悪の女幹部に魅了されてしまった少年勇者の話

古沢やゆ

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第十四話「潜入!ダンデリオン」①

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 再び・ダンデリオン——。

 レキとクローレンは街の入り口付近にまで来ていた。
 近くから街の中の様子を窺うと、確認できるだけでも数十匹のモンスター達が徘徊し、それだけでもかなり危険な雰囲気が漂っている。

 モンスターの種類も先程抜けてきた森にいたものとは違い、さらに上級だと思われるようなモンスターが多くうろついている。
 以前ウェンデルの未開の地で遭遇したようなミニドラゴンやアンデット系の骸骨騎士、また今までは目にしたことがないような数種の獣を合体して狂暴化させたようなモンスターの姿もある。
 おそらく何らかのキメラだろうと思われるが、そのモンスターの発する危険なオーラから察するに、かなり上級なモンスターであることは間違いなかった。

 さらに、他にもたくさんの雑魚モンスター達も辺りをうろついており、レキとクローレンの二人にとっては非常に好ましくない状況だった。


「……おいレキどーするよ? あの数の、しかもあんな強そうなモンスター達相手に真正面から突っ込んで行くのはちと無理があるぜ。なんか作戦でも立てねぇとなー」

 クローレンはこの緊張感漂う雰囲気にはおよそ似つかわしくないのんびりとした口調で提案する。
 緊迫したシーンでの彼のこういった口調はもはやお馴染みだ。

「作戦か……。とにかく中の様子を詳しく知りたいし、最初はなるべく戦闘は避けながら街の中心まで行きたいな。ダリアさんの無事も確認しなきゃならないし」

 レキが考えながら言う。あまり作戦という程の作戦ではないが、なにしろ乗り込むメンバーがたった二人だけなので、他に有用な手立てというのも少ないだろう。

「つーことはよ、モンスターに見つからねぇよう隠れつつ進むってことだよな? そーいうことなら得意だぜ」

 クローレンはレキの言葉にニヤリと笑いを返すと、まかせろ!とでも言うように自分の胸をドンと叩いてみせた。

「でも、どうしても戦わなきゃならない状況になったら戦うよ。その時はまたグランドフォースの力を使うから、クローレンちょっとだけサポートを頼むよ」

 レキはそれだけ言うと街の入り口から少し離れた崩れかけのバリケードのほうへ向かって歩いて行く。
 ダンデリオンの街は入り口以外は高い塀のようなバリケードで囲まれており、それによって外からの侵入者を防いでいたようである。
 今はそのバリケードもところどころ崩れかけていたが、レキが向かったのはその中でも最も侵入が容易そうな部分であった。

「おい、でもそれだと後でお前が危険になるだろ。さっきまでのザコどもと違ってここのモンスターはちと強そうだし。お前、フォースを解放したら集中攻撃されるぞ」

 クローレンはすかさずレキに突っ込んだが、当の本人はそんな忠告も聞かず、すでにバリケードを越えようとしているところだった。
 どうやらそこには入り口のように駐在しているモンスターがいないようで、レキはまもなくダンデリオンへと突入する寸前だった。

「行くよ、クローレン」

「オイコラ! お前、人の話聞いてないだろ! ……んっとにお前は命知らずな奴だよな」

 クローレンはブツクサ言いながらも駆け足でレキの元へと向かう。
 するとレキは、ひょいと登ったバリケードの上からクローレンを見下ろし、にっこりと笑ってみせた。

「ちゃんと聞いてるよ。でも囲まれたりでもしたら他に方法ないでしょ? 大丈夫。オレ、やられたりなんかしないよ」

 レキはそこまで言うとピョンと塀から飛び下り、街の中へと姿を消した。
 残されたクローレンは、なんだか納得がいかないようにガシガシと頭を掻く。

「……なんつー奴。ほんとに大丈夫かよ」

 クローレンはそう一言呟くと、仕方なくレキの後に続いてバリケードを越えた。なるべく戦う状況にはならないことを祈りながら——……。



 * * * *



 レキとクローレンの二人は崩れかけた建物の陰に身を隠し、街の様子を窺っていた。
 すぐそばには三つの違う頭をもつ猛獣のようなキメラ、それから巨大な剣を携える骸骨の剣士がうろついている。
 彼等は似たようなルートをぐるぐる回りながら侵入者の見張り番でもしているようだが、おそらくこんな危険な街に自ら潜入しようとする輩は今までいなかったのだろう、彼等はどことなくやる気もなく暇そうにしている。

