真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN

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第一章

謎の男

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オリビアとセバスは、何処か緊張した面持ちで街を散策するマーガレットに付いて歩いていた。

彼らの視線がキョロキョロと忙しなく動いていた。


― マーガレット様はとても可愛らしいお方です。幾つになられても見ていて微笑ましい。ですが…どうしても…外出すると何か得体の知れないものを拾って来てしまうのです。いえ…この間の屋敷の様に、見つけてしまうのです。良いですか…?くれぐれも…くれぐれも…何かを見つけてしまわないように気を引き締めて行動して下さい。あぁ、体がもう一つあればいいのに…あと五人は必要かもしれないな…?

そうぼやきながら仕事に戻っていったクロードの言葉。


((今度は失敗できない!))

ケナード家に来て早々にクロードに注意されてしまったオリビア達は、外出前の屋敷でクロードに必死に頼まれてしまい、気を引き締めたのだった。


(今日はどうしようかしら?久しぶりにプラムに会いに行こうかしら?)

プラムに会いに行くと決めたマーガレットは、プラレット本店に向かって歩きだした。

(あら…?妖精さんがあちらの方に飛んでいくわ。なにか面白い事があるのね!)

ふらふら~と路地裏に向かって行くマーガレットを、セバスが慌てて呼び止めた。


「マ…お嬢様!そちらは危険です!気になるのでしたら、我々が先に確認いたしますから!」

(あらまぁ、セバスったら真面目なのね。ここはケナード領なのだから、私の名前なんてみんな知っているわ)

そんなことを考えながらマーガレットは路地裏を覗き、セバスは手を伸ばした状態で固まっていた。

マーガレットが路地裏を覗くと、男性だろうか?マントを頭から羽織った人が蹲っていたのだった。


「あら、大変だわ!そこのお方、一体どうしてしまったの?」

「あ、空腹過ぎて…」

男は情けない声でマーガレットに答えた。

「まぁ、それは大変ね。何も食べていないのかしら?」

「あぁ…」

「そうなのね…そうだわ!私、懇意にしている料理人がいるの。彼の食堂に行きましょう?セバス、手伝って貰えるかしら?」

マーガレットに頼まれて、男の補助をしながら、セバスは考えていた。

(私はどうすればいいのだ…)

チラリとオリビアを見ると、オリビアは諦めた目をしていた。セバスよりも一緒にいる時間の多いオリビアは、マーガレットが男を見つけた時には既に腹を括っていたのだった。


「このお店よ。さぁ、入りましょう?」

食堂に入ったマーガレット達は揃って席に着いた。

「わ…俺は持ち合わせが無いのだが…」

そう言った男に、マーガレットはクスクスと笑って言った。

「気にしないでくださいな。私もここに来たかったの。大丈夫よ」

一瞬マーガレットに見惚れてしまった男が、我に返って質問した。

「き…あんたはなんて言う名なんだ?」

「私はマー…「メアリー様にございます」」

セバスがマーガレットの言葉を遮った。

(あらまぁ、セバスは心配性なのね。ケナード領は安全なのだけれど…)

マーガレットがそんなことを思っていると、いい匂いが厨房からしてきた。


ホクホクと湯気の立つ料理を持った料理人トムが、マーガレットの席に料理を運んだ。

「マーガレット様、お待たせ!腕によりをかけて作ったよ!」

トムがドンッと料理を並べていった。


「……」

「マーガレット様、ね…」

(まぁまぁ、セバスったらお顔を青くさせてしまって…領民たちは私の名前を呼んでくれているのだから、すぐにわかってしまう嘘なのに…おかしな人ね)

こうしてマーガレット達は気まずい空気の中、黙々とトムに出された料理を食べたのだった。


黙々と出された料理を食べている男を見て、マーガレットは尋ねた。

「あなたは何ていうお名前なの?私はマーガレットよ。先程は申し訳ないわね。セバスは心配性なの」

「いや、き…マーガレット様は貴族だろう?ご令嬢ならば仕方ない」

男はまた料理を口に入れ、もぐもぐとさせてから続けた。

「わ…俺の名は、ギ…ジルだ。それにしてもここの料理は美味いな。こんな美味いものはし…いや、こんな美味いものは食べたことがない!」

「ギジルって言うのね。素敵なお名前ね」

ギジルがつっかえながらマーガレットに尋ねた。

「あぁ、ありがとう。ところでマーガレット様。ここでわ…俺にできる仕事はないだろうか?暫くこの街に滞在したいと思っているのだ」

そんなギジルの問いにマーガレットは考えた。

(そうね…何があるかしら…?そうだわ!ギジルは食べる所作も綺麗だったもの、貴族風宿屋でなら雇えるわね。お父様はお優しいお方ですもの。きっと許してくださるわ!)

そうしてマーガレットは、料理を平らげた謎の男ギジルを連れて屋敷に帰ったのだった。



「………」

マーガレットの頼みを聞いたビクトールは固まってしまったが、可愛い娘の頼み事に否とは言えなかった。

(ギジルなどと得体の知れない男など…私のメグに惚れてしまったらどうするんだ!)

嫌なら断ればいいものの、マーガレットを悲しませたくなかったビクトールは了承してしまったことで、一人頭を抱えていたのだった。


ギジルを連れ帰ってしまったオリビア達は、クロードにしっかりと叱られていた。

(私はどうすれば良かったんだ…いつも頭を抱えるクロードさんの気持ちがわかってしまった…)

一人頭を抱えるセバス。

(マーガレット様ですもの…)

そんなセバスを見ながら、既に諦めの境地にいるオリビアだった。

こうして謎の男ギジルは、マーガレットの住むケナード領に仲間入りしたのだった。
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