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第八話「フォース解放」①
しおりを挟む店は跡形もなく破壊された。
かなりの爆発だったため間違いなく大ダメージを受けただろうと思ったレキだったが、ふと目を開けるとまったくの無傷であることに気づく。
「……大丈夫ですか? みなさん」
レキはその声のするほうを振り返った。
そこにはシーラが魔法の結界を発動させ、もともと店があったすべての部分を包みこんで立っていた。
店自体は爆発によって破壊されていたが、店の中にいた客はシーラの結界によって全員無事である。
「な、なんだ突然……? 一体何事だ?」
客達は突然の爆発に、みな状況が把握できていなかったが、店の中にいた人々はほとんどが魔導師であり、それぞれに保護魔法を唱えるなどして身の護りを強化し始めていた。
「……さすがシーラ。お前はたしか予知と防御魔法だけは得意だったねぇ」
まだ爆煙がもくもくと立ち上る中、老婆——魔導師イズナルが姿を現した。
「イズナル……!」
店の中にいた他の魔導師たちはその姿を見るなり驚いた。
「この騒ぎはお前の仕業か!? イズナル!」
「お前は変な奴だとは思っていたが……これはどういうつもりだ!?」
魔導師たちが口々に騒ぎ立てる。その様子に、イズナルは心底うっとうしそうな表情を浮かべた。
「まったく、雑魚どもがギャアギャアとうるさいね。そんなに騒がなくたってすぐにこの街ごと消し去ってやるよ。……ワシの正体がバレてしまった以上、もうこのジルカールに用はないからね」
「……なんですって!?」
イズナルの言葉に、シーラは驚いた。
「この街はあなたが研究を続けるために、必要なはずでしょう? そのために長年正体を偽ってきたというのに……その街を自ら滅ぼすというのですか!?」
イズナルにとってもこの街は大事な研究施設であるはずだった。そのため、シーラは最悪の事態でも、まさかイズナルがこの街を滅ぼすとは考えてもいなかったのだ。
「研究の続きはもっと別な場所でひっそりとすることにしたよ。最近じゃ、あの罠に引っかかる人間も少なくてね。このジルカールに留まる意味がもうあまりないのさ……」
レキはイズナルの罠があった店を思い出した。たしかに、最近はあまり人の出入りがないように思える店だった。
「もうここらが潮時でねぇ。このジルカールは、邪魔な“世界一の魔導師”と共に今日姿を消すのさ!」
イズナルはそこまで言うと再び魔力を強めはじめた。もう一度こちらにとどめの巨大魔法を放とうとしていることは間違いない。
シーラもそれに合わせて防御魔法を強めたが、少し息があがっている。
強力な魔法を防ぐ結界を広範囲にわたって作り出しているため、もう一度イズナルの魔法を防ぐのは、かなりの負担をかけることになるだろう。
「……イズナル!!!」
その状況をいち早く察したレキは、叫ぶと同時にシーラの作り出した結界から飛び出した。
イズナルに魔法を撃たせる余裕をあたえてはならない。
レキは持ち前の速さで素早く剣を構え、今まさに魔法を放とうとしていたイズナルに向かって突進した。
「ム……!」
一歩間違えれば巨大魔法の直撃をくらってしまうような無謀な行動だったが、今回はその思い切りの良さが幸いした。
レキの思った以上の素早い攻撃にイズナルは魔法を完成させることができず、魔力を解くと同時に持っていた杖でレキの剣を受け止めた。
——ギィン!!!
