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第二章
閑話 ビクトールとスザンヌ
マーガレットは家族でのんびりと長閑な村で過ごしていた。
村を歩いたり、ピクニックに行ったり、スコッグ達を散歩に連れて行って一緒に遊んだりと、栄えた街では無いからこそ出来る楽しさを感じていた。
「偶にはお父様とお母様のお二人でお出かけしてはどうかしら?私はこの子達とお散歩に行って参りますわ」
朝食の後にマーガレットがビクトール達に言った。
「さぁどうぞ」
マーガレットにそう言われて宿を追い出されたビクトールとスザンヌは、護衛を一人連れて、二人で村の近くの川岸を歩くことにした。
二人の話の内容は殆どマーガレットのことだった。
「メグは幾つになってもお転婆だね。君に似てくれたんだろうね」
ビクトールがマーガレットを思いながらスザンヌに言うと、スザンヌは笑って返した。
「あら、優れた人を見つけて来るのはあなたに似ているわ」
「私はあそこ迄では無いだろう?君に似て好奇心旺盛なんだよ」
ビクトールは、スザンヌとマーガレットを心から愛していた。何にでも興味を持つ二人を、いつも微笑ましく思っていたのだ。
「私達の娘ですもの。どちらにも似ているのよ」
「あぁ、そうだね。私達の自慢の娘だよ」
穏やかに話す二人だったが、最初から仲の良い夫婦だった訳ではなかった。
ーーーーー
ビクトールとスザンヌは政略結婚で結ばれた夫婦だった。
ケナード伯爵家の嫡男ビクトールが、スミス侯爵家からの援助を理由に次女スザンヌと婚約したのだ。
ビクトールは美しいスザンヌに緊張して上手く喋ることができなかった。それに、相手は格上の侯爵令嬢だ。下手なことをして嫌われたくはなかった。
スザンヌは喋らないビクトールに不満を感じていた。それに、侯爵家に劣る伯爵家と人材育成を謳いながらも閑素なケナード領に満足できなかった。
二人はそのまま婚姻したが、スザンヌはケナード家での生活をつまらなく思っていた。
そんなスザンヌは出歩くこともせず、毎日屋敷で本を読んで過ごしていた。当時の二人の交流は、必要最低限のものだった。
婚姻してから一年経ったある日、ビクトールがスザンヌに贈り物をした。
「スザンヌ、今日は記念日だから職人に頼んで作って貰ったんだ。気に入ってくれるだろうか…?」
緊張したビクトールがスザンヌに贈った物。
輝く宝石は付いていないが、細かい細工の施された綺麗な指輪だった。
「まぁ、とても素敵ね」
スザンヌはそっと手を差し出し、ビクトールは指輪をスザンヌの右手に嵌めた。
「綺麗だろう?ケナード領の職人は腕が良いんだよ。いつかきっと王国中で人気になると思うんだ」
「他にはどんな物があるのかしら?」
スザンヌはこの時になって初めて、ケナード領に興味を持ったのだった。
それから二人はケナード領を一緒に歩くようになっていた。
スザンヌは初めてみる領内に目を輝かせて、様々な物に興味を持った。
「まぁ、あれは何かしら?」
「人が集まっているわ。あそこで何をしているのかしら?」
「これは何に使う物なのかしら?」
ビクトールはスザンヌの質問に一つ一つ答え、二人の距離は徐々に縮まっていった。
ある日、スザンヌが一冊の本を持ってビクトールの執務室を訪ねた。
「ビクトール様、この本に描かれている絵を装飾品やお洋服に使えないかしら?とても素敵だと思うの」
スザンヌが持っていたのは、子供に読み聞かせる絵本だった。スザンヌの妊娠が発覚し、喜んだビクトールが張り切って用意した物の一つだ。
「それはいい考えだね。誰かいないか探してみよう」
ビクトールはすぐに一人のアクセサリー職人と、一人の針子に依頼を出した。
数カ月後…
絵本をモチーフにした装飾品とドレスが出来上がり、たちまちクラレンス王国で人気の品となった。
絵本を書いたケナード領の作家も有名になっていった。
これがケナード領の発展に繋がる起因となるのだった。
「ありがとうスザンヌ。ケナード領の職人達が日の目を見る事が出来たよ」
「あなたとこの子のお陰ですわ」
「ありがとう、マーガレット」
「あら、女の子かどうかわからないのよ?」
「絶対に女の子だよ」
嬉しそうにスザンヌのお腹を撫でるビクトールと、そんなビクトールを優しく見守るスザンヌ。
二人のいるテーブルの上にはビクトールの買ったあの絵本が置いてあり、表紙にはマーガレットの花が描かれていた。
ーーーーー
「さぁ、もう帰りましょう?」
「そうだね。メグも待っているだろうしね」
