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第一章
一方その頃 エイドリアン2
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ギジルがケナード領に仲間入りをしていた頃の王都にあるテイラー家では…
「これは一体どういう事なんだ…?」
エイドリアンが手紙を握りしめてやきもきとしていた。
今か今かと待ち続け、待てども待てども返事が来ない。
こちらの不貞が原因の離縁である為に強気に出るわけにも行かず、ずっとケナード家からの返事を待っていたのだ。
漸くビクトールから手紙の返事が届き、手紙を読み終わったところだった。
ー 親愛なるエイドリアン殿
此度は我が愛するマーガレットをケナード家に返してくれてありがとう。感謝をしているよ。
そちらから頼み込んだ縁談であったのに、と思わなくもないが、私達はケナード家が再び揃ったことに喜びを感じている。
ジェラルド君に真実の愛の相手がいるとは思わなかったが…おめでとう。心から祝福するよ。
何故婚姻を整える前に知らせなかったのかと、疑問に感じないわけでもないが、真実の愛とは尊いもの。いつまでも仲睦まじく過ごして欲しいと言うのは、私とマーガレットを始めとする、ケナード家からの願いだ。
さて、貴殿から手紙は拝見させてもらったよ。
謝罪は受け取ろう。それで充分だよ。お互い忙しい身だ、時間は有効に使おう。私から貴殿への助言の言葉を送ろう。
『迅速果断』
これから互いに忙しくなるだろうが、応援するよ。
共同事業については心配しなくてもいいよ。
此方からは破棄をしないと約束しよう。この手紙を証拠として取っておくと良い。私も領民を困らせるわけにはいかないからね。私はマーガレットを悲しませたくはない。
真実の愛とは偉大なものだな。健闘を祈る。
ビクトール ー
(腑に落ちない言い回しもあったが…とりあえず共同事業はそのままだと言うことか…?直接謝罪に行かなければと思っていたが…まぁ、ビクトールも手紙だけで充分だと書いてあるし、大丈夫だろう)
漸く手紙の返事が来たことに安心したエイドリアンだった。
手紙が届くまで王都の屋敷から出ることのできなかったエイドリアンは、そのままテイラー領の屋敷に向かった。
ジェラルドの真実の愛の相手キャシーに会い、それから縁談を整える為に迅速に行動しなければならない。子供が生まれる前にしなければならない事が山のようにあるのだ。
(とにかく時間がない。早くしなければ…それにしても、キャシーとは何処のご令嬢なのだ…?)
エイドリアンはテイラー領に向かう馬車の中で、これからの段取りを考えていたのだった。
テイラー領の屋敷に着いたエイドリアンは唖然とした。
(何故こんなにも薄汚れているのだ…?屋敷の壁はもっと白かった筈だが…)
屋敷の中は更に酷かった。
「おい!使用人達は何をしているのだ!掃除もまともにできんのか!」
エイドリアンは叫んだが、使用人達は誰一人として出てこなかった。
(誰も…いないのか…?)
エイドリアンがそう考えた時、ジェラルドが出てきた。
「父上!帰っていらしたんですね!」
嬉しそうに階段から降りてくるジェラルド。
(ん…?何だ…?)
ジェラルドが近付いて来るほど強くなる臭いに、エイドリアンは手で鼻を抑えた。
「ジェラルド、湯浴みはしているのか…?」
「もちろんですよ!まぁ、下級使用人達なので手際は悪いですけどね」
「上級使用人達は何をしているんだ…?」
エイドリアンは恐る恐る聞いた。
「出ていきましたよ?手紙に書いて送ったでしょう」
(まさか…出ていったのは二人だけではなかったのか?)
唖然と立ち尽くすエイドリアンに気付きもせず、ジェラルドは馬鹿にしたように笑った。
「マーガレットについて行きたいなど、馬鹿な使用人達ですよ」
そして、キャシーに会ったエイドリアンは崩れ落ちた。
「父上、彼女がキャシーです。私の真実に愛する女性です」
「お義父様、はじめまして。キャシーです!」
(キャシーとはただのキャシーだったのか…?よりにもよって、何故平民なのだ…まずいぞ。このままでは間違いなくテイラー家は終わってしまう。なんとかせねば…)
「キャシー、君はジェラルドを真実に愛する者として、彼の為に、次期伯爵夫人になる為に、たゆまぬ努力ができるかね?」
必死に解決策を考えたエイドリアンが立ち上がり、キャシーに聞いた。
「もちろんです!私はジェラルド様を心から愛しているんです!ジェラルド様の為なら何だってできるわ!綺麗に着飾って、お茶会にも参加できるし、ご令嬢ともお話だってできます!」
「あぁ、キャシー。君はなんて素敵な女性なんだ!私は怖くなってしまうよ。君と出会えたことで、私の一生分の幸福を使い切ってしまった…でも、君と居られるだけで私は幸せさ」
エイドリアンは二人を白けた目で見ていた。
(真実の愛とはこういうものなのか…?)