レキの剣とイズナルの杖が鋭い音をたてて十字に重なる。
イズナルは見かけによらず、か細い老人とは思えないほどの力でレキの攻撃をギリギリと受け止めていた。
「なかなか素早いじゃないかボウヤ……。ならばこれはどうかね!」
イズナルが目をカッと見開くと同時に、強力な闇の衝撃波がレキを襲った。
あまりの至近距離だったため、避ける間もなくレキは後方へと吹き飛ばされる。
「うわっ!」
そのまま、ドシン! とおもいっきり壁に体を叩き付けられた。
「おい大丈夫か!? レキ!」
吹き飛ばされたレキのもとへクローレンがすぐさま駆け寄ってきた。
クローレンもすでに剣を抜いており、戦闘体勢を整えている。
「……あぁ、平気だよ」
かなりの衝撃だったため、レキが叩き付けられた壁にはヒビが入っていた。
もちろん叩き付けられた本人も無傷ではなく、レキの頭からは一筋の血が流れだしていた。
「平気ってお前……血、出てるぞ?」
絶対ちょっと強がってるだろ……とでも言いたげなクローレンがレキの額を指す。
「これくらい、なんてことないよ」
レキは流れる血をぐいっと腕でぬぐいながら立ち上がったが、若干よろめいた。
さっきの闇の衝撃波の影響で、まだ頭がクラクラする。
「……ホホホ! どうやら効いたみたいだね。さっきの波動をあれだけ浴びれば、どんな者でもしばらくはまともに動くことができないよ。……わかったらそこでおとなしく……——ぬあぁっ!!?」
イズナルは言いおわる前に驚きの叫び声をあげた。
動けないはずだと思っていたレキが間髪入れず、再びイズナルに向かって飛び出し、攻撃をしかけてきたのだ。
「……キサマ! なぜ!?」
思いもよらない反撃にイズナルの防御は少しだけ遅れたが、間一髪でレキの剣を受け止めることに成功していた。杖を構える手に、再びギリギリと力を込める。
「今だ! クローレン!!」
しかし、目の前の少年の叫びにさらにドキリとした。
気がつけば、いつの間にかイズナルの真横に回り込んでいたもう一人の男が、剣を構え今まさにそれを振り下ろそうとしている姿が映った。
「っしゃー! まかせろー!!」
レキの呼びかけに応えると同時に、クローレンはイズナルめがけて剣を振り下ろす。
「……チィッ!!」
イズナルは、やむなくレキの剣を受け止めていた杖を手放し、後ろへ跳んだ。
杖がカランと転がる中、さっきまでイズナルが立っていた場所に——ガシン!と大きな音をたて、クローレンとレキの振り下ろした剣が地面に突き立てられた。
「……げぇ。避けやがった! おっそろしく素早いババァだな」
クローレンはそう呟きながらも、すぐさま突き立てた剣を抜く。だが視線はしっかりとイズナルを見据えたままだ。
レキも剣を抜き、イズナルが落とした杖を蹴ってさらに遠くへと離した。
杖がなければ魔法は少し威力が落ちるはずだ。
「……これは私が預かっておきますよ、イズナル」
さらにその杖を念のために拾い上げながらシーラが静かに言った。
杖を簡単に取り戻すことが出来ないようにするための行動だったが、イズナルはそんなことはまったく聞いていないかのような様子でただひたすらに邪悪な目でレキを見つめていた。
それは見つめるというよりも観察しているといった表現のほうが正しいかもしれない。
「……ボウヤ、お前は何者だい? 普通の人間なら、ワシの波動を受けて動けるはずがないんだがね」
そう言うとイズナルはこれまで見せたどんな顔よりも邪悪で凶悪な顔つきになった。
「………よっぽど特殊な人間以外はねぇ」
イズナルからビリビリと鋭い殺気が走った。
さっきまでとはうってかわって、この場を包む空気も一瞬にして凍りついたようになる。
あまりの恐ろしい空気に、その場にいた街の魔導師の何人かは悲鳴をあげて逃げ出した。残った数人も、ただならぬ気配に保護魔法を強めてみたがみな微かに震えている。
もはや、先ほどのようにイズナルに野次を飛ばせるような状況ではなかった。
「ボウヤ……、お前は何者かと聞いているんだがね? 黙ってないで答えたらどうだい?」
イズナルは目を細め、じっくりとレキを観察している。
はっきりとは断定できないが、レキから微かに聖なる力のようなものの存在を感じていたのだ。
どうやらその力がイズナルの邪悪な魔力を打ち消しているようである。
「別に。オレはただの旅人だけど」
レキはイズナルの問いに、自分でも驚くほど冷静に答えた。
彼女の魔法があまり効かなかったのは、レキの持つグランドフォースの力が闇の魔力からレキを守り、威力を弱めたためだろう。
