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例えどんな理不尽な世界だとしても
ずるいですか?
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結局、交代でハルトとユキオが軽く水浴びをして、その間マナツとモミジは火起こしと夕食の支度をした。といっても、火起こしは魔法を使えば一瞬だし、夕食も硬いパンと干し肉、作り置きの野菜スープを温めるのみ。
ものの三分ほどで終わってしまい、ゆっくりしていたわけでもない水浴びをさらに急かされる形となった。これは、あれだ。理不尽だ。でも、さっきの不祥事の手前、何も言えない。なんとも世知辛い。
火を囲む時には、空には満点の星空が広がっていた。乱反射してきらめいていた葉も眠りについたようにおとなしい。代わりに月明かりが湖を照らし、魚たちもカラフルな鱗を煌めかせて、また違った雰囲気を醸し出している。
さして起きていてもやることはない。軽い談笑の後、明日の予定の確認、夜警の順番決めをした後、明日に備えて床に就くことにした。
男女テントをわける……なんてことはしない。荷物が増える。パーティーによってはわけるのが一般的ではあるが、ハルトたちは特にテントを二つ用意することはなかった。もちろん、少しばかり間決めはあるが、基本的には一つのテントで三人寝て、一人が見張りを担当する。
最初の見張りは眠くないと言うマナツに任せ、ハルト、モミジ、ユキオの三人は先に浅い眠りにつく。
長い馬車での疲れもあり、ハルトはすぐに眠りについた。
「おーい、おーい……」
肩を揺さぶられ、ぼんやりと意識を覚醒させる。目を開けると、かなり顔が近い状態でマナツがいた。一瞬、心臓が跳ねるが、これにも慣れた。なんせ、テントの中は狭い。少しばかり距離感が近くなるのは必至だ。
「交代して。眠い……」
「あぁ、うぃうぃ」
未だ夢心地な頭を軽く振って起き上がる。入れ替わるようにマナツがハルトの後を継いで横になる。
見張りに関しては、街とは違い、正確な時刻がわからないので、前の人が辛くない程度に交代するというアバウトな感じでやっている。
夢に落ちてからどれくらい経ったのかわからないが、体感的には三時間とかそこらだろう。
テントからずりずりと芋虫のように這い出て、湖で顔を軽く洗う。夕刻に水浴びをした際は、そこまで水温は低くなかったが、夜中だと肌に突き刺さるくらいには冷たい。というか、冷たすぎるだろ。
実際、夜警は特にやることがない。喋る相手はいないし、辺りは真っ暗だ。音を立てて皆を起こすわけにもいかない。つまり、本当にやることがない。
でも、別に苦痛ではない。たぶん、夜は好きな方だ。昼よりかは夜の方が好み。全体的に色々と騒がしくないからだ。多くの情報が目から入って来ることもないし、様々な音を耳が拾うこともない。まるで、時が止まったような、もしくはかなりゆっくりと進んでいるような、そんな感じがとても好きだ。
ぼんやりと火を眺めたり、剣を拭いたりなどして暇をつぶす。もちろん、周囲の警戒は怠っていない。見張りが思わず寝落ちしてしまい、魔物に襲われてパーティー全員が死ぬなんて話は、結構日常茶飯事だったりする。
あとは有名な見張りに関する話だと、魔剣士や呪術師といった不遇職の人ばかりが見張りを強要され、腹いせで魔物をわざとおびき寄せて、寝込みを魔物に襲わせるといったものを聞いたことがある。
「不遇職……か」
勇者の印という称号を得ながら、認められることのない職業。主に魔剣士や呪術師、バランスダンサーなどが代表的だ。どれもかっこよさそうな名前をしているが、実際は魔物との戦闘において中途半端にしか活躍のできない職業だ。魔剣士とバランスダンサーは前衛も後衛も特化職に劣る不遇職。呪術師は呪い系の魔法に特化している職業ではあるものの、そもそも呪い系の魔法自体が魔物には効きづらいため、不遇職扱いされている。
「魔剣士は不遇職……」
日の目を浴びることのない職業。しかし、現状はどうだろうか。Aランクの魔物を倒せるまでの実力、ではないが手段は手にすることができている。
