3 / 88
第一部 ハンター初心者編
第2話 弟子を取る
しおりを挟む
リンゴン、教会の鐘が鳴って目を覚ます。
見上げた天井板は合板では無い一枚板だ。
こういう所が安アパートとの違いを感じさせた。
そして、異世界に来たのだと感じさせる。
「実はシロクさんに折り入って相談したい事があるのです」
相談ってなんだろう。
こっちも大分相談している。
しかも、泊めてもらっているから断りずらい。
聞くだけ聞いてみるか。
「なんですか、教会長様、出来る事ならしますけど」
「アラーナ、フィオレラを孤児院から呼んできてくれ」
教会長の言葉を聞いてアラーナがフィオレラを呼びに部屋を出る。
「この教会は孤児院がありまして。捨てられた子などを預かっております。そこに訳ありの子が一人いまして」
孤児院があるのか定番だ。
訳とはなんだろう。
「どのような子なのです?」
「昔、ある教会の一派が生贄を使い禁忌の実験をやり。神様に神罰を下されスキルと魔力を剥奪された事がありました。それ以来スキル無しや魔力の低い者を差別する風潮が出来た次第です」
この世界は神様が干渉してくるのか神罰は怖いな。
と言っても今のところ禁忌を犯す予定はない。
差別はどの世界でもついて回る問題なのだろう。
神様がいても無くならないとは人間は業が深い。
「その子はスキルや魔力がないと言う事ですか?」
「魔力は五百以上あるのですが……」
「人の平均の十倍以上ですか。すごいですね」
俺の三倍以上だ上には上がいる。
魔力なんて研究しだいでどの様にも利用できそうなのに。
たかがスキルで差別とは。
「スキルは後天的に備わるもので、十才ぐらいになるまでに二つぐらい獲得するのが普通なのです。その子は十五才の成人を迎えても、今だ一つも無いのです。世間一般では忌み子などと呼ばれています」
忌み子と言った時の教会長は悲しげに曇る。
「なにかスキルを獲得するコツのようなものは無いのです?」
「学者によれば魔力の高い者ほど、スキルを獲得しやすいと言われています。発現するスキルの種類は好きな事に係わる事が多いと」
魔力の高さが関係するのであれば十倍もあれば、スキルがあってもいいだろうに。そこに何かありそうだ。
扉をノックする音が聞こえる。
「おや来たようです。入りなさい」
「失礼します。フィオレラです」
フィオレラは青みがかかった髪で、少し不思議な感じがする小柄な女の子だ。
少し病んだ感じがするのは気のせいだろうか。
それと抱擁力、違うな静かな湖面を見ているような感覚がある。
「こちらはゴーレム使いのシロクさんです」
「シロクです。よろしく」
「孤児院は十五才で出て行かないとならない規則でして。相談というのはフィオレラをシロクさんに引き取ってもらいたいのです」
「それはどういった意味で?」
「ひどい扱いをしないのであれば、嫁でも妾でも好きになさってもという意味です」
何言ってるんだ。このおっさん。
怒鳴りたいのを我慢し思わずフィオレラの方を見る。
こちらを探るような目つきで見ている。
「理由を聞いても?」
「まず色々な手前特別扱いはできないので孤児院には置いておけない。客商売をやっているところに雇ってもらうにも風評がこわくて無理です。製造関係の工房も役立つスキルがないと。それと、どこのギルドでも規則でスキルの無い人は登録できません。結婚するしか方法がないのです」
「本人はどう考えているのでしょう」
「差別が無い場所を用意してもらえるなら、どんな場所でもいきます」
すがるような目つきが差別に苦しめられてきた経緯を物語る。
勘も欲しいと言っている気がする。
よし決めた。
「フィオレラまず言っておく。俺は稀人だ。スキルや魔力の無い世界から来たから忌避感はない。だから案内人兼弟子にするどうだろう。差別の無い場所は用意できるよう努力する」
フィオレラはホッとした顔になった。満足行く答えだと良い。
少し頬を赤らめて別の感情が宿っている気がする。
「はい、シロクさんの弟子になりたいです」
教会長も満足気だ。
「よかったですね。フィオレラ」
「はい教会長様」
「最初の仕事だ。孤児院の前で待っているから荷物をまとめてこい。教会長様本日はこれでお暇します」