厄介なことだがイズナルは少なからずその事実に勘付いてしまっている。
それはまもなく、レキの存在——グランドフォースが実は生きているということがモンスター側にバレてしまうかもしれない、ということだ。
グランドフォースはモンスターにとって、最も邪魔な存在。
生きていることがバレれば、再び全力で命を狙われることになるだろう……。
しかしそんな状況を目の前にして、レキは逆に不思議なほど落ち着いていた。
いつかはバレると覚悟していたことである。今さら慌てたって仕方がない。
「ただの旅人ねぇ……」
イズナルがなおも妖しい目を光らせながらレキを値踏みする。
それはゾッとするような冷たさに満ちた目つきであった。
近くにいたクローレンは自分が見つめられているわけではないが、ブルルッと小さく身震いをする。
「うへぇ~……こわっ! レキ、あのババァお前のことかなり睨んでるぞ。相当、魔法が効かなかったことが許せねぇみたいだよなー。……んでもまぁ、オレもお前の謎の力にちょっと興味湧いたけど」
クローレンは緊張しながらもどこか呑気なセリフをはく。……そういう性格のようだ。
「まーそれは、あのババァを倒した後できっちり教えろよな!」
そう叫びながらクローレンはイズナルに向かって再び突っ込んでいった。
「くらえ! ババァ!!」
クローレンが攻撃を仕掛けるが、今度はいとも簡単にイズナルに避けられてしまう。
「……今更じゃがお前はずっとババァ、ババァうるさいわ!」
クローレンの生意気な態度がイズナルの注意を引いてしまった。
「ム……? そういえばたしかお前は魔法が使えないほうだったね。……ホホホ! そうだ! 良いことを考えたよ。あの謎のボウヤの始末はお前につけさせようじゃないか」
イズナルは妖しい笑みを浮かべると同時に、右手の人差し指を真っすぐにクローレンに向けた。
その指先からは一直線に黒い光が伸び、その光はまだ体勢を整えているところであったクローレンの額を貫いた。
「……うわあぁぁ!!!」
「クローレン!!!」
レキは目の前で繰り広げられている光景に目を疑った。
イズナルの魔法がクローレンを貫いてしまった。そしてなおも、黒い光はイズナルとクローレンを繋いだままだ。
クローレンは苦痛に激しく顔を歪めている。
「……慌てなくても大丈夫だよボウヤ。別に攻撃してるわけじゃないからね」
「じゃあクローレンに一体何を……!?」
イズナルがその質問に答える前にシーラが後ろから叫んだ。
「レクシス! その魔法こそが人にモンスターの心を植え付けるものです! 彼は今、イズナルから闇の魔力を注ぎ込まれています!! はやく止めないと彼は……!」
「なんだって!? ……そんなことさせるもんか!」
レキはすぐさま剣を構え、黒い光を放ち続けているイズナルへと向かった。
しかし、そのイズナルとレキの間に別の人影が割って入り、レキの行く手を阻んだ。
「オ前ノ相手ハ、ワタシダ」
「!!」
その人影は、地下で見たフードを被った人物であった。
地下と違って周りが明るいためフードの下の顔を確認することができたが、その様子と風貌はただの普通の人間が虚な顔をしているだけに見えた。モンスターではない……。
「ホホホ! その子はワシの可愛い、成功品のひとつだよ。他の完成品に比べて話し方が片言だから、知能がちょっと低級だけど、心はすっかり魔物と同じだよ」
フードを被った人物は剣を構え、じりじりと間合いを詰めて来る。
その様子は全く隙がなく、この人物もかつては相当な剣の腕だったであろうことを感じさせていた。
「くっ……!」
レキは焦った。まずはこの人物を倒さなければクローレンを助け出すことは不可能だろう。
しかし相手は元人間。一体どう戦えばいいというのだろうか。
……そして、こうして考えている間にもクローレンは……。
「うわぁぁあああ……!!」
クローレンのさらなる悲鳴にレキは思わず目を向けた。
見ると、クローレンの周りには邪悪な黒いオーラが漂いはじめている。
「普段ならもっと時間をかけてゆっくりやるんだがね……。だから正直成功するかどうかわからないよ。……まぁ、成功したら晴れてモンスターの仲間入り。失敗したら死ぬだけだがね」
イズナルの言葉にレキはゾッとするような恐怖を感じた。
術が成功しても失敗してもクローレンは無事ではない。
それならなんとしても、完成する前に魔法を止めなくては……!!