「ウォッホン…兎に角、キャシーを何処かの貴族家に急いで養子にして貰うよう頼むしかない。子供が生まれる前に全て終わらせなければならないのだ」
「何故です…?マーガレットとは離縁したんです。このままキャシーと婚姻を結べば良いだけではないですか!」
ジェラルドは訳がわからず叫んだ。
(ジェラルドは何を言っているのだ?まさか、本気で言っているのではないだろうな…?)
エイドリアンはジェラルドの言い分を疑問に思った。
「平民のままでは次期伯爵夫人にはなれない。貴族家の養子に入り、令嬢となることで認められるのだ。このままでは生まれてくる子供は跡取りにはなれない。この国の常識だろう。まさか、知らなかったのか…?」
エイドリアンの言葉に、ジェラルドは焦った。
「も、もちろん知っていますよ…当たり前じゃないですか!私を誰だと思っているんですか?ハハハ…」
「はぁ…まぁ良い。一ヶ月でキャシーに教育を施し、その間に養子先を決める。並の努力ではいかんぞ?養子先にとって利益にならねば、どの家も迎えてはくれまい。伯爵家とは言わん。子爵家でも良いから、受け入れて貰えるように努力をしろ」
「大丈夫ですよ!キャシーはこんなにも魅力に溢れた女性です。侯爵家にだって受け入れられますよ。キャシー、私達の幸せな未来のために、頑張ってくれるかい?」
ジェラルドは胸を張って答え、キャシーに尋ねた。
「えぇ!よくわからなかったけど、貴族家に養子に入ればいいのね?愛するジェラルド様の為に頑張るわ!」
「あぁ、キャシー。君に無理をさせてしまう、無力な私を許しておくれ…愛しているよ!」
「ジェラルド様、私も愛してるわ!」
「………」
(迅速果断…意味がわからなかったが、この事を言っていたのか。それにしても、早急に上級使用人達の手配をしなければ…)
荒れ果てた屋敷と呑気な二人を見て、不安要素しか感じないエイドリアンだった。
「これは一体どういう事なんだ…?」
エイドリアンが手紙を握りしめてやきもきとしていた。
今か今かと待ち続け、待てども待てども返事が来ない。
こちらの不貞が原因の離縁である為に強気に出るわけにも行かず、ずっとケナード家からの返事を待っていたのだ。
漸くビクトールから手紙の返事が届き、手紙を読み終わったところだった。
ー 親愛なるエイドリアン殿
此度は我が愛するマーガレットをケナード家に返してくれてありがとう。感謝をしているよ。
そちらから頼み込んだ縁談であったのに、と思わなくもないが、私達はケナード家が再び揃ったことに喜びを感じている。
ジェラルド君に真実の愛の相手がいるとは思わなかったが…おめでとう。心から祝福するよ。
何故婚姻を整える前に知らせなかったのかと、疑問に感じないわけでもないが、真実の愛とは尊いもの。いつまでも仲睦まじく過ごして欲しいと言うのは、私とマーガレットを始めとする、ケナード家からの願いだ。
さて、貴殿から手紙は拝見させてもらったよ。
謝罪は受け取ろう。それで充分だよ。お互い忙しい身だ、時間は有効に使おう。私から貴殿への助言の言葉を送ろう。
『迅速果断』
これから互いに忙しくなるだろうが、応援するよ。
共同事業については心配しなくてもいいよ。
此方からは破棄をしないと約束しよう。この手紙を証拠として取っておくと良い。私も領民を困らせるわけにはいかないからね。私はマーガレットを悲しませたくはない。
真実の愛とは偉大なものだな。健闘を祈る。
ビクトール ー
(腑に落ちない言い回しもあったが…とりあえず共同事業はそのままだと言うことか…?直接謝罪に行かなければと思っていたが…まぁ、ビクトールも手紙だけで充分だと書いてあるし、大丈夫だろう)
漸く手紙の返事が来たことに安心したエイドリアンだった。
手紙が届くまで王都の屋敷から出ることのできなかったエイドリアンは、そのままテイラー領の屋敷に向かった。
ジェラルドの真実の愛の相手キャシーに会い、それから縁談を整える為に迅速に行動しなければならない。子供が生まれる前にしなければならない事が山のようにあるのだ。
(とにかく時間がない。早くしなければ…それにしても、キャシーとは何処のご令嬢なのだ…?)