さてどうする。お荷物と言っては可哀そうだ。
弟子が出来たんだ改めて思うと後輩のようで少し嬉しい。
色々頑張らねば。
まずは二人分の生活費を稼ぐことだ。
建築ギルドで仕事をもらうとして。
それとフィオレラのスキルをなんとかする為に情報収集だ。
「お待たせしました。お師匠様」
手提げ鞄を持ったフィオレラが出てきた。
荷物が少ない。
継ぎの当たった服で少し不安気だ。
俺もあまり先の事は分からない。
教会長と一緒に会った時はもう少しまともな服を着ていた。
買ってやりたいがどうしようもない。
「宿をこれから取る。それから建築ギルドで仕事を探そうと思う。仕事の間はどうする宿で待つ?」
「いいえ。お師匠様と一緒に現場に行き働きたいです」
「よし、そうするか! ところでちょっと相談があるんだ。金があんまり無い。全財産は銀貨九枚と少しだ」
「相場では宿屋は一室銀貨二枚前後です。食費は銀貨一枚あれば一日の二人分で足ります。心配いらないかと」
一リル一円で考えていたが物価が安いのか。
そもそもの想定の変換レートが間違っているのだろう。
銀貨一枚は三千円ぐらいなんだろう。
三倍で考えていくか。
「半日で銀貨五枚稼げるから一日働けば貯金ができる。そういえば弟子の給料ってどうすれば」
「衣食住が保障されれば給料を貰っている弟子なんていません。弟子は副業を何か持ち小遣い稼ぎするのが常識です」
とんでもないブラック企業だなぁ。
ブラックなのはいけない。
「少ないけど、フィオレラには一日銀貨一枚小遣いをやろう。あとで追々増額するとする。異論は認めん」
「ありがとうございます」
「お師匠様、あそこの宿屋にしましょう」
「黒髪亭だな。俺も黒髪だし縁を感じる」
「すいませーん! 今日泊まりたいのですが」
「あいよ。あたいは女将のヘレナだよ。一泊一人二銀貨で食事は夕食と朝食セットで三大銅貨になるよ」
女将さんは少し小太りで頭の三角巾がおばちゃん臭さを演出している。
「ゴーレム使いのシロクです。そっちは弟子のフィオレラです。食事付きで二人分お願いします。部屋は一人部屋二つで」
「鍵だよ。部屋は二階だ」
この宿の名前は稀人が始めたからじゃないだろうな。
「宿の名前は何か由来が、少し気になったもので」
「ああ、それかい先代の女将が稀人の英雄剣士ヤギウのファンでね。ヤギウ様の黒髪にあやかってあの名前にしたんだよ」
「フィオレラ、ヤギウって知ってる」
「ええ。三百年ぐらい前の稀人でバクフ王国を建国した人です」
バクフってそれ幕府じゃないかな。
ヤギウは柳生だなきっと。
ふと壁に目をやると漢字で征夷大将軍 柳生 宗敏と書かれた掛け軸が架かっていた。
「女将さん壁に架かっている掛け軸は?」
「あれは先代のコレクションの一つで、ヤギウが書いたと言われている誰も読めない字のレプリカさ」
柳生さんあんたどれだけ将軍になりたかったの。
こそっとフィオレラに俺が稀人ってことは秘密だと耳打ちする。
わかりましたとフィオレラが小さく肯く。
「女将さん荷物を置いたら、外出して夕方まで帰りません」
「あいよ。教会の夕方の鐘がなる頃に帰ってきておくれ」
建築ギルドは相変わらず汗臭さそうな男達でごった返している。
フィオレラが入るのをためらっていた。
しょうがない一人で行くか。
建築の仕事は今盛況なのか。
唯一のオアシス受付嬢の所に行く。
この人は前に受付してくれた人だ。
「こんにちは。又仕事を貰いにきました。できれば昨日請けた現場がいいです」
「昨日受けた現場はブレンドンさんの所ですね」
親方の名前ブレンドンだったのか。
みんな親方と呼んでいるから聞かなかった。
「たぶんそこだと思います。仕事あります?」
「はいございます。昨日と同じ条件ですが」
「手続きおねがいします」
親方に会うと親方はフィオレラを見て何だこいつはという顔をする。
面倒事を嫌うタイプでなければいいけど。
「親方。弟子のフィオレラです。まだゴーレム使いのスキルは使えません。スキルを覚えるまで根気強く弟子として使っていくつもりです」
「弟子のフィオレラです。今日はよろしくおねがいします」
「おうシロクだったか。スキルを覚えるまで何年掛かるか分からないのに弟子を養うのは大変だな」
