上 下
54 / 68
第二部

21.夢と本物

しおりを挟む
 この声で名前を呼ばれたら、逆らえない。
 わたしは、目をつぶってこくりと頷いた。ふふっとハーディが笑った気配がした。
「夢と本物と、どっちがいい?」

 そんなの本物のほうがいいに決まっているのに。恥ずかしさのあまり答えられずにシーツを脱ぎ握りしめたわたしにハーディはまたキスをする。ノックをするように、尖らせた舌先が突いてくる。頭の後ろに手が回されて、ぴたりと裸の胸同士が密着した。どくどくと暴れている心臓の音がハーディにも伝わってしまうかもしれない。

 強く舌を吸い上げられたかと思うと、やわやわと上唇を食まれる。強弱をつけて触れられると、焦れったくなってくる。わたしにハーディの舌は捕まえられないのに、気づいた時にはもう彼の舌に絡めとられている。真似をしてその舌を強く吸ってみる。

 こんなにキスがいいなんて、知らなかった。どんどん欲深くなってしまう。

 ぴちゅんと水音を立てて、ハーディの指が秘所へ入り込んでくる。もう十分に湿ったそこは、ハーディの長い指を苦もなく受け入れる。

「……ぁ…っ……」
 嬌声まで全部ハーディに奪われる。貪るような性急な口づけが続く。その間もなかを弄るのは止まない。

 くちゅくちゅとわたしのなかをかき混ぜるように、指が動く。気持ちよくて苦しくて、なかの指をきゅうっと締め付けてしまう。
いつの間にか二本に増えた指がばらばらに動いて、わたしを執拗に責め立ててくる。唇と秘所からの強すぎる刺激に、わたしの腰がびくびくと跳ねる。

 ああ、来る。そう思った。

「達っていいよ、ルイーゼ」
 囁かれただけで体が震えた。ぱちんと弾くように尖りに触れられたら、もうだめだった。

「ああああっ」
 喉を反らせてわたしは絶頂を迎えた。荒い息で寝台に身を任せるわたしの首筋に、ハーディはゆっくりと舌を這わせてくる。

 達したばかりの体には強すぎる刺激だ。それだけでまたお腹の奥が燻ってくる。
「ルイーゼはどこも甘くて困る」
 言いながら、唇に触れて、胸を食んで、脇腹もぺろりと舐めた。

「ん……ああっ……だめっ……ぁあ」

 彫刻のように整ったハーディの顔が上気していて、何かを堪えるように眉間に皺を寄せていた。額に汗が滲んで銀髪が乱れている。

「甘いものは……好んで、食べないんじゃなかったの……?」
「本当にね」
 ぎゅっと抱き寄せられて、腕の中に囲い込まれるようになる。腰に硬い怒張が当たっている。

「食べてしまいたい」
 ハーディはわたしの下腹部に手を当てた。白い光が集まってきて、何か魔法を使おうとしているのだと思った。

 今のわたしは正真正銘の処女だと、ハーディは言っていた。
 だったら上書きする今度は、なんの魔法もなし、彼と一つになりたい。

「だめ」
 ハーディの手を掴んでそう言うと、途端に光は手の中に収まっていった。

「どうして。多分痛いよ」
 おれもどこまで優しくできるかわからないと、わしゃわしゃと髪を掻き上げる。

「ちゃんとあなたを、覚えておきたいから」
 痛くても、苦しくても、なかったことにはしたくない。
 ハーディが息を呑んだ。そして、一瞬苦しくなるぐらい寸前まで抱擁が強くなったかと思うと、我に返ったかのように、また元の強さに戻った。

「ったく、おれはいくつのガキだよ……」
 三百歳の魔術師が余裕を失って、溺れていく様をわたしは見ている。それがたまらなく愛おしかった。
 大きな溜息のあと、足の付け根に男根が当てがわれるのが分かった。それだけで、奥がじくじくと疼いた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

眉毛の家出

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:766pt お気に入り:246

最強の赤ん坊決定戦

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,086pt お気に入り:4

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:3,899pt お気に入り:2,424

織田信長 -尾州払暁-

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:9

婚約者達は悪役ですか!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:300

処理中です...