【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ

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第一部

20.解呪~二つ目の呪い~ー②

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 飲み込んだ精が、するすると体の中を下っていくのがわかる。それらは一つに固まって、一心に何かを探しているようだった。

「……ぁ…な…に……ん…っきゃああああ」

 体の中を見えない何かに引っ掻き回されている。そして、それは目的のものを見つけた。
 子宮を、握り込むようにして、内に沁み込んでいく。
 一度目の時と同じように、青い光がわたしの体を包んだ。
 青い光が強くなる。これが、ハーディの魔力なんだとわかった。

「叫んでも噛んでも引っ搔いてもいいから、耐えて」


 パリンッ。


 遠くで何か割れるような音がした。一つ目の呪いが解ける時と同じもの。

「はーでぃ……っあああ、いやああっ」

 今までの比ではなかった。
 突風が吹き抜けるような心地がして、体が反り上がった。何もしていないのに髪がふわりと宙に踊る。

「……はあっ…ああああっ」
 縋りつくように抱きついてハーディの背に爪を立てた。豪流のような快楽が打ち付けて、そうしていないと自分が保てなかった。強い力に抗うことができなくて、体の制御が効かない。 

「ここに、いるから」

 ハーディがわたしの手に指を絡めてくる。そうして、強く手を握る。

 握り合った左手を頼りにしてじっと体を小さくしていたら、次第に、青い光はわたしのお腹を起点に収束していった。
 全てが終わった合図のように、ぽんぽんと大きな手が頭を撫でた。

「……解けたの?」
 私は肩で大きく息をする。やっと満足に息を吸うことができた。

「うん、解けたよ」
 お腹を見ると、二重だった呪いが、確かに一重になっている。二つ目の呪いは、解けた。

 だからといって、大きく何か変わったところはない。強いて言えば少し顎が怠くて喉が痛いけれど、それは全く別の話だ。

 床の上に散らかったナイトウェアをハーディが拾って、ふわりとわたしに掛ける。

「ほら、座って」
 いつの間にかハーディはもうトラウザーズを履いていて、その膝に座るようにハーディが示した。黒いシャツの胸元はまだ肌蹴たままで、妙に色っぽい。さっきまで何も纏わずに抱き合っていたのに、それよりも。

 ナイトウェアのボタンを留めようとしたら、ハーディが首を振った。

「あんまりああいうことさせるつもりじゃなかったんだけどな」

 長い指が、わたしの代わりにゆっくりとボタンを留めていく。壊れ物に触れるように、優しく、丁寧な手つき。服を着せられていく途中だというのに、自分でこの服を脱いだ時よりも心臓の音が大きくなる。

「あれしか方法が思いつかなかった、ごめん」

 そのまま、わたしの喉に触れた。白い光が広がって、男根に突かれた痛みが嘘のようになくなっていく。ハーディの治癒魔法だ。

 千切れた四つ目のボタンも魔法できれいに直す。わたしは元通りにナイトウェアに包まれた。

「わたしは、」
 そこまで言ったところで、なんて言えばいいのか分からなくなった。

 わたしは確かに感じたのだ、あの時。
 ハーディの男根を飲み込んで、彼が大きくなって、わたしの口の中で果てる時、多分きっと喜びに近い何かを。
 だから、謝ってほしくなかった。けれど、こんなことどんな顔をして言えばいいの。

 全てを見透かしたようにハーディは笑って、びっくりするほど熱くなったわたしの頬に触れる。指にわたしの黒髪をひと房巻き付けて、くるりくるりと弄んでいく。
 髪から手が離れて、頭に伸びる。梳くように頭を撫でられる。乱れた黒い髪を、ハーディの手がゆっくりと整えていく。

 一通りのことが終わると、ハーディはいつもわたしの髪を撫でる。そこにはさっきまでの温度はなくて、ただひたすらに優しくて。

 あんな風にわたしに触れたくせに。あんな目でわたしを見たくせに。
 それが全部夢のように消えてしまうのが、わたしはとてもいやだった。

 ばさりと、ブランケットを掛けられる。今日はもう終わり。もう寝ろということかしら。

「また来るから。そんな顔しないで」
 こういう時、自分がどんな顔をしているのか知ることのできる方法があればいいのに。
 ローブを羽織って、ハーディは元のハーディになる。

「待ってっ」
 窓に向かって歩き始めた手を思わず掴んだら、ハーディがくるりと振り返った。

「なに? おやすみのキスでもすればよかった?」
 何も考えずに条件反射で頷いたら、ハーディは少しだけ苦笑して、わたしの前髪を手で上げた。

 額に、キスが落ちた。
「おやすみ、王女様」

 窓からハーディはふわりと飛ぶ。

 こんなことをして、わたしが穏やかに眠れると思っていたら、あの魔術師は本当にばかだわ。大ばかよ。
 闇色のローブはすぐに見えなくなって、わたしはまた夜がくればいいのにと思った。


 *
 

 次の日の朝、小鳥はその小さな翼に不釣り合いな大きな花を咥えてきて、ふらふらと飛びにくそうにしていた。

「ぴぃ……」

 噛んだことを気にしているのか随分と申し訳なさそうな声で小鳥が鳴くので、わたしは「もう大丈夫だよ」とふわふわの頭を撫でた。


 いつの間にか、花瓶がいっぱいになるぐらいの花が届いていた。
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