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例えどんな理不尽な世界だとしても
ディザスター化ですか?
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存外、助けはすぐに来た。なんせ、ハルトたちは門の目の前である。
増援に来た冒険者たちは、到着した途端、驚愕したことだろう。魔剣士だけのパーティーが、バジリスクと相対しているなど誰が予想できようか。その様子を見て、驚かないのはハルトたちの例の力を知っている奴らだけだ。まぁ、その人たちからしたら、別の意味で驚きそうではあるが。
兎にも角にも、ぞろぞろやってくる増援の冒険者たちでバジリスクを囲み、数に物を言わせてフルボッコにしてやった。案外、爽快だったりする。
しかし、何故かハルトたちは最終ラインから動けずにいた。バジリスクを叩きのめした冒険者たちは、こぞって前へ。後退してくるパーティーは既に手負いだ。無責任にこの場を離れるわけには行かなかった。
急に街から増援にくる冒険者がいなくなった。それもそのはず、南門だけで総勢百五十名ほどの冒険者が集まっている。おそらく、西門と北門には南門ほどはいかないものの、やはりかなりの冒険者が集まっているであろう。東門に関しては、貴族のテリトリーで門の開閉が基本的には為されないため、おそらくほとんど冒険者はいないと思う。
「圧巻ね……」
呑気に聞こえるマナツの発言だが、本心であろう。確かに冒険者がこんなにも勢揃いして、魔物と戦う光景など見たことがない。少なくとも、ディザスター内で行う命知らずはいない。
「もしかしたら……」とモミジが皮切りに喋り出した。
「人間の領域が、ディザスター化している……って考えはないかな?」
数秒、理解が足らずにモミジを見つめる形になってしまった。
「ディザスター……」
マナツは反芻してその名を口にしている。
ディザスター。人間の領土における、魔物の棲まう領域の総称だ。この街より、はるか南には大きな谷が存在し、その谷を越えると魔物の領土となっている。噂では世界はちょうど半分が人間、半分が魔物の領域となって均衡が保たれているらしい。
現に、ディザスターという例外はあれど、谷の向こうから魔物が押し寄せて来た事例は少なくとも記録されている歴史上には存在しない。
「ディザスターになりつつあるのなら、今のこの魔物の大量出現も合点が行く……と思う」
それは、と口に出しかけ、飲み込んだ。否定しようとしたのだろうか。それすらもわからないくらい、そのあとの言葉は続かなかった。
「でも、そうなると冒険者の数が四人にならない限り、永遠にこれが続くんじゃ……」
モミジは凄惨な戦場を見渡して、そっと首をふった。わからない。そう言いたいのだろう。
「ありえる話ね。だから、どうしたって感じもするけども」
「とりあえず、今日寝れるかな……?」
モミジは空を見上げた。つられてハルトも空を仰ぐ。第一震の時はまだ日が高くにあった。今は既に太陽の光は届かない。無数の星々が地に光を与えるように煌々と輝いていた。気のせいだろうか、星屑の中でひときわ異彩を放つ魁星が、今日はいつになく怪しげに輝いている気がした。
視界を戻す。各所で飛び交う火花や魔法が、夜の地平線を染める。場違いかもしれないが、すごく幻想的だ。いっそ、今日の出来事が全て幻想で、空想のことであればどんなに嬉しいか。
そんなの、無理に決まっている。
だって、今日は実際に死にかけたし、初めてパーティーバフを失って、一人で足掻いたし。何より傷を負うと痛いのだ。痛い夢などあってたまるものか。
終わりの見えない戦場を後方で静観しながら、これは夢ではない、と何回も胸に刻んだ。
魔物の数は徐々にではあるが、減って来たように思える。それに比例して負傷者も出ているわけだが、変な正義感に苛まれて闇雲に突っ込むのは、ただの下策だ。臆病風に吹かれるくらいの気持ちで、この門を死守するのだ。
未熟で生意気ながらも、どっしり構えていればいい。実際、バジリスク以降、ハルトたちの元まで流れてくる魔物は一匹たりともいなかった。
第二震が起こってから、約三時間が経過しただろうか。目に見て取れるほどに魔物は数を減らしている。それでも、まだまだ冒険者に余裕があるとまではいかない。しかし、このまま事が順調に進めば、どうにか夜も深いうちに事が済みそうだ。
とにかく、長い一日であった。思い返すと、昼間の出来事はとうに昔の記憶のように思えた。
突然の魔物の大量発生。事後処理や今後の事を考えると、頭が痛くなるが、とにかく今日はもう瞼を閉じたかった。
そして、また明日からこの理不尽な世界で頑張ろう。
不意に――意識したわけでもなしに気が緩んだ。それは些細な、たぶんコンマ一秒にも満たない油断であった。
――穴だ。
一瞬、身震いをした。全身の毛穴がバッと開いた。しかし、特に何かが起きたわけではなさそうだ。
「杞憂、か……」
マナツもモミジも、息が上がっているハルトを不思議そうに見つめていた。
「……ごめん、なんでもない」
そう呟くので精一杯であった。
変に気持ちをいれすぎるのは逆効果だ。落ち着け。落ち着け。落ち着け。
体の力は抜いて、頭は常に冴えた状態をキープするんだ。流されるな。落ち着け。おちつ――
ドガガガガガガガガガッッッッッッッ――――――――――――ンンッ!
