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第一章
メンデル男爵
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マーガレットとキャシーは、ケナード領に住むメンデル男爵家の小さな屋敷を訪れていた。
「ごきげんよう。突然で申し訳ないわね」
「滅相もございません。こんな年寄り二人の屋敷ですが、ようこそお越し下さいました」
メンデル男爵夫妻は子宝に恵まれず、ずっと二人で暮らしている五十代の夫婦だった。
客間に案内されたマーガレットは、出されたお茶を一口飲んでから、男爵夫妻に話し始めたのだった。
「手紙でお伝えした通りなのだけれど、こちらのキャシーの養親になって貰いたいの。キャシーはテイラー次期伯爵様の真実の愛のお相手様で、とても素直で可愛らしい女性なのよ」
「テイラー次期伯爵様と言うと、マーガレット様の…?」
「元旦那様ね。お恥ずかしいお話だわ」
メンデル男爵夫妻は嬉しそうにキャシーを紹介したマーガレットに困惑していた。
(いくら真実の愛とは言え、自分を離縁に追いやった人間だぞ?何故そんなに嬉しそうに協力できるのだ…)
しかし、男爵は気が付いた。
(いや、マーガレット様は誰にでもお優しいお方だった。きっと本心から祝福していらっしゃるのだろう…)
「マーガレット様、貴方様のお気持ちは充分に理解いたしました。是非にご協力させて頂きたい…と、言いたいところなのですが…そこのキャシーの様子を見るお時間を我々に頂けないでしょうか?いくらマーガレット様のご紹介とはいえ、どのような者か見定めないことには、是と言えないのです…」
男爵は申し訳なさそうにマーガレットに言った。
「もちろんよ。でも、キャシーはまだ淑女教育の途中なの。それに、身重のお体でもあるのだけれど…あまり無理をさせないとお約束してもらえるかしら?」
(なんと…もう子供までいたのか。なるほど、道理でマーガレット様が動いてしまう筈だ。全くマーガレット様というお方は…)
男爵はマーガレットの優しさに心を打たれていたのだった。
- 帰りの馬車の中 -
「私は全く何も聞いていないんだけど?誰よ、メンデル男爵って…」
キャシーが憤慨したようにマーガレットに詰め寄っていた。
「あら、メンデル男爵は学者なのよ?」
「いや、そんな事知らないけど…」
キャシーはマーガレットのお気楽な性格に少し呆れてしまった。
「男爵夫妻はずっと子供ができなくて、今はお二人で過ごしているの。キャシーが訪ねたら喜ぶと思ったのだけれど…とてもお優しい方達だったでしょう?」
「そうだけど…あなた、明日から私をあの家に一人置いていくつもりでしょう?どうすればいいのよ…」
「今まで通りに頑張れば大丈夫よ。あまり思い詰めてしまうと、お体に障ってしまうわ…」
(誰のせいだと思ってるのよ!)
こうしてキャシーのメンデル男爵家の三日間の滞在が決まってしまったのだった。
そして…
三日が経ち、マーガレットがメンデル男爵家にキャシーを迎えに来た。
「マーガレット!見て見て!昨日はお義母様とクッキーを焼いたの!上手く焼けているでしょう?」
キャシーが嬉しそうにクッキーをマーガレットに持って来た。
(あらまぁ!キャシーはとても楽しい時間を過ごせたのね。もうお義母様と呼んでいらっしゃるわ)
「とても綺麗に焼けたのね。いい匂いだわ。メンデル夫妻とは仲良くなれたみたいね?」
マーガレットは嬉しくなって笑っていた。
「そう呼べっていうから…仕方なくよ!」
(まぁ、素直ではないキャシーも可愛らしいのね)
マーガレットがそんな事を考えていると、男爵が出迎えに来た。
「マーガレット様、此度は誠にありがとうございます!」
「メンデル男爵、それでは…?」
「えぇ、是非メンデル男爵家で養子に迎えさせて頂きたいと思います。淑女には遠いですが、妻が教えると張り切ってしまいましてね…娘が出来たようで嬉しいのでしょう。こんなに賑やかな我が家は初めてでして…」
男爵は少し恥ずかしそうに言った。
マーガレットは嬉しくなって、キャシーにも尋ねた。
「キャシーはどうかしら?」
「この家なら養子になってあげてもいいわよ!」
キャシーはふんっとそっぽを向いて言ったのだが、顔は真っ赤に染まっていた。