「オ前ノ相手ハ、ワタシダト言ッテイル」
よそ見をしていたレキに向かって、フードの人物が斬り掛かってきた。
「……!!」
——キィン!!
レキは寸前でなんとかその攻撃を受け止める。
こちらも油断しているといつやられてもおかしくないような状況だった。
「レクシス! 彼のことは私達に任せて、あなたは目の前の敵に集中してください!」
シーラが再び後ろから叫ぶ。
その横には、まだこの場に残っていた数人の魔導師たちが集まっており、みな一斉に攻撃魔法を唱えていた。
「さぁみなさん、今です!!」
シーラのかけ声を合図に、全員が同時に詠唱を終える。すると魔導師たちがそれぞれ唱えた魔法は重なりあって一つの大きな魔法となり、一直線にイズナルめがけて飛んでいった。
「フン……! 所詮ザコ共が集まったって、どうともならないよ!」
イズナルはその攻撃に気づき、蔑むように吐き捨てると、同時に空いている左手をふりあげ魔導師たちの放った渾身の魔法をそっくりそのまま叩き返した。
「うわ!!」
魔導師たちは予期せぬ反撃に、散り散りになって逃げ惑う。
次の瞬間、さっきまで魔導師たちがいた場所には跳ね返された魔法が見事に直撃し、滅茶苦茶に破壊され、巨大な大穴があいていた。
「そんな……! これほどの威力の魔法を放っても、私達の力では手も足も出ないなんて……!」
シーラが呆然とつぶやく。
イズナルの力は想像以上に強かった。さすがに“世界を破滅へといざなう者”の直属の臣下というだけのことはある。
並大抵の魔法では、不意打ちでも成功しない限り、ダメージを与えることさえできないようだ。
「このままでは彼が……」
シーラはさっきよりもさらに大きくなったクローレンの周りに漂う闇のオーラに危機感を感じた。
自分達の力ではイズナルの魔法を止めることは不可能に近い。
しかしなんとかしなければ、このままでは最悪のシナリオへと一直線である。
「……くそっ!!」
少し離れた場所で、次々と繰り出されるフードの男の攻撃をかわし続けているレキもこの状況に焦っていた。
どうやらシーラ達の力ではクローレンを助け出すことは難しそうだ。
一刻も早くこの戦闘を終わらせ、自分も加勢にいかなければならない。
急がないと、本当にクローレンは……。
レキは一刻も早く助けに向かうため、目の前のフードの男に全神経を集中させた。これ以上戦闘を長引かせるわけにはいかない。
レキは次に繰り出される攻撃を避けると同時に、前へと踏み込んだ。
「……悪いね!」
レキは叫ぶと同時に身を屈めて剣を引き、握っている柄の部分を男の腹におもいっきり打ち込む。
「……ク、ハッ!」
腹部に強烈な打撃を受けた男は一瞬よろめいたが、倒れるまでには至らなかった。そのままレキの腕をガシリと掴む。
「甘ク見ルナ……。ナゼ、刃ノホウデ攻撃シナイ?」
男はレキの腕を掴んだまま、もう片方の手に握っている剣を振り上げた。
しかし、レキは剣を持つほうの腕を掴まれているため、その攻撃を逃れることも剣で防ぐこともできそうにない。
「手加減デモシテイルツモリダッタノカ……!」
男がレキに向かって真っすぐに剣を振り下ろす。
「……ッ」
レキは瞬時に、掴まれている右手から空いている左手へと剣を滑らせるようにパスさせた。
そしてそのまま左手に持ち替えた剣に勢いをのせ、振り下ろされた剣に向けておもいっきり振り抜く。
「——ヌゥッ!!?」
