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五、齎される快感
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何も言わずに、諾の意を込めて頷いた。すると、尊はにこりと満ち足りたように笑って、慣れた手つきで帯を解いて彩恵が着ていた小紋を脱がせていった。他の女のこともこうして脱がせたのかもしれないとの考えが頭をよぎる。まったくもって不思議ではなかったけれど。
「教えてよ、彩恵」
膨れ上がった花芯を弾くように親指が触れる。びりりと電気が走るような刺激が、頭の先からつま先まで駆け抜けていく。
「あっあっ……だめっ……たけ、る…さんっ!」
教えてくれ、というくせに責め苦は一向に止まない。彩恵はただ喘ぐだけだ。
触れられる度に思う。
自分の体なのに、自分のものではないようだ、と。
背が弓なりに反っていく。目の前でちかちかと光が舞い踊る。ああ、もう、絶頂が、来る。
「ああ、でも今日は気を付けた方がいいかもね」
呟くようにそう言って、尊は指を離した。高まった劣情は宙ぶらりんになって、彩恵ははくはくと息を吸うことしかできない。
はじめて味わった時、自分が砕け散ってまた形を成すような心地がした。
――ああ、イったんだ。
震える体を持て余して、広い背に縋った。それを絶頂と呼ぶのだと、尊は教えてくれた。
うまくできたねと、子供にするように頭を撫でてくれる手の感触にさえも、びくんびくんと体が跳ねた。
恐ろしさと、それを上回って齎される快感と。
決定権は彩恵にはない。
決めるのはいつも、この男だ。
「そんなに声出したら聞こえちゃうよ、隣に」
いつもはこの離れには、彩恵と尊しかいない。けれど、今日は。
「翔と一緒に来たんだってね」
「え、ええ……。雨が、降っていたので」
覆いかぶさるようにして、尊は顔を覗き込んでくる。顔は微笑みの形を作っているのに、どうしてだろう、その目は笑っていない気がした。
節くれだった手が、汗ばんだ乳房をやわやわと撫でている。その頂きはもう硬く立ち上がっているのに、尊は触れてはくれない。じれったくて、膝小僧をすり合わせてしまう。彼が与えてくれるあの強い刺激がほしい。
あんなに一生懸命に選んだワンピースは、ただ畳の上で凝ったように捨て置かれている。
思えば今日は、この部屋に入ってきた時から雰囲気が少し違った。
尊は男を立てて襖を閉めたかと思うと、頭の先から爪先まで値踏みするように彩恵を見た。
発せられた言葉はただ一言、「脱いで」と。
今までそんなことを言われたことはなかったのに。可愛いとも、なんだとも、一言も感想を口にしてくれることはなかった。
「教えてよ、彩恵」
膨れ上がった花芯を弾くように親指が触れる。びりりと電気が走るような刺激が、頭の先からつま先まで駆け抜けていく。
「あっあっ……だめっ……たけ、る…さんっ!」
教えてくれ、というくせに責め苦は一向に止まない。彩恵はただ喘ぐだけだ。
触れられる度に思う。
自分の体なのに、自分のものではないようだ、と。
背が弓なりに反っていく。目の前でちかちかと光が舞い踊る。ああ、もう、絶頂が、来る。
「ああ、でも今日は気を付けた方がいいかもね」
呟くようにそう言って、尊は指を離した。高まった劣情は宙ぶらりんになって、彩恵ははくはくと息を吸うことしかできない。
はじめて味わった時、自分が砕け散ってまた形を成すような心地がした。
――ああ、イったんだ。
震える体を持て余して、広い背に縋った。それを絶頂と呼ぶのだと、尊は教えてくれた。
うまくできたねと、子供にするように頭を撫でてくれる手の感触にさえも、びくんびくんと体が跳ねた。
恐ろしさと、それを上回って齎される快感と。
決定権は彩恵にはない。
決めるのはいつも、この男だ。
「そんなに声出したら聞こえちゃうよ、隣に」
いつもはこの離れには、彩恵と尊しかいない。けれど、今日は。
「翔と一緒に来たんだってね」
「え、ええ……。雨が、降っていたので」
覆いかぶさるようにして、尊は顔を覗き込んでくる。顔は微笑みの形を作っているのに、どうしてだろう、その目は笑っていない気がした。
節くれだった手が、汗ばんだ乳房をやわやわと撫でている。その頂きはもう硬く立ち上がっているのに、尊は触れてはくれない。じれったくて、膝小僧をすり合わせてしまう。彼が与えてくれるあの強い刺激がほしい。
あんなに一生懸命に選んだワンピースは、ただ畳の上で凝ったように捨て置かれている。
思えば今日は、この部屋に入ってきた時から雰囲気が少し違った。
尊は男を立てて襖を閉めたかと思うと、頭の先から爪先まで値踏みするように彩恵を見た。
発せられた言葉はただ一言、「脱いで」と。
今までそんなことを言われたことはなかったのに。可愛いとも、なんだとも、一言も感想を口にしてくれることはなかった。
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