「それで、今日は相談がありまして、フィオレラに何か仕事を与えてはもらえませんか。もちろんお金は要りません」
「女ができる仕事というと事務所の掃除あたりだ」
親方良い人だ。俺なら断っていたかもしれない。異世界は人情に厚い人が多いのかな。
「どうだ」
「是非やらせて下さい」
「じゃあ頼むぞ。タダじゃ悪いからシロクの依頼に少し色をつける」
「フィオレラ、親方の指示にしたがってがんばれ。親方、フィオレラのことよろしくおねがいします」
昨日使ったゴーレムがそのままあったので使う。
ゴーレムの仕事は楽しい。
ゴーレムも楽しげだ。
「おつかれ様です親方。フィオレラもおつかれ。さあ帰りましょうか」
報酬は銀貨五枚と大銅貨五枚だった。
ええっと変換レートは三倍だから、五千五百リル掛ける三で、日本円換算にすると一万六千五百円。
まずまずの稼ぎだ。
「今日仕事してみてどうだった」
「ずっと孤児院の他の子が十才から見習いとして、働きに出ているのを見てうらやましく思っていました。でも今日仕事をしてやっと同じ場所に立てた気がします」
「少ないけど、今日の給料は約束の銀貨一枚と現場で働いた分の大銅貨五枚だ」
日本円換算で四千五百円。
アルバイトとしてみれば妥当だろう。
「すごいうれしいです。また明日からがんばれます」
フィオレラは勤勉だし良い子だ。幸せにしてあげたい。
教会長はフィオレラを気に掛けていた。
娘に接する気持ちだったのかもしれない。
俺は初めてできた会社の後輩に向けるような感情で接してやりたいな。
見上げた天井板は合板では無い一枚板だ。
こういう所が安アパートとの違いを感じさせた。
そして、異世界に来たのだと感じさせる。
「実はシロクさんに折り入って相談したい事があるのです」
相談ってなんだろう。
こっちも大分相談している。
しかも、泊めてもらっているから断りずらい。
聞くだけ聞いてみるか。
「なんですか、教会長様、出来る事ならしますけど」
「アラーナ、フィオレラを孤児院から呼んできてくれ」
教会長の言葉を聞いてアラーナがフィオレラを呼びに部屋を出る。
「この教会は孤児院がありまして。捨てられた子などを預かっております。そこに訳ありの子が一人いまして」
孤児院があるのか定番だ。
訳とはなんだろう。
「どのような子なのです?」
「昔、ある教会の一派が生贄を使い禁忌の実験をやり。神様に神罰を下されスキルと魔力を剥奪された事がありました。それ以来スキル無しや魔力の低い者を差別する風潮が出来た次第です」
この世界は神様が干渉してくるのか神罰は怖いな。
と言っても今のところ禁忌を犯す予定はない。
差別はどの世界でもついて回る問題なのだろう。
神様がいても無くならないとは人間は業が深い。
「その子はスキルや魔力がないと言う事ですか?」
「魔力は五百以上あるのですが……」
「人の平均の十倍以上ですか。すごいですね」
俺の三倍以上だ上には上がいる。
魔力なんて研究しだいでどの様にも利用できそうなのに。
たかがスキルで差別とは。
「スキルは後天的に備わるもので、十才ぐらいになるまでに二つぐらい獲得するのが普通なのです。その子は十五才の成人を迎えても、今だ一つも無いのです。世間一般では忌み子などと呼ばれています」
忌み子と言った時の教会長は悲しげに曇る。
「なにかスキルを獲得するコツのようなものは無いのです?」
「学者によれば魔力の高い者ほど、スキルを獲得しやすいと言われています。発現するスキルの種類は好きな事に係わる事が多いと」
魔力の高さが関係するのであれば十倍もあれば、スキルがあってもいいだろうに。そこに何かありそうだ。
扉をノックする音が聞こえる。
「おや来たようです。入りなさい」
「失礼します。フィオレラです」
フィオレラは青みがかかった髪で、少し不思議な感じがする小柄な女の子だ。
少し病んだ感じがするのは気のせいだろうか。
それと抱擁力、違うな静かな湖面を見ているような感覚がある。
「こちらはゴーレム使いのシロクさんです」
「シロクです。よろしく」
「孤児院は十五才で出て行かないとならない規則でして。相談というのはフィオレラをシロクさんに引き取ってもらいたいのです」
「それはどういった意味で?」
