婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

文字の大きさ
14 / 113

バルタザール

しおりを挟む


「ノア、この先に野営ができるスペースがあるみたいなの。もう暗くなってきているから今日はそこで休みましょう」

 野営スペースにたどり着き端の方の空いているところに向かう。
 人が見ていない隙にアイテムボックスからテントと野営道具を取り出し食事の準備をする。

 今日は野菜とソーセージを煮込んだポトフにパン、塩を振って焼いたホーンラビットの丸焼きもある。

「いただきます。うーん、美味しい!」

 じっくり焚き火で焼いたお肉が絶品だわ。

「うまいな! 今までは生肉しか食べたことがなかったが、人の食べるものもこんなに美味いのか」

 私のご飯に興味があったのかチラチラこちらを見ているのがわかったので「ノアも私と同じの食べてみる?」と聞くと明らかにキラキラとした目をして喜んでいたので同じものを出したらお気に召したみたいだ。

 食事を終えたら食器にクリーンをかけてしまい、自身とノアにもクリーンの魔法をかけ布団に入る。
 一度一緒に布団で寝てみたら寝心地にハマったようで最近は鳥の姿のままノアも一緒に布団で寝ている。

「おやすみ、ノア」

「おやすみ、リア」





「ノア、着いたわ! あそこがバルタザールよ」

 結局盗賊の事や2日目が雨だったこともあってバルタザールに到着したのは3日目の昼だった。

 街に入るため入り口に並び門番に身分証を見せる。

「確認できました。バルタザールへようこそ!」

「ありがとうございます。あの、ここへ来る途中に盗賊を討伐したのですがどこへ報告に行けばいいでしょうか?」

 そう門番に言うと何を言われたのかわからない、というような表情になる。

「盗賊、ですか?」

「はい。盗賊を、討伐しました」

 そういうときょろきょろと周りを見廻しキョトンとしている。

「あの、お1人で?? 証明できるものなどはありますか?」

 たしかにこんな小娘が手ぶらで盗賊討伐をしたと言っても信用できないだろう。
 そう思い小声で「私、魔法使いでアイテムボックス持ちなんです」、と言うと門番ば驚いたように目を見開いて、すぐに門にある個室に案内してくれた。

 コンコン

 部屋で待って10分ほど経った頃、先ほど門番をしていたお兄さんと一緒にもう1人男性が入ってくる。

「私はこのバルタザールの兵隊長をしているアーモスと言う。あなたがこの近くで盗賊を討伐したと言うのは本当だろうか?」

 赤髪短髪で顔にワイルドな傷がある。強そうだと思ったが兵隊長さんなのか。どうやらこの門番さんがわざわざ偉い人を連れてきてくれたようだ。

「本当です。先ほどそこの門番さんにも伝えましたが、私は魔法使いでアイテムボックスを使えるので討伐した盗賊も持ってきています」

 そうハッキリと伝えるとアーモスさんは少し考えるような表示を見せ、「ついてきてくれ」と言い立ち上がる。

 アーモスさんの後についていくと、倉庫の ようなところにたどり着く。床には皮のシートが敷いてある。

「ここに出してもらえるか?」

 討伐した盗賊をアイテムボックスに入れてきたと伝えたから、その事だろう。
 盗賊を次々と皮のシートの上に出し、最後に頭領だと思われる男を出す。

「こいつは!!」

 そう驚きこちらに近づいてきたアーモスさんがまじまじと頭領の顔を確認する。

「鋼の斧盗賊団の頭領だ」

 鋼の斧盗賊団? 財宝も沢山あったし、有名な盗賊団だったのだろうか?

『リア、斧とはあの頭領の横に転がっていたやつではないか?』

 そうノアに言われて思い出す。
 鋼の斧……。そういえば頭領を倒した部屋の床に斧が転がっていた気がする。

「もしかしてこの斧頭領の武器ですか?」

 そう言いアイテムボックスからずっしり重い、大きな鋼の斧を出す。

「それだ! その武器がこいつのトレードマークなんだ。ここに盗賊団のマークも入ってる」

 持ち手の先を見ると斧のマークが入っている。
 顔の確認は済んでいたが、この斧を出したおかげで鋼の斧盗賊団だという確固たる証拠になったようだ。

「ありがとう!」

 そう言いアーモスさんが深く頭を下げる。

 なんでもこの盗賊団はずっとバルタザール周辺で盗賊行為を行なっていて、何度も討伐隊を出していたが元冒険者でランクBの頭領がいたため討伐できていなかったようだ。

「最近うちの領主様の馬車が襲われてな。早く討伐しろと上からせっつかれていたんだ」

 盗賊団の規模にしては高価な財宝が多かったのはそういう事だったのか。

「もしかしたら荷を買い戻したいと思っているかもしれない。領主様に話を通すから2日ほど待ってもらえるだろうか?」

 デブブ伯爵か。
 できれば関わりたくないけどここで断るのもおかしいと思われるよね。さっさと荷を買い戻してもらってこの町を出よう。

「わかりました」

 アジトから持ってきた財宝を一通り書き写してもらいまた2日後に来ると約束し門を出た。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...