婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

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空の旅と王様

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 ふぅ。ほんと、散々だったわ。

「それにしてもいい景色ね。空を飛ぶってこんなに気持ちがいいものなのね。ノア、助かったわ。ありがとう!」

 そう伝えるとノアは「ふふん、このくらいグリフォンにとってはなんてことないさ」なんて言うが褒められて喜んでいるのは丸わかりよ。

 公爵令嬢として乗馬を嗜んでおいてよかったわ。そうでなかったら空から落っこちていたかもしれない。
 と最初は思ったがかなり馬よりも乗りやすいし、なんだか周りに風の膜ができていて落っこちたり寒さを感じたりしないようになっている。きっとノアが私のために気を遣ってくれているのだろう。
 なにより馬よりふわふわで暖かくて気持ちいい。

 ノアにはこんなこと言わないけどね。言ったら馬と同じにするな! と怒られてしまいそうだ。

「このまま真っ直ぐ街道の上を行って、国境の手前の港町グレーゲルに向かいましょう。グレーゲルでいろいろと買い込んだらついに大森林よ!」

 もう少しで大森林にいけると聞いたノアは嬉しそうだ。

「大森林か! こんなに大森林を離れたのは久しぶりだから戻るのが楽しみだな」

そうか、大森林はノアのお家だものね。

「ノアは大森林の中にお家はあるの? グリフォンって森の中でどう過ごすの?」

「森の中でも強い魔物だと縄張りがあってな、私は自分の縄張りにある洞窟の中で暮らしていた」

 ノアは助けられたからと私の従魔になって着いてきてくれたけど、お家に帰りたかったりするのかな?
 大森林をちょうど通るし、少しノアのお家に寄るのもいいかもしれない。
 グリフォンの縄張りだから強い魔物の多い大森林の奥のほうかもしれないけど、魔法が使えるようになった私とそこに住んでたノアなら大丈夫だろう。

「ちょうど大森林を通るしノアのお家にも寄る?」

 そう聞くと飛びながら驚いたように頭だけこちらを向く。

「良いのか!? 散歩に出て突然襲われたからもし良いならそうしたい。実は縄張りが隣の奴と仲が良いのだが何も言わずに出てきてしまったから心配しているかもしれん」

 お友達がいたのね!
 それは会いにいかないと。きっと心配しているわ!
 でもグリフォンの中でも強いノアの隣の縄張りって、ものすごく強い子なんじゃ……? でもきっとノアと一緒なら襲われることはないわよね!

「じゃあそうしましょう! グレーゲルで準備をして、国境を通って、そのあと大森林のノアの家に向かいましょう」

「ありがとう、リア」







「陛下! 陛下! お伝えしたいことがございます!!」

 今日の仕事がひと段落したところでデブブ伯爵から謁見の申し込みが入った。
 疲れもあったしまた後日にしろと伝えたがデブブ伯爵を担当した文官が急用らしいと言うので仕方なく受けることになった。
 これでくだらぬことだったらタダじゃおかないと思ったが、デブブ伯爵の顔色からしてただ事じゃない。
何か重大な事件でも起こったのだろうか?

「な! なんだと!?」

 デブブ伯爵が言うには、デブブ伯爵の荷を奪った盗賊を倒した女冒険者が伯爵領へ来たので買い戻しをしたいと言ったところ断られた。
 どうしても買い戻したい荷があったので今度は直接その冒険者のところへ行ったが交渉は決裂。揉め事になりその冒険者とデブブ伯爵の護衛が戦ったが逃げられてしまった。というものだが、なんとその女冒険者があの国外追放になったオレリア・アールグレーンだと言うのだ!
 しかもオレリア・アールグレーンが魔法を使って元Bランク冒険者の護衛を倒したと言う。
 どういうことだ!?
 あの娘は魔法を使えないのではなかったのか??
 それにグリフォンを従魔にしていて、グリフォンに乗って国境の方へ飛び立っただと?
 そんなバカな! ありえない! 見間違えではないのか!? と聞いたら、その女冒険者はずっとローブで顔を隠していたがグリフォンへ乗って飛び立つ時に風に煽られてフードが捲れ顔が見えたと言う。
 あれはたしかにオレリア・アールグレーンだったと。フードが捲れた瞬間こちらを見て焦った顔をしたから相手がデブブ伯爵だと分かって顔を隠していたのだろうと。

 そうだ。まずそもそも、あの有能な魔法使いが多い公爵家に生まれ全く魔法が使えないとはおかしいと思っていたのだ。
 なぜだ? なぜ魔法を使えないフリをしていた!?
 あの女がそんなに強い魔法を使えるのならわざわざこんな手を使ってあんな身分の低い女を息子の新しい婚約者にすることも、あの女を国外追放にすることもなかったというのに!

「今すぐにアールグレーン公爵夫妻と第二王子のアンドレを呼べ!」

 アールグレーン公爵夫妻に娘が魔法を使えることを隠していたことを問い詰めなければ。
 それにアンドレも。もしや他の女を婚約者にしたくてアールグレーン嬢が魔法を使えるのを黙っていたのではあるまいな!?

 あの少し魔法が得意な男爵令嬢より、グリフォンを従え強力な魔法が使えて妃教育も終わった公爵令嬢の方が良いではないか!

「今すぐにオレリア・アールグレーンを追え! 国境に早馬を……いや、伝書鳩の方が早いか!? とりあえず早く連絡をして国を出る前に捕まえるのだ!」

 デブブ伯爵がアールグレーン嬢と会ったのは国境まで早馬を乗り継ぎ急げば1週間ほどの場所だったと言う。グリフォンに乗って移動しているとなるともっと早い可能性もある。
 クソッ! 間に合え!!
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