パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

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例えどんな理不尽な世界だとしても

経験ですか?

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「きたぁー! 久しぶりのクエスト!」

 マナツは腕を大きく広げ、広大すぎるディザスターを囲みたいのか、腕で何度も円をつくるように空気を抱きしめている。中々に猟奇的だなと思う。

 ディザスターの調査が終わり、冒険者が通常通りクエストを受けられるようになってから程なくして、俺たちはクエストに出ていた。とはいっても、当たり前のようにランクはDのままで、受けたクエストもDランク魔物八体討伐という、パーティーバフが無くても何とかなってしまうクエストだった。

 自惚れるつもりはないが、今回は色々とギルドに貸しを作った手前、ランクも一つばかし上がっているかな、と淡い期待をしたが、物の見事に裏切られた。

 しかし、今回のクエストは最低でも三日を要する。如何せん、こぞってクエストを奪い合うので、残ったクエストは街から遠いディザスターのものしかなかった。
 油断ではないが、気を楽に色々と楽しみたいと思う。というのも、今回の行き先は『エルフの大森林』。本当にエルフがいるわけではないのだが、まるでエルフが住んでいそうなくらい綺麗な森という意味合いから名付けられている。
 大きな湖が森の中にいくつもあり、生息する魔物もある程度の強さのものしかいないため、しばしば疲れ切った熟練冒険者などは鈍らない程度に休暇を謳歌しようと、このエルフの大森林に足を運ぶようだ。

 しかし、何かと色々な問題が起きている最中のディザスターだ。もちろん、最大限に警戒するに越したことはない。無論、三人もそれはわかっているようで、惚けているマナツでさえ、周囲への警戒を怠ることはない。

「馬車で揺られること十二時間、よくそんなに元気だな……」

 日の出る前に出発したというのに、既に辺りは淡く橙色である。暗躍の森のように木々が密集しているわけではないため、十分に空が見える。等間隔に生えた大きな樹木の葉は、見たこともない翡翠色で、ガラスのように透き通っていた。透き通る葉は太陽の光を乱反射させ、まるで星屑のように森一面できらめいている。思わず、「すごっ……」と言葉が漏れる。
 何より、ディザスター特有の息苦しさを全く感じない。魔物臭さというものが無く、空気が澄みわたっている。辺境の地にあるため、わざわざ足を運ぶ冒険者も少ない。

「あの、とりあえず今日の寝床を確保した方がいい……と思う」

「そうだね。僕、一度来たことあるからいい湖の辺り案内できるよ」

「そんじゃ、とりあえずユキオ先導で。ほら、マナツいくぞ」

 一応、というか当たり前に剣を引き抜く。どれだけ心地よい場所でも、魔物が出現する区域だ。冒険者は一瞬の油断で命を落とす。警戒に警戒を重ねることは悪いことではない。

 ユキオの案内で十分ほど森を進むと、大きな湖が見えて来た。

「うわーっ! すっっっごーい!」

 驚いたことに真っ先に声を挙げたのはマナツ……ではなくモミジだった。普段あまり感情を積極的に表に出すタイプではないモミジが、思わず声を張り上げた気持ちはよくわかる。
 透明すぎるほどに透き通った水の中を、縦横無尽に駆け回る色とりどりの魚。一言で表現するのならば幻想的だった。

「なるほど、これは来た甲斐があるな」

「僕も始めて来た時は思わず声が漏れちゃったよ」

 その場に腰を降ろしたい気持ちを堪え、ひとまず水際にテントを張る。女性陣はテントを張っている最中でも、チラチラと湖に目を向けていた。男性のハルトが見入るくらいだ。女性にはさぞ美しく映っていることだろう。

「よっし、それじゃあ目標の『トドラガロウ』は明日巣の場所を探すとして、今日は日も落ちる寸前だし、解散で」

 すっかりリーダーくさくなってしまった。ギルドマスターの前で不本意ながらもリーダー宣言をしてしまって以来、流れではあるがハルトがリーダーとして、諸々の指揮を取っていた。テトラのパーティーの時も司令塔のような役割をしていたので、別に違和感はないが、なんか、こう、ちょっと恥ずかしい。

 解散、とはいったが基本的にはディザスター内は四人一緒に行動する。絶対に一人にはならない。これはディザスター内での冒険者たちの暗黙の了解だ。

「それじゃ、男子はそこらへんふらついて来て」

「はい?」

「いいから」

「うん?」

「汗掻いたの。わかれにぶちん」

「あ、あぁ。へいへい……」

 なんか、たわいもない会話だけど、いいなこういうの。

 男嫌いのマナツもすっかり慣れてくれた。慣れたとはいえ、やはり男に抵抗があるようですぐ悪態付かれることもしばしばあるが、一応は仲間として認めてくれているっぽい。
 ユキオと一時拠点を離れる。

「ふらついて来てっていわれてもなぁ」

「あんまり離れるわけにもいかないよね。パーティーバフの範囲とかよくわかってないし」

「今度、ちゃんと範囲の調査もしないとなぁ。めんどくせ」

 ついで、ということで夜営用の薪を拾い集め、それでもたぶん時間的にはまだまだ暇なので、拠点からあまり離れない位置に腰を下ろす。

 しばし、無言。沈黙。たぶん同じこと考えてる。

「いや、何が楽しくて男二人でこんなメルヘンチックな場所で佇んでんの!」

「ハルトが女役すれば問題ない。ハルト、細いし」

「そういう問題じゃ無くない?」

「じゃあ、あとでモミジと来なよ」

「……ユキオって意外と突然ぶっこむよな」

「そう? 僕も一応、気にはなっているからね」

 抱えたままだった薪を雑に置き、斜面になった草の絨毯の上に横になる。

「あのな、そういうやつじゃないんだよ」

「そういうやつ?」

 同じように首の後ろに手を組んで寝そべるユキオが訪ねた。

「だから、その……恋人とか、そういうやつじゃ……ない。うん」

「やることはやってんのに?」

「やってねぇよッッッ!」

「え? ハルトってもしかして、童貞?」

 ユキオってこんなにズカズカ来るタイプだったのか……。知らなかった……。

「ゔっ……そ、そうだよ! 冒険者なら珍しくもあるまい!」

「そっかー。僕も経験ないから、どんな感じが聞こうと思ったのに」

「は? 恋人いるんだろ? 経験ないのかよ」

、ね。エミリィにも聞いたんだけど、あの人は逆に経験ありすぎて参考にならなかった」

 エミリィ……。あぁ、前に喫茶店で出会った、あのグラマーな人か。

「あの人は、確かにそういうオーラ出てるな」

 なんか、話生々しくない? いや、男同士ならまだピュアな会話か。

「もしかして、ハルトそういう欲ないとか? 男色?」

「バッ! んなわけ! 俺だって、その、やれるならやりてーわ!」

 思わず大きな声を出してしまった。
 
 一瞬、寒気がした。
 空気というのは大層、間が良く読まれるものだ。

 ユキオからの返事は帰ってこない。共通の何かを悟ったのだろう。

 身を起こし、恐る恐る振り返る。
 拳を震わせるマナツと、顔を真っ赤にして俯いているモミジ。
 
 うーん、いつも通りだわ。

「あ、あんたたち、なんちゅー会話してんのよ!」

 瞬間、脳天をマナツの拳が貫いた。

「ぎゃふッ!」

 なんとも間抜けなハルトの潰れるような声が漏れた。
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