【雨は雪のように。】

社畜 晴夜

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第2曲

-来訪する少女-

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 「…あぁ、クソムカつく…」

俺の中の募っていた苛立ちが態度に現れ、周りの人間にただでさえ目つきが悪くて怖がられるのに、今日はいつも以上に怖がられている気がした。

「…あのクソ女…」

結構根に持つタイプな俺は昨日のことを朝から今の今まで引きずっている。

「よーし、席につけー。午後の授業やるぞー。」

ダルそうでテキトーな口調と共に担任の《久保 克哉くぼ かつや》先生が入って来たと同時に、俺はいつものようにペンと紙を用意して脳内で音を奏で始めた。

苛立ちを抑えながら奏でる音は耳が痛くなるほどの刺激がありすぎて、正直、聞きたくないほどのものだった。

「…はぁ…」

ペンを置いて音を奏でるのを止め、何気なく外を見るとサッカーをしている3年生の体育風景が見えた。

楽しそうな光景を眺めているとショートヘアの如何にもスポーツマンっぽい男と目が合った。

「…?」

目が合っただけなのに、俺は彼から睨まれてるような気がした。

…彼に何かした覚えなんて何も無いはずなのにな…

すると、誰かに呼ばれたのか、彼は視線の先にいる俺とは違う方向にいる誰かと言葉を交わし、視線をその誰かの方向へ向けると走って俺の視界から消えた。

「まぁ…いいか…」

「そうだな、確かにもういいよな?そろそろここの問題答えれるよな?」

「…は?」

溜息と共にダルそうな声が聞こえ、声のする方向を向いて見ると面倒くさそうな顔をして頭を掻いてる久保先生がいた。

「…なんすか?」

「なんすかじゃなくてなあ…そろそろ授業に集中しろよ。もうちょいで大人になる学生だろ?」

「まだ17のガキっすよ…」

「はぁ…手間かけさせるなよ?仕事増えたら俺の時間なくなっちまうんだからよぉ…お前らが頑張らないと俺の給料にも響きかねないんだよ…」

「せんせー、それって生徒に直接言うもんじゃねーんじゃねーの?」

「あ、やっべ…」

クラスが笑い声に包まれるが、軽く笑った後に普段通りのダルそうな顔して教卓に戻ると、俺を見て黒板を指さした。

「まぁ…とりあえず、雨止。これ解いてみろ。」

「…まぁ、いいすけど…」

立ち上がって黒板に歩を進めるとピアノの音が聞こえた。

…音楽室って俺達の教室の右上らへんだったっけな…

そんな事を考えながらチョークを手に取り問題を解き始めた。

「えっと…このXがこのYと…」

「復習してたのか?スラスラ解けてるな…」

「まぁ…ほんのちょっとだけ……これでいいすか?」

「おう。正解だ。もう戻っていいぞー。」

「うーす…」

軽く見せびらかすように解いて見せたが、内心は結構焦っていた。

何せ、俺は数学があまり得意ではないからだ。

たまたま理解出来ている問題に当たった幸運に俺は「神は存在しているんだ。」と、アホらしいことを軽く考えた。



《キーンコーンカーンコーン》

「ん?今日は短縮授業だったか…面倒事が省けたな…んじゃ、休み時間に入れー。」

久保先生はダルそうにそう言うとすぐに教室を去っていった。

「さてと…」

俺はイヤホンとウォークマンを取り出すと音楽を聴き始めた。

俺が尊敬して止まない《speaker(スピーカー)》というアーティスト項目を選ぶ。

《speaker》は《苺飴ちごめ》、《おさなかさん》、《YuKiユキ》の3人ボーカルで、作詞作曲も《YuKi》さんが務めている。去年の夏から投稿を開始していて、投稿開始からずっとランキング1位と2位を独占している。

新曲が出たのを確認したら即座にダウンロードしてしまう、と俺が胸を張れるくらい大いに尊敬している。

「…~♪」

何とも言えない綺麗なピアノの響き。見え隠れして炭酸のように弾けるギターの音色。弱そうだが、消して無くならない面白みのあるドラムの音。そして、甘く絡み合う3人の歌声。

特に俺が尊敬しているのは《おさなかさん》だ。同じ男性でも低い歌声や高い歌声、その中間でさえも難なく出せてしまう凄い人なのだ。

…現に今まで彼が個人として出した曲は全て原キーで歌っているから、尊敬が出来ない人はいないんじゃないだろうか…

脳の奥深くまで曲が染み渡る感覚に浸っていると怜音が俺の肩を揺さぶってきた。

「…んだよ、どうしたんだよ…」

「ユッキーにお客さんだってさ。」

「客…?」

「そだよー。」

教室の入口を見てみるとあの少女が立っていた。

「…あれ誰…」

「3年生の人だよー。」

「そいつが俺に何の用だよ…」

「それは自分で聞きなよー。」

不貞腐れながら言う俺に対して、怜音はいつもの笑みを浮かべながら返答した。

「はぁ。わかったよ…さんきゅな…」

そう言うと、俺は面倒臭そうに立ち上がり入口の少女の元へと立ち寄る。

俺が近付いてくるのを確認すると軽く服装を正し始めた。

「…なんだよ…」

「用があるから来たのよ!」

「俺はお前に用はない。」

「あんたに無くても私にはあるのよ!」

俺の素っ気ない返しに怒り、俺の手を引っ張ってどこかへ連れ出す。
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