婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

文字の大きさ
64 / 113

聖女!?

しおりを挟む


 
 私たちはメイドに案内され客室へと向かっている。皇帝陛下が小さいままならノアとネージュも一緒でいいと言ったので2匹も一緒だ。

 皇帝陛下と皇太子殿下は今日はしばらく皇妃様に付き添うそうだ。
 皇妃様は病は治ったものの寝たきりだったことにより痩せて筋力がなくなってしまっていてしばらくはリハビリが必要になりそうだ。
だが話すだけなら問題なくできるので、久しぶりに家族の団欒を楽しむらしい。

「こちらでございます」

 メイドに案内されついた部屋は想像以上に豪華だった。

 ひっっっろ!!!
 これって国賓に使うような部屋じゃないの!? 他国の王族とか!!

「本当にこの部屋でいいんですか……?」

「こちらのお部屋で間違いございません。客室の中で1番良い部屋をと皇帝陛下がおっしゃいました」

 ヒェ!? やっぱり国賓に使うような部屋じゃん!!
 こんなすごい部屋にノアとネージュを入れたらどんなことになるかわからない。

「あの、もっと普通の部屋でいいんですが……って、あ!!」

「ヒャッホー!! 俺の寝床はここにするぜ!」

「ぬ、待てっ! そこは私が目をつけていたところだ!」

 ああぁぁぁ~!!
 ノアとネージュが腕からすり抜け、部屋へ入りベッドに飛び乗った。

「従魔様たちにも気に入っていただけてよかったです。ではごゆっくり」

 メイドさんはそうニッコリ言うとペコっとお辞儀をして去っていった。

 もう毛がつくとかは諦めよう。

「ノア! ネージュ! 絶対に家具壊さないようにしてね!」

「「はーい!」」







 豪華な客室で寝て美味しいものをいっぱい食べて過ごして3日。
 報酬の準備ができたと連絡が来たので王城内の一室へと向かう。

「こちらの部屋でお待ちください」

 案内されて中に入ると既にセサルさんが来ていた。

「こんにちは」

「あ、リア様!こんにちは」

リア、様……??

 なんだか急に態度が柔らかくなったセサルさんに戸惑いつつもソファに腰を下ろす。

「実は皇帝陛下が護衛の騎士を用意してくださり、本日セフィーロ神聖教国に戻ることになったんです」

 「そうなんですね」

「それで、もしよろしければリア様も一緒にセフィーロ神聖教国に来ていただけませんか?」

 ……んえ?

「な、なぜでしょうか……?」

「それはもちろん、リア様が聖女様だからです!」

「せいじょ?」

 せいじょって……、聖女??

「えぇ! あのパーフェクトヒールがその証拠です!! パーフェクトヒールは教国の歴代聖女の中でもひと握りの選ばれし者しか使えません! まさかこの目でパーフェクトヒールを見られる日がくるなんて! あのパーフェクトヒールをかけるリア様の神々しさは言葉では表せません!! パーフェクトヒールを前回使える者が現れたのは二百年以上前です。歴史書には使える者でも数日魔法を使わず魔力を溜め、使った後は魔力切れを起こし倒れたと記載されています。なのにリア様はパーフェクトヒールをかけた後でも平然とされていた!! 歴史に残る聖女、いや、歴代聖女の中でもナンバーワンになること間違いなしです!! あぁ神よ。リア様に巡り合わせて頂いたこと、感謝いたします!!  」

 ヒェッ!!!

 穏やかで優しげなセサルさんが急に目を爛々とさせ語り始める。

 ノアとネージュもこの異様な雰囲気に「こいつちょっとおかしいぞ」「気持ち悪いな」とかコソコソしている。

「私は特に回復魔法が得意なわけではなく攻撃魔法も使いますし、魔物も狩ったりしますから、きっと聖女ではないと思いますよ?」

「いいえ!! パーフェクトヒールを使える者が聖女でないはずがありません!!」

 聖女じゃないと伝えても聖女だと言い、教国には行かないと言っても聖女なら来るべきだと言う。
 優しいセサルさんが一気に狂信者へとなってしまった。

 どうしようかと思っていると扉の方から声がかかる。

「皇帝陛下がいらっしゃいました」

 よかった! 助かった!!
 部屋には皇帝陛下に続き皇太子殿下、宰相閣下、騎士団長が入ってくる。
 普通なら皇帝陛下お会いするとなると緊張するところだが、今は皇帝陛下が救世主のように見える。

