婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

文字の大きさ
33 / 113

ノアの家1

しおりを挟む

「よし、私たちもそろそろ出ようか」

 大森林の魔物は奥に行くにつれて強くなっていく。
 グリフォンの中でも上位のノアが住んでいたのはかなり奥の方らしい。
 魔物を出来るだけ狩っていって隣国に着いたら売る予定なので空は飛ばずにノアに乗って地を移動する。

 荷物をササッとアイテムボックスにしまうとノアに跨り、道を逸れて森の中へと入っていく。

「さすが大森林。凄いわね」

 大森林の木々は他より大きいからからか圧があるような気がしてしまう。
 それに大森林には強い魔物が多いだけではなく、レアな素材や大森林にしかいない種もいるからかなんだか不思議な雰囲気だ。

「リア、さっそく何か来たぞ」

 ノアに言われて横を見ると、木々の奥がガサガサと揺れているのが見える。

「あれは……、虎かしら?」

 奥から見ててきたのは黄色に黒い模様の入った虎だった。
 虎と言っても大きさは4メートル程あり、顎の上下から鋭く大きい牙が飛び出している。
 普通の森だったらその森の主になるほどの魔物なのに、この大森林では浅いところに出るその他大勢の魔物になってしまうのが恐ろしい。

 鑑定したところキラーサーベルタイガーというらしいこの魔物は私たちの元に辿り着いた瞬間にノアの爪によるひと払いで首元を掻き切られて倒れた。

「ふん、バカめ。私とリアの力量も読めないとはな!」

 さすがノア! 大森林の奥に住んでいただけあってこの辺りの魔物じゃ相手にならないわね。

 キラーサーベルタイガーをアイテムボックスに入れ、ノアに乗ったままどんどん森の奥へ進む。
 ノアがいるからか弱い魔物は寄ってこないのでアイテムボックスにはどんどん良い素材が溜まっていくし、弱い魔物に煩わされないから進みも早くて順調だ。
 ノアの縄張りまで1週間くらいはかかるかなと思っていたけど、この調子ならもう少し早く着けそうだ。
 夜も普通なら大森林の中で寝たらその辺にいる魔物にパクっと食べられちゃうけどノアがいるから安心!
 元々大森林に住んでいたノアは魔物の気配で起きられるらしい。

 私の従魔になったきっかけの事件の時は寝ている時に魔道具で攻撃されてやられたんじゃなかったっけ? 本当に大丈夫? と思ったが、あれは久しぶりに大森林から出てきて疲れで熟睡していたのと、大森林の奥から出てきていたから自分を襲うような強者はいないと油断していたかららしい。

「だから大丈夫だ! 夜の見張りは任せろ!」と張り切って言ってくれたので夜の見張りはノアに任せて私はゆっくり寝ることにした。

 そんな日々を続けること5日。

「ここら辺からが私の縄張りだ。私が住んでいた洞窟までもあと少しだ」

「おぉ! やっと到着するのね!」

 馬よりも乗りやすいといっても5日もノアに乗りっぱなしは流石に大変だった。
 回復魔法をかけながらとはいえ、そろそろ腰とお尻が限界を迎えるところだったわ。

 もうすぐ着くと聞いてから10分ほどすると森の奥から岩壁のようなものが見えてくる。

「あそこに洞窟がある。しばらく空けていたがそのまま残っているといいが……」

 確かに私がノアと出会ってから結構経つから荒らされていないか心配だわ。

「うわぁ、大きい」

 岩壁の前に立つとその大きさがよくわかる。
 高さもかなりなものだが、右を向いても左を向いても終わりが見えない。

「この岩壁の向こうは住む魔物のレベルが違う。主に竜種のような、私でも勝てないような強者がうじゃうじゃ住んでいるぞ。まぁ私が一緒にいるから大丈夫だろうが、この岩壁の向こうには行かないように気をつけてくれ」

 竜種!!
 上位の竜は前世でも1度か2度見たことがあるくらいだ。
 ワイバーンやレッサードラゴンなんかの下位のやつは狩ったことがあるけどね。
 下位と言ってもそこらの魔物じゃ比べ物にならないくらいには強かった記憶があるけど。

 つい行ってみたい! と思ってしまったけど、残念だけどここに住んでいたノアが行かないようにと言っているのだから言うことを聞いたほうがよさそうだ。残念だけど!

「着いたぞ! あそこが私の住処だ」

 先を見ると岩壁の一部が窪んでおり洞窟のようになっている。
 洞窟と言っていたが入り口は思っていたよりも大きく中も広そうだ。

「おおー。凄い! けど、真っ暗だね」

 中に入ろうとしたが真っ暗で何も見えない。
 そうだよね、洞窟だもんね。

「【ライト】」

 魔法で光球をつくり宙に浮かべる。

「さ、これで大丈夫ね! お邪魔します!」

 入っていくと中には空間がいくつかあるようで、先が枝分かれしている。

「空間はいくつかあるが主に使っていたのは1番奥の大きな所だが……、お呼びでない客が来ているようだ」

 探知を使ってみると確かに奥に大きな反応がある。
 ノアと目を見合わせ、すぐに魔法を発動できるように準備をしてから奥の部屋へと進む。

 グルルルルルルル

 光に照らされて見えてきたのは獅子の顔に山羊の角、蛇の尾を生やした魔物だった。

「あれは……、キマイラだわ」
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...