「なんとか隙を見て前に進もう。仲間を呼ばれると厄介だから」

 レキは荒廃した建物からこっそりと顔を出し、モンスターの様子を窺いながら隣のクローレンに小声で話しかける。

「そうだな。あと、上にも気をつけろよレキ。空にも厄介なのが飛び回ってるぜ。……ありゃドラゴンか? あいつにも見つからねぇように進まなきゃなんねーぞ」

 クローレンが空を見上げながら面倒くさそうに呟く。
 空にはダンデリオンの街を旋回しながら、地上の様子に目を光らせているドラゴンの姿が確認できる。

 地上と空からの両方の監視をかいくぐって街の中心まで行く事など本当に可能なのか、と彼は少々訝しんだところでケホリと一つ、小さな咳をした。
 ダンデリオンにはかつては花であったと思われる白い灰がまだハラハラと舞っており、どうやらクローレンは空を見上げた際にその灰を少し肺の奥へと吸い込んでしまったようだ。

「大丈夫?」

「あぁ、ヘーキヘーキ。んでもこの灰も大量に吸うと体には良くねぇだろうな~。ここに長居は禁物だぜ」

 クローレンは自分の片腕を口元へと寄せ、少しでも灰を吸うことのないように服の袖で口元を覆い隠しながら呟く。

「そうだね。なるべく速く、でも慎重に進まないと」

 レキは前方の敵を見据えつつ答える。
 モンスターは一見、隙だらけで見張りをサボり気味のようにも見えるが、こちらの気配を少しでも察知するとたちまち襲ってくることは間違いないだろう。

 なんとか前方のモンスターをやりすごし、さらにその奥に確認できる崩れかけた民家辺りまで前進したいが、そこに身を潜めるまで奴らはこちらを振り返らないだろうか。


「考えてても仕方ねぇ。今だ、行くぞ!」

「……うん!」

 クローレンの掛け声にあわせ、二人は物陰から飛び出した。素早く迅速に、それでいてかつ慎重に音をたてず、前方の民家の物陰へと身を隠す。
 一瞬、何かを感じとった骸骨の剣士がこちらをチラリと見たのが目の端に映ったが、それはギリギリ二人が再び物陰へと姿を隠した時だった。
 骸骨のモンスターは気のせいかと首を捻った後、また同じルートを歩き出す。

「うへ、あっぶねー。もうちょいで見つかるところだったぜ」

「今の奴、いい勘してるね」

 二人は軽い言葉を交わし合いながら、民家の陰でホッと息をつく。
 だがこれだけのことで落ち着くのは気が早過ぎる。先はまだまだ長いのだ。

「チッ……、普通に戦うよりなんか疲れるぜ」

 クローレンはブツクサと文句を言うが、レキはその横からまたひょいと顔を出し前方を窺っていた。
 今度は少し離れた所に5、6匹のガーゴイルと、大トカゲの形態のモンスターの群れがあった。
 どうやら集まって会話でも交わしているようだったが、なにぶん数が多いためここを気づかれずに突破するのは少し難易度が高そうだ。

 まださっきやり過ごした骸骨の剣士の姿も遠くに確認できることから、とにかくモンスターの数が今より少しでも減った時に行動するのが懸命かもしれない。


「あいつらが別れた時に、もう少し先に見える建物まで行くよ。……あれはアイテム屋か何かかな? お店はほとんど壊れちゃってるみたいだけど、もしかしたら役に立ちそうなアイテムが残ってるかもしれない」

 レキは言いながら、少し離れた先にあるほとんど原型をとどめていないアイテム屋らしき看板がかかっている建物を指さしてみせる。
 おそらくかつて街が滅びるまでは多くの客で賑わっていたであろうその店は、瓦礫の量や残った残骸を計算するだけでもかなり大きな店であっただろうことが予想できた。
 今はもう見る影もないが、それでも調べてみる価値はあるだろう。