「マーガレット様、実はもう一つお頼みしたいことがあるのです。キャシーとも話したのですが、暫くキャシーを我が家に住まわせたいのです。すぐに嫁いで母親になる身ですので、それまで共に過ごしたいのですが…」
「まぁ!素敵な考えね。もちろんよ。でも、テイラー伯爵家にはしっかりと伝えてもらえるかしら?」
こうして無事にキャシーの養子縁組が決まったのだった。
ケナード家に帰る馬車の中で、キャシーは小さな声でマーガレットに言った。
「マーガレット、ありがとう。私には小さい頃から両親がいなかったから…なんだか嬉しかったわ」
「キャシー、ごめんなさいね。よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら?」
「もうっ!何でもないわよ!!」
メンデル男爵家からの手紙を受け取ったジェラルドは、すぐさま男爵家を訪れた。
「あぁ、キャシー。やっと会えたんだね。もう何処へも行かないでおくれ…」
「ジェラルド様。あのね…私、男爵家の養子になれたの!全部マーガレットがやってくれたのよ?私はマーガレットに酷いことをしたのに、喜んで協力してくれたの。私達は結婚できるのよ!」
「マーガレットが…?そうか、そうだったんだね…」
(冷酷な女性だと思っていたが、本当は優しい女性だったのか…私は酷いことをしてしまったんだな…)
ジェラルドは考えを改めたのだった。
後日、無事に婚姻することの出来た二人はマーガレットを訪ねにケナード家に訪れた。
「マーガレット嬢、此度は感謝してもしきれない。以前の私の行動も謝罪したい…」
ジェラルドはマーガレットに頭を下げた。
「どうか頭を上げてくださいな。私は少しだけお手伝いをしただけだわ。キャシーの努力の結果だもの」
「マーガレット…」
キャシーはマーガレットの優しさに感激していた。
そして、マーガレットも変わった二人を見て感激していた。
キャシーとジェラルドの周囲には、以前はいなかった妖精が飛んでいたのだった。
「ごきげんよう。突然で申し訳ないわね」
「滅相もございません。こんな年寄り二人の屋敷ですが、ようこそお越し下さいました」
メンデル男爵夫妻は子宝に恵まれず、ずっと二人で暮らしている五十代の夫婦だった。
客間に案内されたマーガレットは、出されたお茶を一口飲んでから、男爵夫妻に話し始めたのだった。
「手紙でお伝えした通りなのだけれど、こちらのキャシーの養親になって貰いたいの。キャシーはテイラー次期伯爵様の真実の愛のお相手様で、とても素直で可愛らしい女性なのよ」
「テイラー次期伯爵様と言うと、マーガレット様の…?」
「元旦那様ね。お恥ずかしいお話だわ」
メンデル男爵夫妻は嬉しそうにキャシーを紹介したマーガレットに困惑していた。
(いくら真実の愛とは言え、自分を離縁に追いやった人間だぞ?何故そんなに嬉しそうに協力できるのだ…)
しかし、男爵は気が付いた。
(いや、マーガレット様は誰にでもお優しいお方だった。きっと本心から祝福していらっしゃるのだろう…)
「マーガレット様、貴方様のお気持ちは充分に理解いたしました。是非にご協力させて頂きたい…と、言いたいところなのですが…そこのキャシーの様子を見るお時間を我々に頂けないでしょうか?いくらマーガレット様のご紹介とはいえ、どのような者か見定めないことには、是と言えないのです…」
男爵は申し訳なさそうにマーガレットに言った。
「もちろんよ。でも、キャシーはまだ淑女教育の途中なの。それに、身重のお体でもあるのだけれど…あまり無理をさせないとお約束してもらえるかしら?」
(なんと…もう子供までいたのか。なるほど、道理でマーガレット様が動いてしまう筈だ。全くマーガレット様というお方は…)
男爵はマーガレットの優しさに心を打たれていたのだった。
- 帰りの馬車の中 -
「私は全く何も聞いていないんだけど?誰よ、メンデル男爵って…」
キャシーが憤慨したようにマーガレットに詰め寄っていた。
「あら、メンデル男爵は学者なのよ?」
「いや、そんな事知らないけど…」
キャシーはマーガレットのお気楽な性格に少し呆れてしまった。
「男爵夫妻はずっと子供ができなくて、今はお二人で過ごしているの。キャシーが訪ねたら喜ぶと思ったのだけれど…とてもお優しい方達だったでしょう?」
「そうだけど…あなた、明日から私をあの家に一人置いていくつもりでしょう?どうすればいいのよ…」
「今まで通りに頑張れば大丈夫よ。あまり思い詰めてしまうと、お体に障ってしまうわ…」
(誰のせいだと思ってるのよ!)