エイドリアンはテイラー領に向かう馬車の中で、これからの段取りを考えていたのだった。
テイラー領の屋敷に着いたエイドリアンは唖然とした。
(何故こんなにも薄汚れているのだ…?屋敷の壁はもっと白かった筈だが…)
屋敷の中は更に酷かった。
「おい!使用人達は何をしているのだ!掃除もまともにできんのか!」
エイドリアンは叫んだが、使用人達は誰一人として出てこなかった。
(誰も…いないのか…?)
エイドリアンがそう考えた時、ジェラルドが出てきた。
「父上!帰っていらしたんですね!」
嬉しそうに階段から降りてくるジェラルド。
(ん…?何だ…?)
ジェラルドが近付いて来るほど強くなる臭いに、エイドリアンは手で鼻を抑えた。
「ジェラルド、湯浴みはしているのか…?」
「もちろんですよ!まぁ、下級使用人達なので手際は悪いですけどね」
「上級使用人達は何をしているんだ…?」
エイドリアンは恐る恐る聞いた。
「出ていきましたよ?手紙に書いて送ったでしょう」
(まさか…出ていったのは二人だけではなかったのか?)
唖然と立ち尽くすエイドリアンに気付きもせず、ジェラルドは馬鹿にしたように笑った。
「マーガレットについて行きたいなど、馬鹿な使用人達ですよ」
そして、キャシーに会ったエイドリアンは崩れ落ちた。
「父上、彼女がキャシーです。私の真実に愛する女性です」
「お義父様、はじめまして。キャシーです!」
(キャシーとはただのキャシーだったのか…?よりにもよって、何故平民なのだ…まずいぞ。このままでは間違いなくテイラー家は終わってしまう。なんとかせねば…)
「キャシー、君はジェラルドを真実に愛する者として、彼の為に、次期伯爵夫人になる為に、たゆまぬ努力ができるかね?」
必死に解決策を考えたエイドリアンが立ち上がり、キャシーに聞いた。
「もちろんです!私はジェラルド様を心から愛しているんです!ジェラルド様の為なら何だってできるわ!綺麗に着飾って、お茶会にも参加できるし、ご令嬢ともお話だってできます!」
「あぁ、キャシー。君はなんて素敵な女性なんだ!私は怖くなってしまうよ。君と出会えたことで、私の一生分の幸福を使い切ってしまった…でも、君と居られるだけで私は幸せさ」
エイドリアンは二人を白けた目で見ていた。
(真実の愛とはこういうものなのか…?)
「ウォッホン…兎に角、キャシーを何処かの貴族家に急いで養子にして貰うよう頼むしかない。子供が生まれる前に全て終わらせなければならないのだ」
「何故です…?マーガレットとは離縁したんです。このままキャシーと婚姻を結べば良いだけではないですか!」
ジェラルドは訳がわからず叫んだ。
(ジェラルドは何を言っているのだ?まさか、本気で言っているのではないだろうな…?)
エイドリアンはジェラルドの言い分を疑問に思った。
「平民のままでは次期伯爵夫人にはなれない。貴族家の養子に入り、令嬢となることで認められるのだ。このままでは生まれてくる子供は跡取りにはなれない。この国の常識だろう。まさか、知らなかったのか…?」
エイドリアンの言葉に、ジェラルドは焦った。
「も、もちろん知っていますよ…当たり前じゃないですか!私を誰だと思っているんですか?ハハハ…」
「はぁ…まぁ良い。一ヶ月でキャシーに教育を施し、その間に養子先を決める。並の努力ではいかんぞ?養子先にとって利益にならねば、どの家も迎えてはくれまい。伯爵家とは言わん。子爵家でも良いから、受け入れて貰えるように努力をしろ」
「大丈夫ですよ!キャシーはこんなにも魅力に溢れた女性です。侯爵家にだって受け入れられますよ。キャシー、私達の幸せな未来のために、頑張ってくれるかい?」
ジェラルドは胸を張って答え、キャシーに尋ねた。
「えぇ!よくわからなかったけど、貴族家に養子に入ればいいのね?愛するジェラルド様の為に頑張るわ!」
「あぁ、キャシー。君に無理をさせてしまう、無力な私を許しておくれ…愛しているよ!」
「ジェラルド様、私も愛してるわ!」
「………」
(迅速果断…意味がわからなかったが、この事を言っていたのか。それにしても、早急に上級使用人達の手配をしなければ…)
荒れ果てた屋敷と呑気な二人を見て、不安要素しか感じないエイドリアンだった。
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