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一章 運んでくる幸せのカタチとは
運んできた幸せ
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親元を離れる前から履いているボロボロの焦げ茶の編みあげブーツの中へ足をすっぽり入れ、紐を硬く締める。膝をポンと叩きそれを合図としスッと立つ。
「よし」
自分なりの癖になった気合い入れだ。
軋む扉を開ければ眩しい日差しが隙間から溢れる。
地面を踏み付け扉を閉めた瞬間、心地の良いふわっとした暖かな風がノーアを包み込む。
ここに来てから初めて味わった爽快感。
「うってつけの日じゃない」
ノーアは目を輝かせ、伝統について考えながら、目一杯体を大きく広げ伸びをした。低い背丈の伸びは可愛らしい。
「いつまでこんな道なのかしら‼歩きづらいったらありゃしない…!!!」
村長の家は、細く整備がされていない砂利道を登っていくことになる。近場だがこの道で皆苦労しているのだ。
── 村一番の問題と言っても過言では無いだろう。
軽く息を切らしながら村長の家の前についたノーア。だが、「ごめんください」の一言を扉越しに言えないでいた。村長は気難しい性格をしており、歳はもう100超えてるし老いのせいなのか怒りっぽいし、特に話が噛み合わない。長話が多い。話題にしたら切りがなくなってしまうぐらいに。ノーアからの印象はとても悪いものだった。
(自分で行動を起こしたのに何で今さら…)
心の中で自分と葛藤していると
「ノーアかい?」
「びゃああああっっ?!?!村長!?」
家の中にいると思ったノーアはあからさまに不審者のような返事をした。
「ワシの家の前で、どうしたんだい」
「何でもありませ…じゃなくて、えっと…
この村の伝統行事…について詳しく聞こうと思って」
「?どうしたんだい、聞いているのに返事はしたらどうだい」
(きーたー、凄く面倒くさい奴。)
「すみません、伝統行事につ ──」
「おーほー、その事かいな、次ははっきり言うんだよ」
「…はい、すみません」
心の思いが零れそうだった口をきゅぅと詰むんだ。
「で、伝統行事についてだったじゃな?」
「はい」
できれば手短に終わらせて…
その願いは叶わないのだった。
「君は新入りだからな、源から話すとしようか」
「分かってるだろうが、この村は年間を通して晴れることがあまりないんじゃ。それで先祖は雨に纏わる伝統を創る、といったんじゃがその孫が雨はよく降るから盛り上がりに欠けていると言ってなぁ、その案はかなり良いと周りも賛成してな。で、今も続いているのじゃ」
「…あの、前も聞きました」
「そうだったか、ケチをつけないで聞きなさい」
村長に聞かないほうが良かったと今更悔やむノーア。
瞬間、村長の目が真剣なものに変わった。
「その時じゃったかなぁ…一人の娘が『青い鳥を見つけた』と大騒ぎしたんじゃ。別に物珍しくは感じなかったんじゃけどな…」
「すると青い鳥が一羽真上を通り過ぎたのじゃよ。鳥が通った所から雲が割れてな、一瞬のうちに晴天と化した」
(青い鳥が雲を…?)
「そんなことあるんですか、現実味がないというか…」
「『そんなこと』があったんじゃよ。」
「そうなんですね…ありがとうございます。よく分かりました」
ただ単に、疑問が増えただけだが聞きたかったことは聞けたので良しとした。
「午後3時から祭が始まる、力仕事は男共がやるだろうから、ノーアは村の入り口付近で生えてるハーブを籠一杯になるまで取ってきてくれないか」
それも力仕事なんじゃ、と思ったが言わない。
「分かりました。他には?」
「ないよ、男手は足りてるからのぉ」
(ハーブもやらせたらどうなのよ…)
適当に返してその場を離れた。
「よし」
自分なりの癖になった気合い入れだ。
軋む扉を開ければ眩しい日差しが隙間から溢れる。
地面を踏み付け扉を閉めた瞬間、心地の良いふわっとした暖かな風がノーアを包み込む。
ここに来てから初めて味わった爽快感。
「うってつけの日じゃない」
ノーアは目を輝かせ、伝統について考えながら、目一杯体を大きく広げ伸びをした。低い背丈の伸びは可愛らしい。
「いつまでこんな道なのかしら‼歩きづらいったらありゃしない…!!!」
村長の家は、細く整備がされていない砂利道を登っていくことになる。近場だがこの道で皆苦労しているのだ。
── 村一番の問題と言っても過言では無いだろう。
軽く息を切らしながら村長の家の前についたノーア。だが、「ごめんください」の一言を扉越しに言えないでいた。村長は気難しい性格をしており、歳はもう100超えてるし老いのせいなのか怒りっぽいし、特に話が噛み合わない。長話が多い。話題にしたら切りがなくなってしまうぐらいに。ノーアからの印象はとても悪いものだった。
(自分で行動を起こしたのに何で今さら…)
心の中で自分と葛藤していると
「ノーアかい?」
「びゃああああっっ?!?!村長!?」
家の中にいると思ったノーアはあからさまに不審者のような返事をした。
「ワシの家の前で、どうしたんだい」
「何でもありませ…じゃなくて、えっと…
この村の伝統行事…について詳しく聞こうと思って」
「?どうしたんだい、聞いているのに返事はしたらどうだい」
(きーたー、凄く面倒くさい奴。)
「すみません、伝統行事につ ──」
「おーほー、その事かいな、次ははっきり言うんだよ」
「…はい、すみません」
心の思いが零れそうだった口をきゅぅと詰むんだ。
「で、伝統行事についてだったじゃな?」
「はい」
できれば手短に終わらせて…
その願いは叶わないのだった。
「君は新入りだからな、源から話すとしようか」
「分かってるだろうが、この村は年間を通して晴れることがあまりないんじゃ。それで先祖は雨に纏わる伝統を創る、といったんじゃがその孫が雨はよく降るから盛り上がりに欠けていると言ってなぁ、その案はかなり良いと周りも賛成してな。で、今も続いているのじゃ」
「…あの、前も聞きました」
「そうだったか、ケチをつけないで聞きなさい」
村長に聞かないほうが良かったと今更悔やむノーア。
瞬間、村長の目が真剣なものに変わった。
「その時じゃったかなぁ…一人の娘が『青い鳥を見つけた』と大騒ぎしたんじゃ。別に物珍しくは感じなかったんじゃけどな…」
「すると青い鳥が一羽真上を通り過ぎたのじゃよ。鳥が通った所から雲が割れてな、一瞬のうちに晴天と化した」
(青い鳥が雲を…?)
「そんなことあるんですか、現実味がないというか…」
「『そんなこと』があったんじゃよ。」
「そうなんですね…ありがとうございます。よく分かりました」
ただ単に、疑問が増えただけだが聞きたかったことは聞けたので良しとした。
「午後3時から祭が始まる、力仕事は男共がやるだろうから、ノーアは村の入り口付近で生えてるハーブを籠一杯になるまで取ってきてくれないか」
それも力仕事なんじゃ、と思ったが言わない。
「分かりました。他には?」
「ないよ、男手は足りてるからのぉ」
(ハーブもやらせたらどうなのよ…)
適当に返してその場を離れた。
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