カァン!という甲高い音とともに、男の剣はクルクルと円を描きながら弾き飛ばされた。
まさかこの状況から反撃されるとは思っていなかったため一瞬動揺が襲う。
「体術も、もっと習うべきだったかな」
レキはボソリと呟くと、男の脇腹にむけて渾身の蹴りを一発おみまいした。
「ッグア……!!」
男は低いうめき声を漏らし、レキを掴んでいた手を離すと、そのまま数メートル吹き飛んで床に叩きつけられた。
しかし、男は脇腹を抑えながら再びすぐに起き上がる。
「コンナ軽イ攻撃デ、トドメヲ刺セルト思ッタラ大間違イダゾ……」
たしかに、男の言うとおりである。これくらいで倒れる相手ではないだろう。
しかしレキは最初からこの男にとどめを刺すつもりなど全くなかった。
元は人間。勝負を急いではいるが、なんとか元に戻す方法がないものかと考えていたのだ。
「……無理だねぇボウヤ。一度モンスターになった人間は二度と元には戻らない。もちろん今、術を受けているこの茶髪のボウヤもだ……。モンスターにするのが成功すればさぞ楽しいだろうねぇ。……仲間相手にどうやって戦うのやら」
レキの考えを見抜いたかのように突如イズナルが口を挟む。しかも最後のほうはかなり楽しそうな口調であった。
「イズナル……!」
なんて非道なことを考えるのだろう。
レキの心に怒りが沸き上がって来た。
「お前だけは……許さない」
「ホホ! 許さなければどうするんだい? ホラホラ、またワシの可愛いお人形が向かって来てるよ」
イズナルの言う通り、再びフードの男が剣をとり、レキに突進して来ていた。
腹部に数度ダメージを受け、スピードが少し弱まってはいるものの、まだまだ油断ならない相手である。
「……くそ」
レキは苦々しく一言呟くと、集中して魔力のイメージを強めはじめた。
実戦での魔法は少し苦手だが、これだけ間合いがあれば簡単な魔法ならなんとかなるはずだ。
レキは魔力を込めながら、頭の中で「光」を強く思い描く。
「—シャイン!!—」
短く詠唱を終えると同時に、レキはフードの男の目の前で眩しいくらいに光り輝く光の玉を炸裂させた。
そのあまりの眩しさに男の目は眩む。
「ヌア!? ……クソ、何モ見エナイッ!!」
男は焦ってやみくもに剣を振り回す。
レキはその振り回される剣を避けながら素早く男に近づくと、剣の柄で後頭部に強い衝撃を与えた。
「ガ……!」
無防備だった後頭部に衝撃を受け、男はまるでスイッチを切るかのように意識を失った。ドサリとその場に倒れ込む。
「……元に戻らないなんて、嘘だろ」
レキはイズナルの言葉を信じたくなかった。
元人間であり、見た目も全く同じ人間のままである相手を殺すことなどレキには到底できない。
こうして気を失わせるくらいが精一杯だ。
「ホ、ホ、ホ……。嘘じゃないよ……」
ようやく、フードの男との決着のついたレキに、先ほどよりも一段と嬉しそうなイズナルの声が聞こえてきた。
レキはその声の調子に、なにやら不吉な予感を覚える。
「………レクシス……間にあいませんでした」
続いてシーラの絶望に満ちた声がする。
その声が、レキの不吉な予感をさらに確定的なものとさせた。
もう、見なくても何が起きているのかがなんとなくわかっていたレキだったが、信じたくない思いで二人の声のするほうをゆっくりと振り返った。
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