「了解。んでも、奴らが別れるのはちっと時間がかかりそうだな」

 クローレンも前方のモンスターをちらりと確認し、その様子を見た後で再び民家に身を隠しながら呟いた。
 モンスターの群れが別れそうな気配はまだ全く感じられない。彼等は侵入者もいなければ特にすることもなく暇なのだろう。
 数匹が同時に会話する彼等の声は、ギィーギィーと金属を引っ掻く騒音のようにしか聞こえないが、どうやらしばらく話が途絶えることはなさそうにみえる。

「そうだね。ちょっと待とうか」

 レキもそう言うと顔を引っ込める。
 二人は民家の陰に並んで身を隠しながらモンスターの会話が止むのをじっと待った。



「……なぁ、レキ」

 しばらく無言で待っていた二人だが、不意にクローレンがその沈黙をやぶった。

「ん、どうしたの? クローレン」

 レキはすぐさまその声の主のほうを振り向く。
 すると、クローレンはなんだかいつになく真剣な顔でレキを見ていた。

「お前に一つ聞きてーんだけど」

「? 何を?」

 クローレンの突然の問いに、レキはきょとんと首をかしげる。
 あまりおしゃべりには向かないだろうと思われるこの状況でクローレンの言葉はあまりに唐突だった。
 彼は一体何を聞きたいというのか。
 レキは不思議に思いながら、次にクローレンから出る言葉を待った。


「……お前、さ」

 クローレンは口を開いたかと思ったら、しかしそれをまたすぐに閉じてしまう。
 そしてちょっと考え込むような仕草をした後で、彼には不釣り合いなこの真面目な雰囲気を解いた。


「やっぱなんでもねぇ」

「……なにそれ」

 何か言おうとしていたことを喉の奥へと押し込めてしまったクローレンに、レキは怪訝な表情を向けるとちょっと不満そうな声を出してみる。

「なんか余計気になるんだけど」

「はは、まー気にスンナって!」

 わざとらしく笑ってごまかすクローレンだったが、レキはジッと探るような視線を彼から逸らさなかった。
 その真っ直ぐな視線にクローレンは若干たじろぐような様子を見せる。

「………だからなんでもねぇって」

「ほんとになんでもないの?」

「あぁ」

「……そう、ならいいんだけど」

 レキはまだかなり腑に落ちない思いがあったが、クローレンがなんでもないと言う以上、レキは仕方なくそれ以上の追及をあきらめるほかなかった。
 気になるのは山々だが、無理に聞き出すこともできないだろう。

 再びしばしの沈黙が流れる中、レキがモンスター達のほうへと意識を向けることにすると、その隣でクローレンは小さくフゥと息をついた。


「オレが聞きたかったことは、いつかお前から話してくれんのを待つよ、レクシス」



 ………


 …………!?



 ボソリと呟いたクローレンのその言葉に、レキは心臓が飛び出すくらいに驚くと、衝撃を受けたような表情でクローレンを二度見した。
 あまりにも突然に本名を呼ばれたことと、クローレンの話の展開がまったく掴めないことにレキは盛大に戸惑う。


「な、何をオレから話すって?」

 クローレンの話は飛躍しすぎていてレキにはなんのことだかさっぱり訳がわからなかったため、すかさず彼へと聞き返した。クローレンはまったく本当に考えていることの真意が掴めないから困る。

「もしかして、シーラからなんか聞いた?」

 レキはふと、思い当たったことを口にしてみるがクローレンは大きくかぶりを振ってみせる。

「シーラからは別になんも聞いてねぇよ。そんな時間もなかったしな。……ただこのダンデリオンに来て以来、お前の様子がちょっと変な気がしてさ」

 さっきは一度言うのを躊躇したクローレンだったが、こうなったらやっぱり最後まで言ってみることに決めたようだった。彼はさらに続ける。

「……なーんかお前さ、いつもに増して無謀になってるっつーか、それとも妙に張り切ってるっつーか。この惨状のダンデリオンを見て、なんか思うことがあったんじゃねーかとオレは感じたわけよ。シーラは、あいつの能力でお前のこといろいろ知ってたみたいだけど、オレはそんな力ないからさ。お前が“グランドフォースのレキ”って以外は、お前が何者なのかも今までに何があったかも全然わかんねー。わかんねーからお前の様子がちと気になったわけ」

