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対面
しおりを挟む「帰ってこない……!」
もう暗くなっているにもかかわらず、いつも暗くなる前に帰ってくる2匹がまだ帰ってこない。
ロックバードの丸焼きはもうとっくに完成し、スープも丸焼きも冷たくなっている。
もう待ちくたびれてお腹も空いたし先に食べちゃおうかしら!
そんなふうに思い始めた時、玄関の扉が開く音が聞こえた。
「「ただいまー!」」
「もうっ! いつも夕飯までには帰ってきてって言ってるのにっ!」
「いや~、今日は俺がデカい蛇を仕留めてな!!」
「おいっ! その蛇は私が最初に見つけたんだぞ!!
ギャーギャー戯れている2匹はどうやらその蛇を狩っていて遅くなったらしい。
「はいはい! とりあえずご飯食べましょ。私もうお腹すいちゃった。
今日はロックバードの丸焼きとスープだよ! すぐに温めるね」
「ロックバードの丸焼き!!!」
「うおぉぉぉ! 美味そうだ!!」
2匹はサッと食事の時の定位置に着く。
「もう! こういう時ばかりすぐ動くんだから」
火魔法を使いサッと温めお肉を切り分けると、大皿にお肉と野菜、スープ皿にスープを注ぐ。
「ぬぁぁ! 丸焼きだというから肉だけかと思ったのにこんなに野菜も入っている!!」
「なーにー? お野菜も美味しいでしょ?」
「いや、野菜もそれなりに美味いのは美味いがやはり肉には勝てんのだ! それにほら、俺たち元々肉しか食べてなかったし!!」
「けど体に悪いからお野菜も食べなきゃダメ~! はい、いただきます!」
「「いただきます!」」
ネージュは野菜が入っているとブツブツ言っていたが、食べ始めてみるとガツガツと凄い勢いで食べている。
ん?
「ネージュ、怪我してる!?」
ガツガツとお皿に顔を突っ込み食べている2匹を見ていたら、ネージュの背中の部分の白い毛に赤い血のような物がついているのが見えた。
大きな蛇を狩ったと言っていたから、もしかしてその時に!?
「ん? 俺は怪我なんかしてないぞ!! 俺がこの辺りの魔物なんかに負けるわけないだろう!!」
「でもネージュ、背中に血がついてるよ!」
「んん? 血……??」
「ネ、ネージュ!! あれじゃないか? ほら、さっき森で会った……!」
「んあ! 忘れてた!! リアに会いにきたという人間を拾ってきたのだった!!」
に、人間!? なんでこんな大森林の奥まで!?
「え! 拾ってきたって……、ここの外にいるの!? もしかして王国の追手!?」
「追手? あぁ、そういえばリアは追われているんだったか。」
「じゃあ殺してくるか?」
「まっ、待って待って待って!! 殺さないで!!」
というか、ネージュに血がついているってことは怪我をしてるってこと!?
「あ、そういえば。なんか見たことある奴らも混ざってたぞ!」
「おお、そうだそうだ! なんて言ったっけな? あの俺たちをモフモフしてくる女!」
モフモフしてくる女……!?
はっ、それって!!!
「リーゼロッテさん!!?」
「おお! そうだそうだ! そいつもいたぞ!!」
「えぇ!? じゃあ早く行かなきゃ! 怪我をしているんでしょう!?」
どんな理由でこんなところまで来たのかわからないが、銀色の刃のみんなが怪我をしているというならすぐに手当てしなくちゃ!
「よしっ。外に出るわよ。ノアとネージュもついてきてくれる?」
「あぁ。」
「んぁぁー! 肉の途中なのに……」
「ネージュ! 後でまた出してあげるから行くわよっ!」
「はーい」
怪我をしているというのにだいぶ外で待たせてしまった!
あっ! リーゼロッテさん達以外にも人がいるならローブを着ておかなきゃ!
銀色の刃がいたのはクレンセシアだから他に人がいるとしても帝国の人だろうけど、もしも王国の人がいて問題になったらまずい。
王国の人からしたら私は殺人未遂犯だもの。
ローブを羽織り扉に手を掛け、1度深く深呼吸する。
「よし、行くわよ」
思い切って扉を開けると、外で待っている人たちが思っていたよりも多くてビックリする。
「ご、ごめんなさい! お待たせいたしました!!」
外に出てぐるっと周りを見てみると、岩壁にもたれかかったり地面に転がっていたり。
怪我って! 重症じゃないの!!
「あっ! リーゼロッテさん!! シメオンさんにレジスさん、ドナシアンさんも!!」
他の人も怪我をしているが、特に銀色の刃の怪我は酷い。
そもそも銀色の刃はBランクになってそんなに経っていないはず。こんな大森林の奥まで来れるほどの実力はない。
「とりあえずここに集まってください! 意識がない人もこちらに運んで! 回復魔法を使います! ほら、ノアとネージュも手伝って!!」
ノアとネージュも手伝い私の周りに人を集めていく。
「いきます! 【エリアエクストラハイヒール】!」
一気に魔力を練り込み魔法をかけると、辺りが温かくて優しい金の粒が輝く光に包まれる。
「な、なんだこの魔法は……!」
「ほわぁぁぁ、美しい……」
「あっという間に傷が!!」
人数が多く怪我が酷い分、結構魔力を持っていかれるわね。
「はい! これで治ったと思うんですけど、調子はどうですか?」
魔法をかけ終わり声をかけるが、みんな宙を見てぽんやりしていたり、自分の怪我のあった場所を眺めたりで返事がこない。
「……す、素晴らしい!! これほどの回復魔法使いなら、きっと!! きっと!!!」
「ヒェ!?」
急に横で大きな声を上げるのでビックリしてマヌケない声が出てしまった。
「失礼いたしました。あまりの回復魔法の腕に驚いてしまって。私はラルージュ帝国の皇太子、ウィルフレッド・ラルージュと申します。数百年を生きる魔女リア殿に頼みたいことがありここまで参りました」
「んぇ!?」
こ、皇太子!?
数百年を生きる魔女!!?
どういうこと!?
よ、よくわからないけれど王国からの追手ではなさそうだ。
「えっと、まだ意識の戻らない人もおりますし一旦中へどうぞ」
とにかく話を聞いてみなきゃわからないよねっ!?
しかたなく訳の分からないまま皇太子御一行を家へ招待することになったのだった。
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