以前は街を歩くだけで、ちょくちょく揶揄われていたが、それもデッドリーパーとハーピィーの件で噂程度にでもハルトたちのことが広まったようで、むしろ好意的に声をかけられることが増えた。
「でも、やっぱりずるいよなぁ……。突然、なんの努力も無しに強くなって。勝手に追い抜いて」
ライズさんたちやテトラたちはこの力を認めてくれているが、もちろん素直に認めてくれない人たちもたくさんいるだろう。
本当にこの力に依存して良いのだろうか。もしかしたら、ふとした瞬間にこの力は消え去るかもしれない。それが戦闘中だったら? 考えただけでも恐ろしい。
素の力ではデッドリーパーどころか、ハーピィーすら太刀打ちできないだろう。力に依存すればするほど、自分の身を締め付けているような気分になる。
力に溺れてはいけない。でも、現状頼るしかない。ライズさん達のように強いわけではない。本当はすごく、ものすごく弱いパーティーなのだから。
夜はこんな感じにネガティブなことにも深く追求して考えるだけの時間が、平等に与えられる。もちろん、時間というのは昼だろうが、夜だろうが一定なわけだが、夜はどうしても色々と考え込んでしまう。
心まで暗くなっている証拠だろうか。
ふと、テントから薄桃色の髪の少女がひょっこり顔を出す。寝れない、というわけではなさそうだ。目元を雑にゴシゴシと擦っている。
「どうした? まだ俺、一時間くらいしか見張りしてないから、もう少し寝てていいよ」
彼女は特に返事をすることなく、別に乱れてもいない髪を手で撫で、テントから出て来る。
「んー、たぶんしばらくは眠くならない……と思う」
火にかけておいた白湯をコップに入れ、彼女に渡す。
「そっか。とは言っても、俺も眠くないんだけどね」
しばらく心地よい沈黙が続いた。ハルトはモミジに目を向ける。華奢な体で童顔。基本、うつむきがち。長めの前髪で目元を隠している。両手でコップを持って、特に口をつけるわけでもないのにフーフーと息を吹きかけている。
少しだけ、鼓動が早まった。
力か……。
「んー守れるならいっか……」
「えっ? なんか言った?」
「いや、なんでもない」
燃え盛る火の火力をあげるように、薪を数本投げ込んだ。
ものの三分ほどで終わってしまい、ゆっくりしていたわけでもない水浴びをさらに急かされる形となった。これは、あれだ。理不尽だ。でも、さっきの不祥事の手前、何も言えない。なんとも世知辛い。
火を囲む時には、空には満点の星空が広がっていた。乱反射してきらめいていた葉も眠りについたようにおとなしい。代わりに月明かりが湖を照らし、魚たちもカラフルな鱗を煌めかせて、また違った雰囲気を醸し出している。
さして起きていてもやることはない。軽い談笑の後、明日の予定の確認、夜警の順番決めをした後、明日に備えて床に就くことにした。
男女テントをわける……なんてことはしない。荷物が増える。パーティーによってはわけるのが一般的ではあるが、ハルトたちは特にテントを二つ用意することはなかった。もちろん、少しばかり間決めはあるが、基本的には一つのテントで三人寝て、一人が見張りを担当する。
最初の見張りは眠くないと言うマナツに任せ、ハルト、モミジ、ユキオの三人は先に浅い眠りにつく。
長い馬車での疲れもあり、ハルトはすぐに眠りについた。
「おーい、おーい……」
肩を揺さぶられ、ぼんやりと意識を覚醒させる。目を開けると、かなり顔が近い状態でマナツがいた。一瞬、心臓が跳ねるが、これにも慣れた。なんせ、テントの中は狭い。少しばかり距離感が近くなるのは必至だ。
「交代して。眠い……」
「あぁ、うぃうぃ」
未だ夢心地な頭を軽く振って起き上がる。入れ替わるようにマナツがハルトの後を継いで横になる。
見張りに関しては、街とは違い、正確な時刻がわからないので、前の人が辛くない程度に交代するというアバウトな感じでやっている。
夢に落ちてからどれくらい経ったのかわからないが、体感的には三時間とかそこらだろう。