 クローレンはそこまでを一気に言い終えると、ちらりとレキを見た。
 レキは相変わらず驚きの表情でクローレンを見つめている。
 クローレンはさらに付け加えた。

「まっ! もしもお前が話したくないことだって言うんならオレは別にこれ以上詮索するつもりもねぇし、いつかお前が話してくれる時を待つけどな」

 そこまで言うと、彼はあっさりと前方のモンスターの方へと視線を戻す。
 今までのおしゃべりがモンスターの方にまで聞こえていないかと確認しているようだが、どうやらそんな心配はなかったようだ。

 モンスター達は相変わらずギィギィと話を続けている。
 しかしその数はさっきより少しだけ減っていて、今やモンスターの数は三匹ほどになっていた。
 巡回している骸骨の騎士の姿も今は見えないし、動くとしたらそろそろ頃合いだろう。


「…………」

 レキはしばらく驚きと衝撃でクローレンの顔から目が離せなかった。
 彼に言われたことで色々な複雑な思いがレキの中で波打ち、何から言い出せばいいのかわからなくなる。


「……なんでいきなり本名で呼んだの?」

「ん、シーラの真似」

 レキはどうでもいい質問をしてみると、すかさず答えたクローレンの短い返答に「そう……」とだけ返す。
 こんなことが聞きたいわけじゃなかったが、まだレキは頭の中を整理しきれていなかった。

「……クローレン、ジルカールを出る時もそうだったけど、オレの考えてる事とかいつもと様子が違うとかよく分かるよね。普段はあんまり真面目なこと言わないのに、こっちが構えてない時に突然言い出すから、掴みどころがなくってオレはいつだって困るよ」

 ちょっと不満そうに呟いたレキの言葉に、クローレンはフハッと笑いを噛み殺す。

「だってお前ホントにわかりやすいんだもんよ」

 レキのすねたような言い方が面白かったのか、それともレキがクローレンの言い当てたことをほぼ肯定したのが満足だったのか、彼は愉快そうに微笑む。
 クローレンの笑いによって、真剣な空気は少しだけ薄らいだ。

「いや、ちがうね。それだけじゃないよ。クローレンってたまにすごく鋭いんだ。それって長所かな、短所かな」

「普通に長所だろ」

 笑いながら反論するクローレンにつられて、レキも少し頬を緩めた。

「オレにとっては考えてることが筒抜けで、ちょっと厄介だけどね」

 わずかに笑顔をみせた後で、レキはまた真面目な表情へと戻す。
 そして少しだけ沈黙したところで、やがて言うべきことを決めたかのように再び口を開いた。


「ダンデリオンのことは、ちょっと他人事には思えなかった。……だから少し突っ走っちゃったところがあったと思う。オレにも過去に似たような経験があったから」

 ぽつり、ぽつりとゆっくり呟くレキに、クローレンはまた視線を戻した。
 黙ってレキの続きの言葉を待つ。


「キミに全て話せれば、少しは楽になるのかもしれないけど……オレ自身、まだ昔のことを整理しきれてないんだ。今はまだ、できれば思い出したくないことだし、口にするのは……ちょっと辛いかな。だから今クローレンの質問に答える事はできないんだけど、もう少しだけオレの心が落ち着くのを待ってもらえないかな。いつかキミには聞いてもらいたい」


 レキは自分の正直な気持ちを話した。

 なるべくなら、あのエレメキアでの惨劇の夜のことを思い出したくなかった。
 あれは時々悪夢として見るだけで十分である。
 本当の意味でレキが現実を受け入れられるようになるのには、まだ少しだけ時間がかかるのだろう。