増援に来た冒険者たちは、到着した途端、驚愕したことだろう。魔剣士だけのパーティーが、バジリスクと相対しているなど誰が予想できようか。その様子を見て、驚かないのはハルトたちの例の力を知っている奴らだけだ。まぁ、その人たちからしたら、別の意味で驚きそうではあるが。
兎にも角にも、ぞろぞろやってくる増援の冒険者たちでバジリスクを囲み、数に物を言わせてフルボッコにしてやった。案外、爽快だったりする。
しかし、何故かハルトたちは最終ラインから動けずにいた。バジリスクを叩きのめした冒険者たちは、こぞって前へ。後退してくるパーティーは既に手負いだ。無責任にこの場を離れるわけには行かなかった。
急に街から増援にくる冒険者がいなくなった。それもそのはず、南門だけで総勢百五十名ほどの冒険者が集まっている。おそらく、西門と北門には南門ほどはいかないものの、やはりかなりの冒険者が集まっているであろう。東門に関しては、貴族のテリトリーで門の開閉が基本的には為されないため、おそらくほとんど冒険者はいないと思う。
「圧巻ね……」
呑気に聞こえるマナツの発言だが、本心であろう。確かに冒険者がこんなにも勢揃いして、魔物と戦う光景など見たことがない。少なくとも、ディザスター内で行う命知らずはいない。
「もしかしたら……」とモミジが皮切りに喋り出した。
「人間の領域が、ディザスター化している……って考えはないかな?」
数秒、理解が足らずにモミジを見つめる形になってしまった。
「ディザスター……」
マナツは反芻してその名を口にしている。
ディザスター。人間の領土における、魔物の棲まう領域の総称だ。この街より、はるか南には大きな谷が存在し、その谷を越えると魔物の領土となっている。噂では世界はちょうど半分が人間、半分が魔物の領域となって均衡が保たれているらしい。
現に、ディザスターという例外はあれど、谷の向こうから魔物が押し寄せて来た事例は少なくとも記録されている歴史上には存在しない。
「ディザスターになりつつあるのなら、今のこの魔物の大量出現も合点が行く……と思う」
それは、と口に出しかけ、飲み込んだ。否定しようとしたのだろうか。それすらもわからないくらい、そのあとの言葉は続かなかった。
「でも、そうなると冒険者の数が四人にならない限り、永遠にこれが続くんじゃ……」
モミジは凄惨な戦場を見渡して、そっと首をふった。わからない。そう言いたいのだろう。
「ありえる話ね。だから、どうしたって感じもするけども」
「とりあえず、今日寝れるかな……?」
モミジは空を見上げた。つられてハルトも空を仰ぐ。第一震の時はまだ日が高くにあった。今は既に太陽の光は届かない。無数の星々が地に光を与えるように煌々と輝いていた。気のせいだろうか、星屑の中でひときわ異彩を放つ魁星が、今日はいつになく怪しげに輝いている気がした。
視界を戻す。各所で飛び交う火花や魔法が、夜の地平線を染める。場違いかもしれないが、すごく幻想的だ。いっそ、今日の出来事が全て幻想で、空想のことであればどんなに嬉しいか。
そんなの、無理に決まっている。
だって、今日は実際に死にかけたし、初めてパーティーバフを失って、一人で足掻いたし。何より傷を負うと痛いのだ。痛い夢などあってたまるものか。
終わりの見えない戦場を後方で静観しながら、これは夢ではない、と何回も胸に刻んだ。
魔物の数は徐々にではあるが、減って来たように思える。それに比例して負傷者も出ているわけだが、変な正義感に苛まれて闇雲に突っ込むのは、ただの下策だ。臆病風に吹かれるくらいの気持ちで、この門を死守するのだ。
未熟で生意気ながらも、どっしり構えていればいい。実際、バジリスク以降、ハルトたちの元まで流れてくる魔物は一匹たりともいなかった。
第二震が起こってから、約三時間が経過しただろうか。目に見て取れるほどに魔物は数を減らしている。それでも、まだまだ冒険者に余裕があるとまではいかない。しかし、このまま事が順調に進めば、どうにか夜も深いうちに事が済みそうだ。
とにかく、長い一日であった。思い返すと、昼間の出来事はとうに昔の記憶のように思えた。
突然の魔物の大量発生。事後処理や今後の事を考えると、頭が痛くなるが、とにかく今日はもう瞼を閉じたかった。
そして、また明日からこの理不尽な世界で頑張ろう。
不意に――意識したわけでもなしに気が緩んだ。それは些細な、たぶんコンマ一秒にも満たない油断であった。
――穴だ。
一瞬、身震いをした。全身の毛穴がバッと開いた。しかし、特に何かが起きたわけではなさそうだ。
「杞憂、か……」
マナツもモミジも、息が上がっているハルトを不思議そうに見つめていた。
「……ごめん、なんでもない」
そう呟くので精一杯であった。
変に気持ちをいれすぎるのは逆効果だ。落ち着け。落ち着け。落ち着け。
体の力は抜いて、頭は常に冴えた状態をキープするんだ。流されるな。落ち着け。おちつ――
ドガガガガガガガガガッッッッッッッ――――――――――――ンンッ!
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