婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai

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謁見2

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「伝えたいこと? なんでしょうか?」

「その前に、こちらに届いた手紙にはアールグレーン嬢が国外追放になったのは手違いだったと書いてありましたがお間違いないでしょうか」

「あぁ。間違いない」

 その言葉を聞いたウィルフレッド様には、ニッコリと笑みを深める。

「いえ、実はですね、手紙にはアールグレーン嬢を再びアンドレ殿下の婚約者にと書いてありましたが、それは出来ないのです」

「なっ! それは一体どういうことだ!?」

 アンドレ殿下が前に出てくるが、ウィルフレッド様はチラリと見ただけで気にした様子もなく続ける。

「私とアールグレーン嬢の兄は幼い頃からの友人で、ルボワール王国に来た際にはよくアールグレーン邸へと遊びに行ってたのはご存じでしょう。アールグレーン嬢ともその時に何度か会っており、国外追放になったアールグレーン嬢とクレンセシアで再会して共に過ごしているうちに想いを寄せるようになり、それをアールグレーン嬢に伝えたところ受け入れてもらえました」

 こちらを見つめながら甘い笑みを浮かべそう語るウィルフレッド様に、私の頬も熱くなる。

「すでにラルージュ帝国での婚約発表も済んでおり、私とアールグレーン嬢は婚約関係にあります。状況が状況でしたのでお伝えできず今回国外追放が手違いだったとの手紙を受け取りましたので、報告をと思い彼女と共に来させていただきました。婚約者なのだから、と言うのは私の婚約者という意味です」

 これ、柔やかな笑みを浮かべながら言ってるからあれだけど、そっちのせいで伝えられる状況じゃなかったんだよ? ってことよね。

「お、おお!? そ、それはそれは! そうとは知らずに申し訳ない! ラルージュ帝国の皇太子妃に我が国の令嬢が選ばれるとはなんと喜ばしいことか!」

 色々と含んだ意味も伝わったのか、国王陛下は額に汗をかきながらも祝福の言葉を口にする。
 まぁ私が戻って来なくともシャルロッテという新しい婚約者も魔法が得意だというから王族に魔法使いを取り込むという目的も達成できるし、私がラルージュ帝国の皇太子に嫁いで大国と縁ができればそれもそれで良いというところだろうか。

 「父上っ! オレリアは私の婚約者ですよ!!」

 無事話がついてよかった、と思ったところで空気の読めないのが1人。
 不貞だのなんだの喚いているけど、あれだけ盛大に婚約破棄したのを忘れたのだろうか?

 鶏頭かな? とか思っていると、ウィルフレッド様が私の思ったことをそのまま伝えてくれる。

「アンドレ殿下とアールグレーン嬢は婚約破棄されていると思いますが。それに、アンドレ殿下には新しい婚約者がいると聞いております」

「え、ええ、ええ! その通りでございます! 何やら勘違いをしているようで、ええ。」

「父上っ!」

 アンドレ殿下は最終的にギャーギャーと騒ぎながら騎士たちに抱えながら部屋から連れ出されていった。

 アンドレ殿下がいなくなってからはサクサクと話が進んだ。
 アンドレ殿下のせいで私とアルフレッド殿下の婚約でできる縁がなくなったら、とでも思ったのだろう。
 
「いや、本当にめでたい! ぜひ祝いの品を贈らせてください!」

 なにやら祝いの品もくれるらしいし、内心どう思っているかは知らないがうまく収まって良かった。
 まぁ、国力の差もあって何も言えなかったんだろうけれど。
 





「ふぅ……」
 
 これで面倒ごとはあらかた片付いた。
 今日は晩餐会のため王城に泊まるけれど、明日はやっと公爵家へ顔を出せる!
 そしてその晩餐会も先程無事に終えることができた。

 晩餐会にはアンドレ殿下も参加していてなんだかギラギラとした視線を感じたけれど、ほとんどが国王陛下とウィルフレッド殿下の会話で終わったし、特に大きな問題も起きなかった。

 面倒も無事片付き、明日家族に会うのが楽しみで仕方がない。
 
 ついルンルンッ♪とスキップしそうになり、部屋へと案内をするため前を歩いているメイドが不審に思ったのかチラリとこちらを振り返る。

 スンッ、と令嬢モードに切り替えたおかげで、気のせいだと思ったのか案内のメイドは首を傾げながらまた前を向いた。

 ……って、あれ? 私の部屋はこっちじゃなかったはず。
 侍女に目配せすると彼女もそう思っていたのか、「部屋はこちらの方ではなかったと思うのですが」と確認する。

「ラルージュ帝国の皇太子殿下の婚約者様ですので、相応しいお部屋を用意させていただきました」

 言っていることは筋が通っている。けれど、どう考えてもそのふさわしい部屋とやらがこっちにあるとは思えない。

 どんどんと通路は細くなり、どうやら王城の外へと向かっているようだ。

「……私、戻らせていただきます」

 おかしい。そう思って来た通路を戻ろうとした時、聞き慣れた声が通路へと響いた。
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