パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸

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例えどんな理不尽な世界だとしても

生きたいですか?

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 ハルトは心の中でぼやき続ける。あーやだやだ。もう帰りたいとか、早く帰ってくれません魔物さん? とか。
 たぶん、ほとんど逃げ回っていたような気もする。なんせ、相手が強すぎるのだ。そうは言ってもCランクの魔物なので、Bランクの冒険者ならば優に倒すであろう。

 でも、しょうがないじゃないですか。魔剣士ですよ? 前張りも中途半端で、魔法も長い時間詠唱しようが、魔導師の三分の一も威力が出ない。下手に戦って三人のうち誰かが負傷しようものならば、たぶん口だけの「帰りたい」が本当に実現してしまいそうだ。
 そんなわけで、ハルトたちは押し寄せる魔物の群の中から、Dランクの魔物を探し出して、隅っこの方で先輩方に迷惑にならないように微力ながら健闘している。……はずだ。

 ハルトたちの他にも、同じようなことをしているパーティーはあった。例えば、マナツの元パーティー。先ほどは助けてもらった身ではあるが、やはりDランクのパーティーということで、Cランクの魔物には歯が立たないようだ。数少ないDランクの魔物を取り囲んでいた。

 彼は恒例のようにちゃらんぽらんすぎるテンションで声をかけて来たが、マナツはガン無視を貫いた。どんまいスミノ。

 体長二メートルはあるかという巨大な蜥蜴とかげのような魔物に終止符を打ち、上がった息を整える。周りを見渡すと、至る所で魔物と戦い合っている冒険者が、おそらく百名以上いた。
 今もなお、増援は増え続けているが、やはり大半はDランク以下の冒険者たちだ。彼らはパーティーの垣根を超えて、二パーティー、時には三パーティーでCランク以上の魔物と奮闘していた。

 では、ハルトたちもそうすればいいのでは? それがおいそれといかないのが、魔剣士という職業だ。今回の件で、改めて認識した。魔剣士は嫌われている。街で助けに入れば、微妙そうな顔をし、街の外で共闘を申し込めば、緊急時でも断られる。

 魔剣士は強くない。

 今の大蜥蜴戦でも、痛切に感じた。前線は脆く、後線は火力がなさすぎて役目を果たせない。他の職業であれば、どんなに楽に倒せたことだろうか。

 それでも、弱くはない。少なくとも魔剣士本人がいうのだから、そうなのだろう。強くないだけで、弱くはないんです。だから一緒に戦ってください。などと首を垂れたところで、断られるのは目に見えてる。
 なんて孤独すぎる職業なのだろうか。

 本当は断った連中の目の前で、魔物をバッタバッタなぎ倒して唖然とさせたいところではある。しかし、依然真の力は目覚めそうにない。

 前方から、エコーイノセントが迫って来た。巨大な鎌を持ったカマキリだ。カマキリといっても、その体長は先ほどの大蜥蜴よりも、さらに大きい。巨大すぎて、鎌でひと撫でされただけで体が真っ二つになることは容易に想像できた。

 ハルトは急いで二人に退却の指示を出す。情けないとため息をつきたくなるが、リーダーとして仲間を危地に晒すことはできない。戦場は例外なく危地ではあるが、それでも気を抜かなければ、そう危なくないところも存在するわけで、ハルトたちはそういったところにつけ込むしかない。

「どけ、うすのろ!」

 尻尾巻いて逃げおおせていると、屈強な冒険者がハルトを押しのけてエコーイノセントに体ごと飛び込んだ。手に持った大きな斧で、カマキリの胸元を一閃。浅く見えた。もちろん、彼はそれで終わりでなく、落下しながら猛然と斧を振り回して、浅い斬撃を重ねた。

 追随して彼の仲間と思しき冒険者三人が、ハルトとすれ違う。
 
 そうだ。これでいい。見栄を張っても、死んでしまえばそれまでだ。それなら、とことん逃げて、何としても生き延びてやる。今更逃げ回っている魔剣士を見て、評価がさらに下がることはない。あぁー、見返してやりてー。

 マナツとモミジはハルトのいうことをすんなりと聞き入れる。マナツは逃げることに反対するかと思ったが、どうやら彼女もまたのようだ。何がとは言わないが、自覚があるのだろう。

 本当にどこにいるんだよ、ユキオ……。

 気がつくと、門のすぐそばまで撤退していた。前線で冒険者たちが奮闘しているため、門の近くにはほとんど魔物の姿がなかった。もちろん、いることはいるが、その魔物も既に他の冒険者たちが渡り合っている。

