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序章
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アーロンは怯えていた。
毎日執務室に入ると、机の上に一枚の紙が置かれていた。それは、見覚えのある文字で書かれた日記の一部だった。
(これはイザベラの日記だ…何故今になってこんな物が…?)
誰が置いたのか尋ねても、誰も知らなかった。毎日決まった場所にそれは置かれていたのだ。
書かれているのは、イザベラの心優しい言葉だった。
アーロンへの想い。
屋敷に勤める使用人達の心配。
リックとデニーへの疑心。
そして、イザベラが最後に残した言葉。
(一体誰がこの様な事を…誰かが私を恨んでいるのか…?だが、イザベラの家族はもうこの世にはいない…)
眠れない夜を過ごすアーロンは、隈が酷くなり、次第にふらふらと歩くようになっていた。
(そろそろ頃合いか…)
憔悴していくアーロンを見たエド達は、次の作戦を実行する事にした。
エドはデニーとフローラにそれぞれ手紙を書いた。
そして、ベラはアーロンに宛てた手紙を書いた。
― 明日の夜八時、謁見の間で待っています ―
(後は罠にかかるのを待つだけ…)
二人はそれぞれの位置で待機して、獲物が罠に掛かるのを待っていた。
夜七時半…
デニーが謁見の間に入って来た。
「アーロン様、折り入った頼みとは何でしょうか?」
しかし、誰からの返事もなく、謁見の間には誰も居なかった。
「あのボンクラめ」
悪態をついたデニーだったが、物音に気付いて姿勢を正した。
「国王は来ないよ」
「誰だ!」
声の主を探したデニーだったが、出て来たエドを見て、姿勢を元に戻した。
「デニー、君を呼び出したのは俺だよ」
「お前は…下っ端の使用人が何の用だ?」
エドは不敵に笑った。そして、嘗ての話し方でデニーに答えた。
「私だよ。髪型が変わったから気が付かないかい?鍛錬が足りないようだな」
「ま、まさか…エイドリアンか?」
「だった、と言うべきかな?」
デニーは叫んだ。
「何故お前が城にいる?追放された身の癖に!」
「冤罪だがな…」
エドの言葉に、デニーは鼻で笑った。
「その証拠が何処にある?あったとしても、やったのはリックだ。私には関係ないよ」
「デイジーの事はどう説明する?」
「私だって人間だ。同じ種族なのだから、似ている箇所があっても不思議ではないだろう?そういう物は証拠が無いとね」
「君の証言は立派な証拠だよ。ある廃墟でリックと話していただろう?」
「そ、それを聞いた人が他にもいるのか…?」
デニーは冷や汗をかいていたが、エドに悟られまいと冷静を装った。まさかリックとの会話が聞かれているとは思わなかったのだ。
「いや?私だけだよ。残念ながらね」
「それなら証拠とは呼べないな」
デニーは安心した。罪人のエド一人くらいならどうとでもなる。そう思っていた。
「イザベラの事は?」
エドが尋ねた。
「悪女がどうしたと言うのだ」
「彼女は悪女ではない!」
叫んだエドだったが、デニーは笑った。
「事実がどうであれ、皆がそう思っているんだよ。それは最早事実と言えるだろう?」
「馬鹿な事を…」
デニーは鼻で笑った。
「馬鹿な事だよ。でもね、皆が信じるのさ。それでお前も追放されて唯の罪人になった…違うかい?」
「国王がお前の悪事を許す筈がない!」
デニーは再び鼻で笑った。
「だが、あのボンクラは私の嘘の報告書を信じてお前を追放した。自分と血が繋がった唯一の子供と知りもしないで…馬鹿な国王だよ!」
声高々に言ったデニーに対し、問いかける声があった。それはエドのものではなかった。
「それはどういう意味だ?詳しく聞かせて貰おうか?」
毎日執務室に入ると、机の上に一枚の紙が置かれていた。それは、見覚えのある文字で書かれた日記の一部だった。
(これはイザベラの日記だ…何故今になってこんな物が…?)
誰が置いたのか尋ねても、誰も知らなかった。毎日決まった場所にそれは置かれていたのだ。
書かれているのは、イザベラの心優しい言葉だった。
アーロンへの想い。
屋敷に勤める使用人達の心配。
リックとデニーへの疑心。
そして、イザベラが最後に残した言葉。
(一体誰がこの様な事を…誰かが私を恨んでいるのか…?だが、イザベラの家族はもうこの世にはいない…)
眠れない夜を過ごすアーロンは、隈が酷くなり、次第にふらふらと歩くようになっていた。
(そろそろ頃合いか…)
憔悴していくアーロンを見たエド達は、次の作戦を実行する事にした。
エドはデニーとフローラにそれぞれ手紙を書いた。
そして、ベラはアーロンに宛てた手紙を書いた。
― 明日の夜八時、謁見の間で待っています ―
(後は罠にかかるのを待つだけ…)
二人はそれぞれの位置で待機して、獲物が罠に掛かるのを待っていた。
夜七時半…
デニーが謁見の間に入って来た。
「アーロン様、折り入った頼みとは何でしょうか?」
しかし、誰からの返事もなく、謁見の間には誰も居なかった。
「あのボンクラめ」
悪態をついたデニーだったが、物音に気付いて姿勢を正した。
「国王は来ないよ」
「誰だ!」
声の主を探したデニーだったが、出て来たエドを見て、姿勢を元に戻した。
「デニー、君を呼び出したのは俺だよ」
「お前は…下っ端の使用人が何の用だ?」
エドは不敵に笑った。そして、嘗ての話し方でデニーに答えた。
「私だよ。髪型が変わったから気が付かないかい?鍛錬が足りないようだな」
「ま、まさか…エイドリアンか?」
「だった、と言うべきかな?」
デニーは叫んだ。
「何故お前が城にいる?追放された身の癖に!」
「冤罪だがな…」
エドの言葉に、デニーは鼻で笑った。
「その証拠が何処にある?あったとしても、やったのはリックだ。私には関係ないよ」
「デイジーの事はどう説明する?」
「私だって人間だ。同じ種族なのだから、似ている箇所があっても不思議ではないだろう?そういう物は証拠が無いとね」
「君の証言は立派な証拠だよ。ある廃墟でリックと話していただろう?」
「そ、それを聞いた人が他にもいるのか…?」
デニーは冷や汗をかいていたが、エドに悟られまいと冷静を装った。まさかリックとの会話が聞かれているとは思わなかったのだ。
「いや?私だけだよ。残念ながらね」
「それなら証拠とは呼べないな」
デニーは安心した。罪人のエド一人くらいならどうとでもなる。そう思っていた。
「イザベラの事は?」
エドが尋ねた。
「悪女がどうしたと言うのだ」
「彼女は悪女ではない!」
叫んだエドだったが、デニーは笑った。
「事実がどうであれ、皆がそう思っているんだよ。それは最早事実と言えるだろう?」
「馬鹿な事を…」
デニーは鼻で笑った。
「馬鹿な事だよ。でもね、皆が信じるのさ。それでお前も追放されて唯の罪人になった…違うかい?」
「国王がお前の悪事を許す筈がない!」
デニーは再び鼻で笑った。
「だが、あのボンクラは私の嘘の報告書を信じてお前を追放した。自分と血が繋がった唯一の子供と知りもしないで…馬鹿な国王だよ!」
声高々に言ったデニーに対し、問いかける声があった。それはエドのものではなかった。
「それはどういう意味だ?詳しく聞かせて貰おうか?」
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