗。近衛騎士団を消耗して国を危機に晒した、当然の決定ですな」
罪状を晒し上げれば、国民も納得しましょうとうなずく。
「全くだ。余に恥をかかせおって!」
国際会議では、英雄とたたえておきながら、自分の役に立たなくなったらこれだ。
ガイアスは冷酷な王であった。
国務大臣は尋ねる。
「陛下。それで、次はいかがなさいます」
「マクスウェルを呼べ」
呼ばれて現れたのは、長男のマクスウェルだ。
ガイアス王や、エリザベート姫と同じく金髪の美形だが、ひょろりと背が高くメガネをかけており陰気な印象がある。
「マクスウェル。かねてより、勇者に変わる戦力を用意できると言っていたな」
「はい父上。用無しになった猟犬を片付ける手段も必要ですので」
マクスウェルは、陰気な口調で言う。
策謀家のマクスウェルは、いまいち国民の人気がなく、長男でありながら王位継承者から外されていた。
しかし彼は、最初からエリザベート姫が失敗すると見越して、取って代わる戦力の準備を影で進めていたのだ。
「復活したという魔王を倒す手段にもなりえるか」
マクスウェルは、少し考えてから言う。
「想定とは少し違いますが、役立たずな勇者パーティーよりも確実に魔王を倒してみせます」
ただ、少々荒っぽいやり方なので、多少の犠牲は覚悟していただかなくてはならないと言う。
ガイアス王は、それにうなずいて言う。
「よろしい。では、長女エリザベートに変わり、長男マクスウェルを次の王太子と定め、国軍の指揮権を与えるものとする」
マクスウェルは、ビシッとその場に敬礼して恭しくお辞儀して言う。
「このマクスウェル。必ずや、お父様のお役に立ってみせましょう!」
「期待しておる」
それだけ言うと、準備があるというのでマクスウェルは急いで退散した。
ガイアス王の傍らの国務大臣が言う。
「勇者パーティーはいかがいたしましょう」
「エリザベートとともに、死んでもその場で魔王を食い止めろと命じろ。死守だ!」
魔王と一緒に死んでくれれば、処分の手間が省けると。
ガイアス王はつまらなそうに言って、うさを晴らすように外遊で買ってきた高価なワインを煽った。
全ての騎士を束ねる騎士団長アインは、ガイアス王に言った。
「陛下! 王都の民の避難を命じてください」
「避難、何を言っているのだ?」
「魔王の最終的な狙いは王都です」
「そんなことは、報告を受けて知っておる」
「でしたら!」
国務大臣は、とりなすように騎士団長アインに言う。
「アイン殿、偉大なる国王陛下は、国際会議で新たな条約を結んできたのです」
「条約とは?」
「魔族との戦いで出た被害を、同盟国家全体で補填するというもの。当然、復活した魔王との戦いで出た被害もそれに含まれます」
「大臣閣下の言っている意味がよくわかりかねる」
それと、王都の民を避難させないのと、何の関係があるのか。
国務大臣は、狡猾そうに笑っていう。
「民の被害は大きければ大きいほど、あとで我が国が物資として受け取れるということです」
「バカな!」
民あっての国ではないか。
アインはそう言いたかったが、ガイアス王は言う。
「魔王の狙いは王都。つまり、王都が破壊されている間は、その後ろにあるこの王城は安心というわけだ」
「なんと、ガイアス王は王都の民を盾とするつもりか!」
「草民など、失ってもしばらくすればまた生えてくるものだろう。我が身には変えられぬ」
「そんな……」
民の財産や命より、王城の守りや、被害に応じて条約でもらえる物資が増えることのほうが大事だというのだ。
ガイアス王のあまりの発言に、騎士団長のアインは空いた口が塞がらなかった。
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