テントからずりずりと芋虫のように這い出て、湖で顔を軽く洗う。夕刻に水浴びをした際は、そこまで水温は低くなかったが、夜中だと肌に突き刺さるくらいには冷たい。というか、冷たすぎるだろ。
実際、夜警は特にやることがない。喋る相手はいないし、辺りは真っ暗だ。音を立てて皆を起こすわけにもいかない。つまり、本当にやることがない。
でも、別に苦痛ではない。たぶん、夜は好きな方だ。昼よりかは夜の方が好み。全体的に色々と騒がしくないからだ。多くの情報が目から入って来ることもないし、様々な音を耳が拾うこともない。まるで、時が止まったような、もしくはかなりゆっくりと進んでいるような、そんな感じがとても好きだ。
ぼんやりと火を眺めたり、剣を拭いたりなどして暇をつぶす。もちろん、周囲の警戒は怠っていない。見張りが思わず寝落ちしてしまい、魔物に襲われてパーティー全員が死ぬなんて話は、結構日常茶飯事だったりする。
あとは有名な見張りに関する話だと、魔剣士や呪術師といった不遇職の人ばかりが見張りを強要され、腹いせで魔物をわざとおびき寄せて、寝込みを魔物に襲わせるといったものを聞いたことがある。
「不遇職……か」
勇者の印という称号を得ながら、認められることのない職業。主に魔剣士や呪術師、バランスダンサーなどが代表的だ。どれもかっこよさそうな名前をしているが、実際は魔物との戦闘において中途半端にしか活躍のできない職業だ。魔剣士とバランスダンサーは前衛も後衛も特化職に劣る不遇職。呪術師は呪い系の魔法に特化している職業ではあるものの、そもそも呪い系の魔法自体が魔物には効きづらいため、不遇職扱いされている。
「魔剣士は不遇職……」
日の目を浴びることのない職業。しかし、現状はどうだろうか。Aランクの魔物を倒せるまでの実力、ではないが手段は手にすることができている。
以前は街を歩くだけで、ちょくちょく揶揄われていたが、それもデッドリーパーとハーピィーの件で噂程度にでもハルトたちのことが広まったようで、むしろ好意的に声をかけられることが増えた。
「でも、やっぱりずるいよなぁ……。突然、なんの努力も無しに強くなって。勝手に追い抜いて」
ライズさんたちやテトラたちはこの力を認めてくれているが、もちろん素直に認めてくれない人たちもたくさんいるだろう。
本当にこの力に依存して良いのだろうか。もしかしたら、ふとした瞬間にこの力は消え去るかもしれない。それが戦闘中だったら? 考えただけでも恐ろしい。
素の力ではデッドリーパーどころか、ハーピィーすら太刀打ちできないだろう。力に依存すればするほど、自分の身を締め付けているような気分になる。
力に溺れてはいけない。でも、現状頼るしかない。ライズさん達のように強いわけではない。本当はすごく、ものすごく弱いパーティーなのだから。
夜はこんな感じにネガティブなことにも深く追求して考えるだけの時間が、平等に与えられる。もちろん、時間というのは昼だろうが、夜だろうが一定なわけだが、夜はどうしても色々と考え込んでしまう。
心まで暗くなっている証拠だろうか。
ふと、テントから薄桃色の髪の少女がひょっこり顔を出す。寝れない、というわけではなさそうだ。目元を雑にゴシゴシと擦っている。
「どうした? まだ俺、一時間くらいしか見張りしてないから、もう少し寝てていいよ」
彼女は特に返事をすることなく、別に乱れてもいない髪を手で撫で、テントから出て来る。
「んー、たぶんしばらくは眠くならない……と思う」
火にかけておいた白湯をコップに入れ、彼女に渡す。
「そっか。とは言っても、俺も眠くないんだけどね」
しばらく心地よい沈黙が続いた。ハルトはモミジに目を向ける。華奢な体で童顔。基本、うつむきがち。長めの前髪で目元を隠している。両手でコップを持って、特に口をつけるわけでもないのにフーフーと息を吹きかけている。
少しだけ、鼓動が早まった。
力か……。
「んー守れるならいっか……」
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「いや、なんでもない」
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