どうぞ、おかまいなく

こだま。

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「あれ?」

 ......しまった! 声を出してしまった。
 今さら口を両手で押さえても遅い。
 前方にいる人がこちらに気付き振り返る。
 驚いて目を見開いたその人は、私を確認して知らないフリを決め込んだのか、一緒にいる女性と公園内のカフェに入ってしまった。
 私はショックで暫くその場に立ち尽くす。

「ごめん、来週の休日には用事があるんだ。次回で良いかな」

 婚約者であるスティーヴンをデートに誘った。
学校の課題で植物の写真がいるついでだけれど、しばらく会っていなかったのもある。
 だけど、スティーヴンが用事で来られないので、自宅から少し離れた公園に一人で向かう。
 今、クレマチスが見頃でこの時期は人気がある有名な公園だ。
 色とりどりのクレマチスの小道を撮影しながら、雰囲気のよい白い東屋を見つける。
 あそこで少し休憩しようかしら、と考えながら近づくと、先客がいた。
 素敵なカップルが接吻をしていたのだ。この綺麗な公園の東屋にいる恋人達が風景に溶け込んでとても美しかったので、思わず撮影をしてしまった。
 そして、撮影してから気がついた。

......あの男の人、誰かに似ている。

 似た人なのではなく、私の婚約者スティーヴン本人だった。

 屋敷に帰り、撮った映像をじっと見つめる。
 この女性は誰なんだろう。私は見たことのない人だわ。スティーヴンとどういう知り合いなのかしら。
 スティーヴンとは1歳違いで学校も違う。
 この国では、男子と女子の学校に別れていて年に数回の学校交流会で他校の生徒と知り合うぐらいなのだ。
 私の知らないところでどんな交流があったのだろう。
 家同士が決めた婚約をスティーヴンはよく思っていなかったのだろうか。私は彼が好きなのに。
 そんなことを悶々と考えながら、この日は課題に手を付けられなかった。

 翌日、学校帰りに門でスティーヴンが待っていた。
 普段、他校に迎えにこない彼が珍しい。放課後の待ち合わせも違う場所でしていた。昨日の事を話に来たのだろうか。
 私は会いたくなくて、友人のステラに先に帰ったと伝えてもらい、スティーヴンが居なくなるのを見届けてから、ステラに付き合ってもらって課題の居残りで時間を潰して帰宅した。

 スティーヴンは家に来たようだが、私がいなかったのですぐに帰ったらしい。
 このままではいけないと思うけど、昨日の今日で、まだ会いたくない。心の準備なんかできていない。
 ちょっと、落ち着くまで放っておいて欲しい。私はその事を忘れたくて、家に帰ってからも課題に集中した。

 あれから何日か経った。
 あの日以来スティーヴンは急に私に会いに来ることはなく、気になりつつもどこかホッとしている。
 最近、何となく元気のない私を心配したステラが、

「アンジェラ、課題も予想より早く終わったことだし、ご褒美に美味しいケーキを食べよう!」

人気のお店に誘ってくれた。
2階がカフェになっているケーキショップには、可愛いケーキがたくさんあり、女子に人気だ。
 二人で何を食べようか、きゃいきゃい言いながら選んでいると、私の名前を呼ばれた気がして振り向く。
 目線の先には、スティーヴンがいた。
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