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第6話:バンズは焼きたて!パン工房ミルフィーユ誕生!
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王都・中央広場。
そこに立つのは、チラシ片手に気合十分な青年。
「よーし、配るか!」
異世界からやってきた転移者・草薙 隼人《くさなぎはやと》。その背中には、妖精フェリィがデザインしたキラキラのチラシがぎっしり。
《魔女っ子バーガー1号店、もうすぐオープン!》
《新設・パン工房ミルフィーユの協力で、バンズは毎朝焼きたて!》
《焼きたてパン&魔法のアイデアで、あなたの心もお腹も満たします!》
「よーっし、いくぞーっ!」
チラシを抱えた元冒険者メイド・ミーナが、軽やかに駆け出す。
「ちょ、ミーナさん、ちょっと待って!?配るの早すぎ!」
「ねえ、この『パン工房ミルフィーユ』ってなに?」
「それ私も聞いてない!」
そのとき、ルミナが満面の笑みで飛び込んできた。
「お待たせー! 営業許可、ばっちり取れたよーっ!」
ルミナが満面の笑みで駆け寄ると、場に安堵の空気が広がった。
「やったー!」とミーナが歓声を上げ、隼人もほっと胸をなでおろす。
クラウスはすっと前に出て、深々と頭を下げた。
「これで正式に営業が可能です。皆様に最高のバーガーをお届けしましょう」
「うれしい~っ! やっとスタートラインに立てた感じだねっ♪」
妖精フェリィがくるくると空を舞い、歓喜の声を上げる。
そのとき、クラウスがちらりと空を見上げてつぶやいた。
「……お嬢様も、そろそろお越しになる頃かと」
そんな中、空に異変が起きる。
「……あれ、なんか空、光ってない?」
ミーナの言葉とともに、夜空にまばゆい魔法陣が出現!
金と虹色に輝く魔法紋が広がり、風とともに鈴の音が鳴り響く。 その光の中心から、ふわりと声が降ってきた。
「おまたせーっ☆」
空から現れたのは、パンケーキのグライダーに乗った、ふわもこエプロン姿の元気少女!
ポンっと降り立つと、周囲がざわついた。
「パンと夢を詰め込んで、今日も焼きたて!パンナ・ミルフィーユ、ただいま参上っ♪」
「これはこれは、パンナ様。わざわざお足を運ばせて頂き、感謝致します」
クラウスが優雅に一礼する。
「やっほーーー!クラウス!ほんと、めっちゃ久しぶり~!」
「さあ!今日は約束どおり、パン工房作りにきたよーっ!」
パンナが魔女っ子バーガー1号店の隣地でにっこり。
「ここでいいかな? 錬成開始!パン工房・ミルフィーユっ!」
地面に広がる魔法陣、巻き上がる光と甘い香り!
現れたのは、煙突からシナモンの香りがただよう可愛らしい工房小屋。
周囲の人々がざわめき、子どもたちは歓声を上げて駆け寄る。
「この工房ね、材料入れると自動でカリふわのバンズが焼き上がるんだよー! チーズ入りもできちゃうよ♪」
「えっ、すごっ! 自動バンズ錬成マシン……!」
胸を張るパンナが続ける。
「しかもこれ、ルミナちゃんのためだけに調整した専用設計なんだから!」
「じゃあさ、パンケーキも焼けるようにしてーっ!」
ルミナが期待に目を輝かせる。
「もちろんっ☆ 魔法のフライパン、出動っ!」
パンナがピンクのフライパンを空へ投げると、光の魔法陣が展開!
「錬成!クルクルポンっ!」
フライパンがくるくる回って工房に着地すると、パンケーキモードが起動!
「じゃじゃーん!ふわとろパンケーキ、作れるようになったよ!」
「さっすがパンちゃん!わたしの好み、完璧っ!」
ルミナが決めポーズ。
「さらに中には魔法スチームオーブン付き!