「待たせたね。まずは改めて、皇妃を助けてくれてありがとう。あれから3日経ったが少しずつ食事も取れるようになり、起き上がれる時間も増えてきた。2人のおかげだ」

 よかった!
 もう病の治った皇妃様には回復魔法は必要ない。なのであれから皇妃様の診察は宮廷医が行っていて、どれほどまで回復しているのか知らなかったのだ。

「まずセサル殿。長期に渡り皇妃の治療感謝する。セサル殿の治療があったからこそリア殿を探し出すまで皇妃は生きていられた。セサル殿には教国までの護衛の騎士と馬車を用意した。安全に教国へ戻れるよう腕利きを選んだので安心して欲しい」

「ありがとうございます」

 皇帝陛下の後ろには揃いの鎧を着た屈強な騎士が並んでいる。

「それではセサル様、馬車までご案内いたします」

 騎士の纏め役らしき人が前に出て案内しようとするが、セサルさんは動かない。

「リア殿も一緒に教国へ行くのです。リア様の話が終わるまで私もここで待たせていただきます」

!?

 いつ私も行くことになったの!? その話は断ったはず……。

「そうなのか?」

 皇帝陛下にそう聞かれて思わず首を振った。

「招待はされたのですがお断りしました」

「こうリア殿は言っているが」

「いいえ! リア様は聖女様です。教国へと来るべきなのです!」

 セサルさんはそう言うと、聖女がどれほど素晴らしいか、なぜ私が聖女なのか、そして聖女がどれほど教国へと来るべきなのかを語り出した。

 皆セサルさんの変わりように目を丸くして驚いている。

「セ、セサル殿。セサル殿の言うことはよくわかった。だが肝心のリア殿本人が教国へは行かないと言っている。セサル殿の先ほどの話を聞く限り、聖女であるリア殿の意見をまず聞くべきではないかな?」

 皇帝陛下は驚きつつもなんとか場を収めようとセサルさんの説得にかかる。
 セサルさんは少し考えるようなそぶりを見せたが、なんとか納得してもらえたようだ。

「聖女様の意見が大切。その通りですね。まぁリア様もすぐに教国に来るべきだとわかる時が来るでしょう。これは神の意思により決まっていることなのですから。リア様、私は一足先にセフィーロ神聖教国へと向かいます。リア様を迎え入れる万全の準備をして待っておりますので安心してお越しください。それでは失礼いたします」

 セサルさんは私の足元へと跪き、祈りを捧げるような仕草をして部屋を出て行った。
 なんだか説得できたようでできていないような気がするが、とりあえずは国へ帰って行ったのでよかったとしよう。

「リア殿、なんだか迷惑をかけて申し訳なかったな。まさかあのセサル殿がああも変わるとは思っていなかった」

 私もああなると思っていませんでした。

「いいえ、皇帝陛下が説得してくださり助かりました」

 本当に、助かりました。

「では気を取り直して報酬について話そうか。リア殿のおかげで皇妃の命は助かった。正直もう治療法もなく助からないと思っていた。本当にありがとう。リア殿には約束通り貨幣で報酬を用意した」

 そう言って宰相様が持ってきた美しい細工の箱にはギッチリと白金貨が詰まっていた。

「白金貨500枚、5億リルが入っている。受け取ってくれ」

 こ、れは……

「貰いすぎです」
 
 確実に。
 流石に魔法を1回かけただけで5億リルは多いと思う。

「いいや、これは皇妃の命の値段だ。本来ならばもっと支払いたいのだが、今回リア殿のことは発表しないという約束なのでこの金額が限界だった。申し訳ない」

 そう皇帝陛下に言われてしまうとそのまま受け取るしかない。皇妃様の命の値段をこちらが下げるわけにはいかない。

「ありがたく頂戴いたします」

 私は一旦ソファの横に立ち上がり膝をついて恭しく受け取る。
 そして宰相様から白金貨の詰まった箱を受け取ると、こんな大金無くしては大変だ! とすぐにアイテムボックスへとしまった。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...