二人はマーガレットの待つ宿に帰って行った。
スザンヌの右手には、宝石の付いていない細かい細工の施された指輪が、今でも嵌められている。
村を歩いたり、ピクニックに行ったり、スコッグ達を散歩に連れて行って一緒に遊んだりと、栄えた街では無いからこそ出来る楽しさを感じていた。
「偶にはお父様とお母様のお二人でお出かけしてはどうかしら?私はこの子達とお散歩に行って参りますわ」
朝食の後にマーガレットがビクトール達に言った。
「さぁどうぞ」
マーガレットにそう言われて宿を追い出されたビクトールとスザンヌは、護衛を一人連れて、二人で村の近くの川岸を歩くことにした。
二人の話の内容は殆どマーガレットのことだった。
「メグは幾つになってもお転婆だね。君に似てくれたんだろうね」
ビクトールがマーガレットを思いながらスザンヌに言うと、スザンヌは笑って返した。
「あら、優れた人を見つけて来るのはあなたに似ているわ」
「私はあそこ迄では無いだろう?君に似て好奇心旺盛なんだよ」
ビクトールは、スザンヌとマーガレットを心から愛していた。何にでも興味を持つ二人を、いつも微笑ましく思っていたのだ。
「私達の娘ですもの。どちらにも似ているのよ」
「あぁ、そうだね。私達の自慢の娘だよ」
穏やかに話す二人だったが、最初から仲の良い夫婦だった訳ではなかった。
ーーーーー
ビクトールとスザンヌは政略結婚で結ばれた夫婦だった。
ケナード伯爵家の嫡男ビクトールが、スミス侯爵家からの援助を理由に次女スザンヌと婚約したのだ。
ビクトールは美しいスザンヌに緊張して上手く喋ることができなかった。それに、相手は格上の侯爵令嬢だ。下手なことをして嫌われたくはなかった。
スザンヌは喋らないビクトールに不満を感じていた。それに、侯爵家に劣る伯爵家と人材育成を謳いながらも閑素なケナード領に満足できなかった。
二人はそのまま婚姻したが、スザンヌはケナード家での生活をつまらなく思っていた。
そんなスザンヌは出歩くこともせず、毎日屋敷で本を読んで過ごしていた。当時の二人の交流は、必要最低限のものだった。
婚姻してから一年経ったある日、ビクトールがスザンヌに贈り物をした。
「スザンヌ、今日は記念日だから職人に頼んで作って貰ったんだ。気に入ってくれるだろうか…?」
緊張したビクトールがスザンヌに贈った物。
輝く宝石は付いていないが、細かい細工の施された綺麗な指輪だった。
「まぁ、とても素敵ね」
スザンヌはそっと手を差し出し、ビクトールは指輪をスザンヌの右手に嵌めた。
「綺麗だろう?ケナード領の職人は腕が良いんだよ。いつかきっと王国中で人気になると思うんだ」
「他にはどんな物があるのかしら?」
スザンヌはこの時になって初めて、ケナード領に興味を持ったのだった。
それから二人はケナード領を一緒に歩くようになっていた。
スザンヌは初めてみる領内に目を輝かせて、様々な物に興味を持った。
「まぁ、あれは何かしら?」
「人が集まっているわ。あそこで何をしているのかしら?」
「これは何に使う物なのかしら?」
ビクトールはスザンヌの質問に一つ一つ答え、二人の距離は徐々に縮まっていった。
ある日、スザンヌが一冊の本を持ってビクトールの執務室を訪ねた。
「ビクトール様、この本に描かれている絵を装飾品やお洋服に使えないかしら?とても素敵だと思うの」
スザンヌが持っていたのは、子供に読み聞かせる絵本だった。スザンヌの妊娠が発覚し、喜んだビクトールが張り切って用意した物の一つだ。
「それはいい考えだね。誰かいないか探してみよう」
ビクトールはすぐに一人のアクセサリー職人と、一人の針子に依頼を出した。
数カ月後…
絵本をモチーフにした装飾品とドレスが出来上がり、たちまちクラレンス王国で人気の品となった。
絵本を書いたケナード領の作家も有名になっていった。
これがケナード領の発展に繋がる起因となるのだった。
「ありがとうスザンヌ。ケナード領の職人達が日の目を見る事が出来たよ」
「あなたとこの子のお陰ですわ」
「ありがとう、マーガレット」
「あら、女の子かどうかわからないのよ?」
「絶対に女の子だよ」
嬉しそうにスザンヌのお腹を撫でるビクトールと、そんなビクトールを優しく見守るスザンヌ。
二人のいるテーブルの上にはビクトールの買ったあの絵本が置いてあり、表紙にはマーガレットの花が描かれていた。
ーーーーー
「さぁ、もう帰りましょう?」
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