パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

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例えどんな理不尽な世界だとしても

いたんですか?

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「暇! クエストに行きたい!」

 家の中だというのにマナツはお揃いの剣を胸に抱き、駄々をこねる。このままでは剣どころか、防具まで身に着けてしまいそうな勢いだ。

「しょうがないよ。今はディザスターに入れないんだから」

 マナツの正面で、剣こそ持っていないものの、同じように暇を持て余すユキオ。ユキオの横にハルト、マナツの横にモミジが座っている。
 本日は休み。というか本日も休み。休みの日は夕食以外は個々別々に取るのだが、最近は皆、示し合わせなくとも一緒に食べる始末だ。

 もう一週間も休み続きだ。原因は最近頻繁に起きる魔物の生息スペースが入り乱れている件。ディザスター内で、ギルドが定めた魔物の棲み処があてにならなくなっていた。
 もちろん、魔物だって生き物だ。偶然、D級までしか出現しないエリアにC級の魔物が出現する、ということは今までだってあり得た話だ。しかし、最近はそのようなイレギュラーが多発している。現にハルトたちも疑問を抱いていたところだった。
 そこでギルドは調査員を近隣ディザスターに送り込み、その調査が終わるまでは冒険者はディザスターの侵入を禁止とされた。
 
 ハルトたちは黄金スライムの残り金とデッドリーパーの討伐報酬がまだまだ残っており、金銭面に関しては問題無い。しかし、駆け出しの冒険者や、その日その日で食いつないでいた冒険者にとってはまさに地獄の休み期間だ。
 
「私たちって他にやることないのね」

 マナツはようやく剣を置く。あきらめたように結構雑に。

「確かに、冒険者ってクエスト以外に普段やることない……と思う」

「娯楽っていう娯楽がないからね。この街は」

 ハルトは机に突っ伏し、目をつぶりながら三人の話に耳を向けていた。ほぼ、垂れ流しではあったが。

 冒険者は本当に冒険以外やることがない。毎日、飽きずに魔物を倒し、金を稼ぐ。稼いだ金も装備や衣食住に溶ける。貯めても使い道がないのでそれで満足していたが、こうも休み続きだと、どうしても暇を持て余す。

「かくなるうえは……パーティーでは禁断のコイバナね!」

 好きですなぁ。女子は。
 そういえば、前のパーティーでも暇なときは女子はコイバナばかりしていた記憶がある。シャンディもアカメもそこまで女女していなかったのだが、やはりそこは姓のさがというやつだろうか。

「コイバナなんて、このパーティーには話題の欠片もない……と思う」

「そんなことない! はず!」

「じゃ、マナツはあるの?」

 モミジの問いにマナツは「ウッ……」と息を詰まらせる。
 無いな、これは……。

 しょうがない。冒険者は基本的にはパーティーのメンツとしか交流がない。本当にしょうがないのだ。
 まさかディザスター内で運命の出会いなど起きるなど、絶対あり得ない。死神とのロマンチックな出会いならあるのだが……。
 冒険者が付き合うとしたら、たいていはパーティー内恋愛だ。でも、これに関してはよくある話だが、後日談もよくある話。別れたが最後、パーティー全体はやたら雰囲気が悪くなる。別れなくても、実際はそれなりに気まずいらしい。

 話題が終わってしまった――と思いきや、マナツは「ふっふっふ……」とやけに気味悪く笑い出した。

「モミジはあるじゃない! あの晩!」

「あの晩……?」

 あの晩? あの晩……。えーと、あの晩……?

 脳裏に浮かぶ。夜をモミジと共に過ごしてしまった、いや過ごさせていただいた日。

 ハルトは、たぶん自分でも驚くほど体を震わせた。傍から見ると、一瞬痙攣したのではないかと思うくらいに――。

「やっぱり聞き耳立ててた!」

 マナツは立ち上がり、片手を腰に、もう片方の手をハルトに向けて指さした。

「聞き耳立てるも何も、さすがに聞こえるわ」

 めんどくせぇ。これに関してはあの晩の次の日にしっかりと説明したのだが。まぁ、簡単には払拭できない。
 体を起こす。モミジはうつむいている。任せます、とでも言っているようだった。

「別に! あんたたちが付き合っていようと! 文句は! ないけどッ! ないけど、話は聞かせなさい!」

「落ち着け、付き合ってない……」

 そう、何もない。あれだってたぶん仲間意識の強いモミジのその、なんだ、あれだよ、空回り? ってやつだよ。

「ハルト……あんた本当にモミジに手出してないよね? やることやってるとか無いよね?」

「ねぇよ。話の振り方おっさんかよ」

「で、でも、モミジはハルトが起きたときも抱き着いてたよね?」

 コイバナとやらが始まって以来、ようやくユキオが口を開く。こいつ、もしかして意外と興味あるとでも言うのか?

 それに起きた時? あぁ、デッドリーパーにザックリいかれ、三日ぶりに目を覚ましたあの日。確かに、抱き着いては来たけど、あれは、なんだ、その、責任感じて……ってやつ? だよ。たぶん。って、さっきと全く同じいいわけじゃん。

「あれは、その……本当に心配してたから……つい……」

 モミジはたどたどしく言う。眺めの前髪が表情を隠し、ハルトから顔は見えない。

「そ、それより……ユキオは? ないの? 浮いた話」

 ハルトは強引に話をユキオに逸らす。申し訳ない感満載だが、致し方ない。空気が、あまりに空気がキツすぎる。

 ユキオは少し驚いたようだったが、大きな図体を一度軽く揺さぶると口を開いた。

「えっ、僕? いるよ、恋人」

「へーそっか、そうだよな…………うぇ?」

 たぶん、相当間抜けな声が出ていたと思う。思わず静止。マナツもモミジも驚いたように表情を引きつらせている。
 静まり返る場。

「あれ、どうしたの? みんな……」

 マナツは口をパクパクと声にならない音を発した。

「いたのかよ……」

 ハルトは頭を抱えた。

 いいんだけど、負けた気分だ。いや、別にいいんだけどね。ユキオ、優しいし、温厚だし、顔だって好きな人は好きな顔だろうし。

「ま、負けない!」

 ようやく声になったマナツの言葉は謎の意志表示。モミジに関しては、顔を真っ赤に染め上げ、もはや何を思っているのか想像すらつかない。

「いたのかよ…………」

 ハルトはもう一度呟いた。
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