あなたが選んだのは、私ではない私でした

LIN

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本編

大丈夫

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10歳になって、私はお父様にリード子爵家の三男スティーブンを紹介された。彼と婚約するらしい。

スティーブンは明るくて、よく話す人だった。冗談を言って笑わせてくれたり、真剣な表情で将来の夢を語ったり、私はスティーブンが好きになっていった。

だから、彼をケリーには会わせなかった。


13歳になって、領の専門学院に通う年になった。

私達の領に住む下位貴族は四年間学院に通い、自分達が選んだコースを履修して、卒業後に婚姻する者が大半だった。

私は一人娘なのでスティーブンと婚姻して、お父様の後を継がなければいけない。なので、二人で経営コースを選んだ。

ケリーは家を継がないから淑女コースだった。

(これで少しはケリーと離れられるわね…)

私はどこかホッとしていた。あんなに慕ってくれるケリーの事を悪く思ってしまって、勝手にケリーがやってるって決めつけてしまう自分が嫌だったからだ。


学院は寮生活なので、入学する一週間前に寮生活の準備の為に家を出た。
家に帰って来れるのは長期休暇の年に二回だけ。

前日の夜は家族でたくさん話をした。

「バネッサも明日には出て行ってしまうのか…寂しくなるな」

「もう、お父様ったら。お嫁に行くわけじゃないのよ?長期休暇には帰って来るわ」

そんな二人の会話を聞いたお母様が、笑いながら言った。

「ふふふっ。でも、ケリーもスティーブン君もいるもの。楽しい学院生活になるといいわね」

「スティーブンとはどうだい?上手くいってるかい?」

「えぇ、もちろん。お父様、素敵な縁談を組んでくれてありがとう!」

笑顔で答えた私にお父様は「私のバネッサが…」とショックを受けていたので、「お父様が一番好きな男性よ。女性はお母様」そう言ったら、踊りだしそうな位に喜んでいた。

そうして翌日、私は学院へと馬車で向かった。


・・・・・


「バネッサ!」

声かけられて振り向いたらスティーブンがいた。

「スティーブン!もう着いていたのね?」

「昨日着いたんだよ。色々と見て回ったから、明日は学院を案内するよ。今日は移動で疲れただろうから、しっかり休んでね。じゃぁ、また明日」

「ありがとう。また明日ね」


翌日、スティーブンは地図を見ながら私に学院を案内してくれていた。

「来週から授業だね」

「そうね、どんな授業をするのかしら?楽しみね」

「僕達の行く経営コースは人が多いから、3クラスあるみたいなんだ。一緒になれるといいね」

「同じクラスになれたら、きっと楽しいでしょうね」

そんな話をしながら歩いていたら、私は大きな声で呼び止められた。

「バネッサ!やっと見つけた!一緒の馬車で行こうと思ってたのに!」

ケリーだった。


振り向いた私は固まってしまった。

(え…?どうして…?)

振り返って見たケリーの髪色が変わっていた。
薄茶色のふわふわとしたキレイな色だったのに、私と同じ黒髪になっていた。

「コースは違うけど校舎は同じだから、これから4年間よろしくね!あれ、あなたは…?」

ケリーの質問にハッと我に返って答えた。

「スティーブン、この子はケリー。幼馴染なの。ケリー、こちらはスティーブン。私の婚約者よ」

「よろしく」

「……。よろしくね。私もう行かなきゃ。またね!」

ケリーは走り去って何処かに行ってしまった。


そんなケリーの後ろ姿を見ながら、スティーブンが言った。

「なんか、パッと見た感じバネッサに似た子だったね?」

「え…そうかしら?」

「うん、ずっと見てると違うけどね。雰囲気が似ているし、目も髪も同じ色でしょ?遠目から見て、双子かと思ったよ。でも、仲が良いと似てくるって言うもんね」

「そうね。小さい頃から姉妹のように育ったから…」

(なんで黒い髪の色にしたのかしら…?綺麗な色だったのに勿体ないわ。まさか、これも私とお揃いにする為に…?)


・・・・・


残念ながら私とスティーブンは別のクラスになって、教室も離れてしまった。

それでも、お昼休みは一緒に昼食を食べていた。放課後は、スティーブンや新しくできたお友達と図書室で勉強したり、カフェでお話をして過ごしていた。

ケリーもよく私を訪ねてきて、私のお友達を紹介した。「双子みたいだね」と言われて、私は初めて嫌だと感じてしまった。


ある日、昼食を終えて教室に戻った時に私は違和感を感じた。

(あら…?私ったらペンケースを机の上に出しっぱなしだったのね…ちゃんと仕舞ったと思ったのだけれど…)

ほんの少しの小さな違和感が何回かあった。でも、物が無くなるわけでもないので気の所為だと思っていた。


「ねぇ、バネッサ。昨日の放課後、校舎裏に行って何をしていたの?」

ある日、クラスメイトに聞かれた。

「え…?私は校舎裏に行ってないわよ。昨日はスティーブンと図書室で勉強していたもの」

「見間違いかしら…?きっと黒い髪だからバネッサかと思ったのね」

クラスメイトの言葉に私には一人心当たりがあった。

(黒い髪…きっとケリーね…)


・・・・・


長期休暇になって、私はミラー家に戻って来た。

「バネッサ、お帰りなさい」

「お父様、お母様、ただいま戻りました」

「部屋に戻って着替えておいで。お茶を飲みながら、学院での話を聞かせておくれ」

私は着替えてからティールームに向かって、両親と学院での話をした。

「お友達もできたし、スティーブンとも上手くいってるわ。授業も勉強になるし、とても楽しいの」

「そう、良かったわね」

私は両親にケリーのことを話してみようと思った。

「でもね…ケリーのことなんだけど…」

「ケリーか…」

「何かあったの…?」


私はケリーの違和感について話をした。

「私の真似をして最初は嬉しかったのだけれど…。ちょっと嫌になってしまったの。それに、ケリーが真似できない物を持つと壊されてしまうの。ぬいぐるみも、洋服も、アクセサリーも…。もしかしたらたまたまで、故意はないのかも知れないけれど、わざとやっているんだってどうしても思ってしまうの…。学園に入る前にケリーは髪を黒く染めて、お友達が見間違うくらいに私達は似ているんですって…」

「そうなんだね…バネッサの気持ちに気付いてあげられなくてすまなかったね。私達はバネッサがお揃いにずっと喜んでるんだと思っていたんだよ」

「あのテディベアはケリーが壊したのね…気付かなくてごめんなさいね。部屋に勝手に入るなんて考えもしなかったわ…」

「最初は嬉しかったんだもの。勝手に嫌になってしまった私が悪いのよ…」


項垂れた私にお父様が聞いた。

「それで、バネッサはケリーとどうしたいんだい?真似をしないで欲しいって言うのかい?」

「ううん。ケリーは真似をしているつもりはないみたいなの。前に言ったことがあるのよ。これ私が持ってるやつと同じよね?前にどこで買ったか教えたやつよね?って…そうしたら、知らないよ、私が見つけて買ったのよ、って言ったの…それに、髪を黒くしたケリーを見て、怖くなってしまったの。だから、私はケリーと距離を置きたいの。それでも大丈夫かしら…?」

私の言葉に、両親は頷いてくれた。

「勿論だよ。バネッサがそう思ってしまうことは、間違った事ではないよ」

「そうよ。ブラウン家とのことは心配しないで。それとなくケリーのことを夫人に話してみるわね」

ケリーと距離を置けば大丈夫。これで落ち着くんだと、私はそう思っていた。
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