『サクふわタイム』の魔法刻印で、いつでも絶妙な焼き加減が保てるの!」
「……パンちゃん、完璧すぎる……パンちゃんって、有名人なの?」
隼人が呆気にとられてぽつりと呟く。
ミーナがくすっと笑いながら答える。
「うん、有名。パンナちゃんは、この世界を救った英雄のひとり。トールハンマーの使い手なの」
「ト、トールハンマー!?なんか情報量が多すぎる……」
そのやり取りに、ルミナは唇を尖らせる。
(パンちゃんばっかり注目されてる……)
くやしげにパンの焼ける匂いを嗅ぎつつ、ぱちんと指を鳴らす。
「そうだ! 朝限定『パンケーキモーニングセット』、販売決定よ!」
「メニュー増やすの!?」
「当然でしょ!ほら、パンケーキあるし!」
ルミナは胸を張ってもぐもぐ。
「……んぐんぐ。うん、いくらでもいける……!」
そしてその頃――
広場の端で、ひとりの騎士がチラシを手に取っていた。
甲冑に身を包み、馬を引く青年が、魔女っ子バーガーのロゴを見つめて小さく呟く。
「……姫様に渡しておこう。きっと、こういうの、お好きだからな」
その声は、誰に向けるでもない独り言。
――今日もまた、ひとつ夢に近づいた。
ハンバーガーの香りと、仲間たちの笑顔に包まれて。
少しずつ、だけど確かに、魔女っ子たちの物語が動き出す。
《つづく》
そこに立つのは、チラシ片手に気合十分な青年。
「よーし、配るか!」
異世界からやってきた転移者・草薙 隼人《くさなぎはやと》。その背中には、妖精フェリィがデザインしたキラキラのチラシがぎっしり。
《魔女っ子バーガー1号店、もうすぐオープン!》
《新設・パン工房ミルフィーユの協力で、バンズは毎朝焼きたて!》
《焼きたてパン&魔法のアイデアで、あなたの心もお腹も満たします!》
「よーっし、いくぞーっ!」
チラシを抱えた元冒険者メイド・ミーナが、軽やかに駆け出す。
「ちょ、ミーナさん、ちょっと待って!?配るの早すぎ!」
「ねえ、この『パン工房ミルフィーユ』ってなに?」
「それ私も聞いてない!」
そのとき、ルミナが満面の笑みで飛び込んできた。
「お待たせー! 営業許可、ばっちり取れたよーっ!」
ルミナが満面の笑みで駆け寄ると、場に安堵の空気が広がった。
「やったー!」とミーナが歓声を上げ、隼人もほっと胸をなでおろす。
クラウスはすっと前に出て、深々と頭を下げた。
「これで正式に営業が可能です。皆様に最高のバーガーをお届けしましょう」
「うれしい~っ! やっとスタートラインに立てた感じだねっ♪」
妖精フェリィがくるくると空を舞い、歓喜の声を上げる。
そのとき、クラウスがちらりと空を見上げてつぶやいた。
「……お嬢様も、そろそろお越しになる頃かと」
そんな中、空に異変が起きる。
「……あれ、なんか空、光ってない?」
ミーナの言葉とともに、夜空にまばゆい魔法陣が出現!
金と虹色に輝く魔法紋が広がり、風とともに鈴の音が鳴り響く。 その光の中心から、ふわりと声が降ってきた。
「おまたせーっ☆」
空から現れたのは、パンケーキのグライダーに乗った、ふわもこエプロン姿の元気少女!
ポンっと降り立つと、周囲がざわついた。
「パンと夢を詰め込んで、今日も焼きたて!パンナ・ミルフィーユ、ただいま参上っ♪」
「これはこれは、パンナ様。わざわざお足を運ばせて頂き、感謝致します」
クラウスが優雅に一礼する。
「やっほーーー!クラウス!ほんと、めっちゃ久しぶり~!」
「さあ!今日は約束どおり、パン工房作りにきたよーっ!」
パンナが魔女っ子バーガー1号店の隣地でにっこり。
「ここでいいかな? 錬成開始!パン工房・ミルフィーユっ!」
地面に広がる魔法陣、巻き上がる光と甘い香り!
現れたのは、煙突からシナモンの香りがただよう可愛らしい工房小屋。
周囲の人々がざわめき、子どもたちは歓声を上げて駆け寄る。
「この工房ね、材料入れると自動でカリふわのバンズが焼き上がるんだよー! チーズ入りもできちゃうよ♪」
「えっ、すごっ! 自動バンズ錬成マシン……!」
胸を張るパンナが続ける。
「しかもこれ、ルミナちゃんのためだけに調整した専用設計なんだから!」
「じゃあさ、パンケーキも焼けるようにしてーっ!」
ルミナが期待に目を輝かせる。
「もちろんっ☆ 魔法のフライパン、出動っ!」
パンナがピンクのフライパンを空へ投げると、光の魔法陣が展開!
「錬成!クルクルポンっ!」
フライパンがくるくる回って工房に着地すると、パンケーキモードが起動!
「じゃじゃーん!ふわとろパンケーキ、作れるようになったよ!」
「さっすがパンちゃん!わたしの好み、完璧っ!」
ルミナが決めポーズ。
「さらに中には魔法スチームオーブン付き!
『サクふわタイム』の魔法刻印で、いつでも絶妙な焼き加減が保てるの!」
「……パンちゃん、完璧すぎる……パンちゃんって、有名人なの?」
隼人が呆気にとられてぽつりと呟く。
ミーナがくすっと笑いながら答える。
「うん、有名。パンナちゃんは、この世界を救った英雄のひとり。トールハンマーの使い手なの」
「ト、トールハンマー!?なんか情報量が多すぎる……」
そのやり取りに、ルミナは唇を尖らせる。
(パンちゃんばっかり注目されてる……)
くやしげにパンの焼ける匂いを嗅ぎつつ、ぱちんと指を鳴らす。
「そうだ! 朝限定『パンケーキモーニングセット』、販売決定よ!」
「メニュー増やすの!?」
「当然でしょ!ほら、パンケーキあるし!」
ルミナは胸を張ってもぐもぐ。
「……んぐんぐ。うん、いくらでもいける……!」
そしてその頃――
広場の端で、ひとりの騎士がチラシを手に取っていた。
甲冑に身を包み、馬を引く青年が、魔女っ子バーガーのロゴを見つめて小さく呟く。
「……姫様に渡しておこう。きっと、こういうの、お好きだからな」
その声は、誰に向けるでもない独り言。
――今日もまた、ひとつ夢に近づいた。
ハンバーガーの香りと、仲間たちの笑顔に包まれて。
少しずつ、だけど確かに、魔女っ子たちの物語が動き出す。
《つづく》
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