こうしてキャシーのメンデル男爵家の三日間の滞在が決まってしまったのだった。
そして…
三日が経ち、マーガレットがメンデル男爵家にキャシーを迎えに来た。
「マーガレット!見て見て!昨日はお義母様とクッキーを焼いたの!上手く焼けているでしょう?」
キャシーが嬉しそうにクッキーをマーガレットに持って来た。
(あらまぁ!キャシーはとても楽しい時間を過ごせたのね。もうお義母様と呼んでいらっしゃるわ)
「とても綺麗に焼けたのね。いい匂いだわ。メンデル夫妻とは仲良くなれたみたいね?」
マーガレットは嬉しくなって笑っていた。
「そう呼べっていうから…仕方なくよ!」
(まぁ、素直ではないキャシーも可愛らしいのね)
マーガレットがそんな事を考えていると、男爵が出迎えに来た。
「マーガレット様、此度は誠にありがとうございます!」
「メンデル男爵、それでは…?」
「えぇ、是非メンデル男爵家で養子に迎えさせて頂きたいと思います。淑女には遠いですが、妻が教えると張り切ってしまいましてね…娘が出来たようで嬉しいのでしょう。こんなに賑やかな我が家は初めてでして…」
男爵は少し恥ずかしそうに言った。
マーガレットは嬉しくなって、キャシーにも尋ねた。
「キャシーはどうかしら?」
「この家なら養子になってあげてもいいわよ!」
キャシーはふんっとそっぽを向いて言ったのだが、顔は真っ赤に染まっていた。
「マーガレット様、実はもう一つお頼みしたいことがあるのです。キャシーとも話したのですが、暫くキャシーを我が家に住まわせたいのです。すぐに嫁いで母親になる身ですので、それまで共に過ごしたいのですが…」
「まぁ!素敵な考えね。もちろんよ。でも、テイラー伯爵家にはしっかりと伝えてもらえるかしら?」
こうして無事にキャシーの養子縁組が決まったのだった。
ケナード家に帰る馬車の中で、キャシーは小さな声でマーガレットに言った。
「マーガレット、ありがとう。私には小さい頃から両親がいなかったから…なんだか嬉しかったわ」
「キャシー、ごめんなさいね。よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら?」
「もうっ!何でもないわよ!!」
メンデル男爵家からの手紙を受け取ったジェラルドは、すぐさま男爵家を訪れた。
「あぁ、キャシー。やっと会えたんだね。もう何処へも行かないでおくれ…」
「ジェラルド様。あのね…私、男爵家の養子になれたの!全部マーガレットがやってくれたのよ?私はマーガレットに酷いことをしたのに、喜んで協力してくれたの。私達は結婚できるのよ!」
「マーガレットが…?そうか、そうだったんだね…」
(冷酷な女性だと思っていたが、本当は優しい女性だったのか…私は酷いことをしてしまったんだな…)
ジェラルドは考えを改めたのだった。
後日、無事に婚姻することの出来た二人はマーガレットを訪ねにケナード家に訪れた。
「マーガレット嬢、此度は感謝してもしきれない。以前の私の行動も謝罪したい…」
ジェラルドはマーガレットに頭を下げた。
「どうか頭を上げてくださいな。私は少しだけお手伝いをしただけだわ。キャシーの努力の結果だもの」
「マーガレット…」
キャシーはマーガレットの優しさに感激していた。
そして、マーガレットも変わった二人を見て感激していた。
キャシーとジェラルドの周囲には、以前はいなかった妖精が飛んでいたのだった。
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