「これでいい……」

 あえて、口に出した。そうすることで、罪悪感を紛らわせることができる。

「ちょっと! ハルト……!」

 マナツに呼びかけられ、彼女を見る。何やらハルトではない方向を指差しているようだ。指の先をたどるように見ると、ちょうど視界にそれが収まった瞬間、首ごと食べられた。食いちぎったという表現が正しいかもしれない。
 ライオンと獅子を混ぜたような頭部に、毒々しい紫色をした蛇の尾。うわ背は二メートルほどで、まるで筋肉の塊のような引き締まった四肢は血で真っ赤に染まっている。

「バジリスク……」

 相手が思い出深いバジリスクであることなど実はどうでもよくて、マナツが伝えたい真理はハルトにも直感で伝わった。

 バジリスクと対面していた冒険者のパーティーは、一人がやられたことで、まるで緊張の糸が切れたように猛然と声にならない悲鳴をあげて逃げ惑った。そうなると、バジリスクの次の標的は一番近くにいたハルトたちだ。
 巨大な身体をのらりくらり悠然と草原を撫でるように進む。まるで肉食獣が草食獣相手に悦に浸りながらじわじわ追い詰めているようだ。実際、間違っていない気もする。

 この後ろは南門で、そのさらに後ろは街中だ。戦えない民が多くいる。いわば、ハルトたちが最終防衛線。知らず知らずのうちに、重大なポジションに身を置いてしまったのかもしれない。

 なんにせよ、数少ない手段の中から逃げるという大事な一手が失われた。流石にここで、はい無理です、どうぞ街に入ってくださいなんてことは言えない。言えるわけがない。

 まだ距離はある。とはいえ、いつ飛びかかってくるのかわからない。それでもあえて、一度大きく深呼吸をした。体の震えが幾分マシになった。少なくとも、動けずにやられるということはないだろう。

「前線は俺とマナツ。モミジは後方から魔法詠唱。できればジャミング系。とにかく、時間を稼ごう」

「お、おーけー……!」

「わかりました!」

 二人の返事を聞くなり、ハルトは意を決して、地を蹴り上げた。剣を下段後方に構え、勢いをつけて横薙ぎ払い。バジリスクは獰猛な前足で剣を受け止め、同時によだれの滴る巨大なライオンの口をガバッと開き、ハルトを食い殺そうと迫った。
 剣はがっちりホールドされ、迫り来るギロチンを回避する術はハルトにはない。ハルトの頭上が一瞬、光ったように見えた。いや、正確には目にも止まらない速さで振り抜かれた剣の残像だ。

 マナツのスキルだろう。切りつけられたバジリスクの口元が、ぱっくりと裂けて鮮血が溢れ出た。髪の先が血の滝に打たれる。

 瞬間、剣をホールドする力が弱まった。その隙を逃さず、剣を強引に引き抜き、そのままハルトも顔面を斬り裂いた。浅くだろうと、同じ場所を斬り裂けば、無傷の場所を攻撃するよりは効果的なはずだ。

 バジリスクは身をそらしはしたものの、すぐさま前足を振り抜いた。両手で剣を構え、がっちりとガード……したつもりであったが、あまりの衝撃に数歩、横によろける。まるでハンマーで勢いよく殴ってきたような、凄まじい衝撃だった。
 既に二度、死にかけた。たぶん、これが幾度も続く。というか、終わらせられるのだろうか。終わらされるかもしれない。むしろ、そっちの方が高確率だ。

「やぁあーッ!」

 マナツががら空きの横っ腹に突きを見舞った。入る、と思ったのは杞憂で、マナツの剣は毒々しい蛇によってあしらわれる。
 まるで二頭の魔物を相手にしているようだ。大ぶりで力に任せてなぎ倒す前方の魔物と、鋭敏な動きと毒による異常状態で撹乱する後方の魔物。明らかに厄介だ。

 バジリスクはCランク魔物ではあるが、別名は“Cランク殺し”と呼ばれているらしい。Cランクになりたての冒険者では、絶対的に勝てないことから、そう呼ばれているようだ。実際、Bランクのハーピィーの方が楽なのでは? と思うこともなくはない。

 モミジが黒いもやのような魔法を発動した。靄はバジリスクにまとわりつき、形状を鋭い槍のように幾重に変化させ、強靭な皮膚を貫いた。どうやら炎や氷よりかは、靄の方が地味ではあるが効くらしい。
 モミジはバジリスクを素の力でやりあったことがあるのだろうか。でなければ、モミジが靄の魔法を使うなど、珍しいことだ。

 ならばいっそのこと指揮権をモミジに丸投げしてしまいたいが、もちろんそんなことできるわけもなく、ハルトは声を張り上げた。

「――チェンジ!」

 マナツとモミジが瞬時に駆け出し、すれ違いざまにポジションを入れ替える。

 そうだ、これでいい。耐えることはできる……はずだ。いつも通りの作戦で、それでいて、いつも通りに力任せに押し切らない。今は力がない。押せないなら、受け止める。それだけだ。

 いつの間にか、悲観することをやめていた。
 
 戦わなければ、生きられない。
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