パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

文字の大きさ
34 / 79
例えどんな理不尽な世界だとしても

災害ですか?

しおりを挟む
 結論から語ろうと思う。魔物は一日に多くて三回、必ず対になって現れる。基本的にはCランクとBランクに想定する魔物だ。
 多すぎる。確かにこの量に関しては、不可解だ。

 街に滞在して四日目。さすがにライズたちにも疲労の色が見え始めていた。魔物と相対することに関しては、なんら問題はない。しかし、街を壊さないように、なおかつ周囲の人々に被害を出さないように戦う、ということが予想以上に苦となっているのだ。

 魔物の多くは事前情報の通り、中央広場に多く出現した。しかし、時折街の外や中央広場以外に出現し、防ぎようのない犠牲が出てしまうこともあった。それに関しては仕方がないと割り切ることにしていたが、やはりもう少し何か対処のしようがあるのではないだろうか。

 街の冒険者には代わる代わる中央広場以外の場所の見張りについてもらっている。しかし、彼らは予想以上に使えなかった。

 ヤヒロの言葉を引用すると「んだよ! Bランクの冒険者がBランクの魔物を倒せないってバカなのかよ! Eランクからやり直してこいや!」てな具合だ。
 たぶん、地道にクエストをこなしてランクをあげたのだろう。しかし、昇格試験などは存在しないランク制度。ランク相応の魔物が倒せないパーティーはよくいる現状だ。この街にはその不相応なランクのパーティーが多い。

 おそらくではあるが、この辺りにはBランクやCランクの魔物が生息するディザスターが少ないのだろう。それゆえ、彼ら、もしくは彼女らは高ランクの魔物と戦い慣れていないのだ。致命的である。

 そんなことを考えながら、目の前のエコーイノセントの大きな鎌を叩き斬る。追随して、天から無数の矢の雨がエコーイノセントに降り注ぐ。
 巨大なカマキリは地面に鎌を突き立てて、なんとか体勢を維持していた。

 しかし、体力の回復を待ってやるだけの慈悲などない。ライズの剣が光り輝き、光速の三連突きを下がった顔面に叩き込む。
 コマチがライズの傍をすり抜け、鎌を足場として跳躍。二メートルはあるエコーイノセントを軽々と跳び越し、近距離からの剛射をお見舞いする。放たれた三本の矢は、エコーイノセントの強固な外角を突き破り、激しい爆音と共に石畳の地面を割る。

「ふぅー、いっちょあがりだねぇ」

 ライズは後方で、もう一体のエコーイノセントと競り合うヤヒロとイアンに目を向ける。そちらもちょうどフィニッシュだったようだ。地面から飛び出した巨大すぎる氷柱に貫かれたエコーイノセントの姿があった。

「かーっ! まだ昼間だってのに今日だけで二回目。やってらんねーなおい」

 ヤヒロは悪臭漂うその場に座り込み、大の字で寝そべった。よくもまあ、こんな場所で寝転がれる。

「た、確かにこの街は異常ですね、はい。幾ら何でも魔物が出過ぎです……すみません」

 これだけ魔物が出現すると、ディザスター以外では魔物が出現することはない、という大前提を忘れそうになる。

「じゃ、俺らは戻るから、引き続きよろしく頼む」

 ライズはコマチに手で指示をして、宿屋に足を運ぶ。帰り道、ライズはぼーっとする頭で考えた。この異常事態がいつまで続くのだろう、と。クエスト契約期間は二週間。しかし、残り一週間と三日でこの事態が治る、もしくはイルコスタが対策を打ち立てることはないだろう。そうなったとき、まさか見捨ててソーサルに帰還するわけにもいかない。

 しかし、もしかしたら連絡が入っていないだけで、ソーサルがこの二週間でもっと酷い有様になることだって考えられる。

「……むずかしいな」

 思わず口に出していた。コマチはまだまだ余裕がありそうな素ぶりで、ライズを一目したが、特に声をかけてくることはなかった。

 人間界の至る所で魔物が出現している。これが指す意味は、いまいちピンと来ない。なんにせよ、全体的に対策を練らないと本当に取り返しのつかないことになりそうな、そんな嫌な予感がする。
 しかし、それをするのは冒険者の役目ではない。

 宿に着いた。当初取ってあった部屋は四部屋だったが、よくよく考えれば、交代しながら見張りをするのであれば、二部屋で十分だと気がつき、もう二部屋は払い戻しした。

「じゃ、私は二時間ほど寝るから、ライズも無理しない程度に休憩しなさいねぇ」

 頷いて、自室兼ヤヒロの部屋に入る。ひとまず剣の刃こぼれがないかをチェック、後に白布で綺麗に磨く。甲冑も軽く拭いて、風呂に入る。
 街にこびりつく悪臭はある程度、マシになったものの、やはり全体的に濁った空気が流れている。そんなまとわりつくような空気を流すように長めに風呂に入り、髪が乾くまでの間、椅子に座って目を閉じる。

 色々と考えたいこともあるが、まずは睡眠を取らねば戦闘に支障が出る。Bランク、Cランクとはいえ、攻撃をまともに食らえば、どんなに高ランクな冒険者であろうと人間だ。致命的なダメージは避け得ない。凡ミスを無くすには、コンディションを整えておかねばいけない。

 様々な考えが巡る脳をシャットダウンするように意識を闇に浮かせた。眠りには簡単につくことが出来た。やはり、予想以上に精神的疲労が溜まっていたのだろう。

 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッ――――――――ンン!!

 脳が一瞬で覚醒した。激しい地鳴り。まるで隕石でも落ちたのではないかと感じるほどの揺れだ。姿勢を維持していられなくなり、椅子から飛び降りる。
 脳がガンガンと警告を発する。

 揺れは二分ほど続き、やがて収まった。

「な、なんだったんだ……?」

 息が切れていることに気がつく、大きく深呼吸をする。状況が把握できない。

「だ、大丈夫かい!?」

 コマチが勢いよく扉を開き入ってくる。コマチも相当焦ったようで、息が乱れていた。

「と、とりあえず外だ。外に行くぞ」

 甲冑を急いで着用し、剣と大きな盾を握りしめて外に出る。
 驚愕した。

「な、なんだい。これは……」

 まるで雨のように降り注ぐ魔物。魔物。魔物。どこを見ても魔物だらけだ。建物を破壊し、逃げ惑う人々を嗜虐の限りを尽くして追い回している。
 
 その様子はまるで地獄絵図。

 これから起こりうる惨劇に目を背けるようにライズは駆け出した。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

処理中です...