 クローレンはレキの言葉を黙って聞き終えると、ちょっとだけ沈んでしまった様子のレキの頭をわしゃわしゃっと豪快に掻き乱した。


「わかった! お前が話したくなる時までオレは待つよ。悪かったな、変なこと聞いて」

 ニッ!と白い歯を見せながら笑いかけるクローレンの顔を見ると、レキはなんだか心底安心した。同時に、あれこれと詮索しないクローレンのあっさりとした性格に感謝の思いがわき上がる。

「ありがとう、クローレン」

 ホッとするレキにクローレンはもう一度、おうよ!と答えると一言だけ付け加えた。

「もしもお前がいつか話す気になったら、オレはいつでも聞いてやるからな。んで、暗い話になんねーようにオレが明るい突っ込みを入れてやるよ」

 クローレンのこの言葉には、レキもクスクスと笑いがこぼれてしまった。たしかにクローレンにかかればどんな話も深刻にはならないかもしれない。レキは改めて彼の持つ器の広さに尊敬させられた。

「うん、いつか聞いてね。その時は、オレのすごく大切だった親友の話も聞いてもらいたいな」

「おー、なんだって聞いてやるさ。お前が話したいことならな」

 クローレンはまた笑顔をみせる。
 その顔を見つめながら、レキはふと思い至った。

「でもさ、クローレンだってあんまり自分のこと話さないよね」

「んー?」

 レキの指摘にクローレンは「確かに、そう言われればそうかもしれねーな」と今さらながらに気づいたようだった。

 レキはクローレンの名前以外、彼の素性を全く知らない。
 あまりにも知らなすぎることに気づき、お互いびっくりしたようだった。


「ハハッ! 見事に忘れてたぜー。まぁオレはお前が聞くならなんでも話してやるよ」

 そこまで言ったところでクローレンは「あ!」と何かを思いついたようにポンと手を叩く。

「そーだ、どうせなら今度オレの故郷に来ねぇか? そこでいろいろ教えてやるよ。まー、なんもねー田舎町だけど」

「え? クローレンの故郷?」

 思ってもいなかったクローレンの提案にレキは驚く。
 しかしその驚きはすぐにレキの中で嬉しい気持ちへと変化した。
 クローレンのことをもっとよく知りたいという思いはもちろんあったし、彼がどんなところで育ったのかはぜひ見てみたい。

 彼が育った町なのだからきっととてもいいところなのだろう。
 レキが期待を寄せながら想像していると、クローレンはレキの返事が待ちきれないかのようにさらに誘った。

「なぁレキ、来いよ! ここよりも北にある大陸、アルキタのラ・パルクって町がオレの故郷なんだ。ちょっと遠いからすぐには無理かもしれねーけどよ。……お前が来たら町の連中はきっと喜ぶだろーなー。グランドフォースだなんて知ったら、奴ら飛び上がって歓迎するぜ」

 クックックとクローレンは笑いを噛み殺しながら、レキを紹介した時の展開を予想しているようだった。
 しかしその表情はどこか嬉しそうで、なんだか故郷を懐かしんでいるようにも見える。

「いいな、行ってみたいよクローレンの故郷。今度案内してね」

 楽しそうなクローレンの様子にレキまで笑顔になってしまうと、そのままにっこりと返事を返した。
 クローレンは張り切ってドン!と胸を叩いてみせる。

「おう、まかせろ! お前もきっと気に入ると思うぜ」

「うん。楽しみだな」


 二人はニコリと笑顔を交わし合うと、それから同時に前を向いた。
 かなりお喋りが長くなってしまったような気もするが、ふと瓦礫の隙間から前方を窺うとモンスター達のほうもちょうど話が一段落ついたのか、解散しようとしているところだった。
 進むとしたら、この絶好のタイミングの他にはないだろう。


「よっしゃ、ちょーど向こうもバラけたトコみたいだぜ。おいレキ、今がチャンスだ! 行くぞ!」

「オッケー」

 二人は素早くお喋りからダンデリオン潜入の任務へと頭を切り替えると、勢い良く民家の陰から飛び出し、上空のドラゴンにも気をつけながら先程確認した前方のアイテム屋まで音を立てずに駆けた。
 モンスターの監視が減っていたことでそこへは難なく辿り着け、二人は崩壊しつつあるアイテム屋にサッと身を隠す。


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