「ひどい扱いをしないのであれば、嫁でも妾でも好きになさってもという意味です」
何言ってるんだ。このおっさん。
怒鳴りたいのを我慢し思わずフィオレラの方を見る。
こちらを探るような目つきで見ている。
「理由を聞いても?」
「まず色々な手前特別扱いはできないので孤児院には置いておけない。客商売をやっているところに雇ってもらうにも風評がこわくて無理です。製造関係の工房も役立つスキルがないと。それと、どこのギルドでも規則でスキルの無い人は登録できません。結婚するしか方法がないのです」
「本人はどう考えているのでしょう」
「差別が無い場所を用意してもらえるなら、どんな場所でもいきます」
すがるような目つきが差別に苦しめられてきた経緯を物語る。
勘も欲しいと言っている気がする。
よし決めた。
「フィオレラまず言っておく。俺は稀人だ。スキルや魔力の無い世界から来たから忌避感はない。だから案内人兼弟子にするどうだろう。差別の無い場所は用意できるよう努力する」
フィオレラはホッとした顔になった。満足行く答えだと良い。
少し頬を赤らめて別の感情が宿っている気がする。
「はい、シロクさんの弟子になりたいです」
教会長も満足気だ。
「よかったですね。フィオレラ」
「はい教会長様」
「最初の仕事だ。孤児院の前で待っているから荷物をまとめてこい。教会長様本日はこれでお暇します」
さてどうする。お荷物と言っては可哀そうだ。
弟子が出来たんだ改めて思うと後輩のようで少し嬉しい。
色々頑張らねば。
まずは二人分の生活費を稼ぐことだ。
建築ギルドで仕事をもらうとして。
それとフィオレラのスキルをなんとかする為に情報収集だ。
「お待たせしました。お師匠様」
手提げ鞄を持ったフィオレラが出てきた。
荷物が少ない。
継ぎの当たった服で少し不安気だ。
俺もあまり先の事は分からない。
教会長と一緒に会った時はもう少しまともな服を着ていた。
買ってやりたいがどうしようもない。
「宿をこれから取る。それから建築ギルドで仕事を探そうと思う。仕事の間はどうする宿で待つ?」
「いいえ。お師匠様と一緒に現場に行き働きたいです」
「よし、そうするか! ところでちょっと相談があるんだ。金があんまり無い。全財産は銀貨九枚と少しだ」
「相場では宿屋は一室銀貨二枚前後です。食費は銀貨一枚あれば一日の二人分で足ります。心配いらないかと」
一リル一円で考えていたが物価が安いのか。
そもそもの想定の変換レートが間違っているのだろう。
銀貨一枚は三千円ぐらいなんだろう。
三倍で考えていくか。
「半日で銀貨五枚稼げるから一日働けば貯金ができる。そういえば弟子の給料ってどうすれば」
「衣食住が保障されれば給料を貰っている弟子なんていません。弟子は副業を何か持ち小遣い稼ぎするのが常識です」
とんでもないブラック企業だなぁ。
ブラックなのはいけない。
「少ないけど、フィオレラには一日銀貨一枚小遣いをやろう。あとで追々増額するとする。異論は認めん」
「ありがとうございます」
「お師匠様、あそこの宿屋にしましょう」
「黒髪亭だな。俺も黒髪だし縁を感じる」
「すいませーん! 今日泊まりたいのですが」
「あいよ。あたいは女将のヘレナだよ。一泊一人二銀貨で食事は夕食と朝食セットで三大銅貨になるよ」
女将さんは少し小太りで頭の三角巾がおばちゃん臭さを演出している。
「ゴーレム使いのシロクです。そっちは弟子のフィオレラです。食事付きで二人分お願いします。部屋は一人部屋二つで」
「鍵だよ。部屋は二階だ」
この宿の名前は稀人が始めたからじゃないだろうな。
「宿の名前は何か由来が、少し気になったもので」
「ああ、それかい先代の女将が稀人の英雄剣士ヤギウのファンでね。ヤギウ様の黒髪にあやかってあの名前にしたんだよ」
「フィオレラ、ヤギウって知ってる」
「ええ。三百年ぐらい前の稀人でバクフ王国を建国した人です」
バクフってそれ幕府じゃないかな。
ヤギウは柳生だなきっと。
ふと壁に目をやると漢字で征夷大将軍 柳生 宗敏と書かれた掛け軸が架かっていた。
「女将さん壁に架かっている掛け軸は?」
「あれは先代のコレクションの一つで、ヤギウが書いたと言われている誰も読めない字のレプリカさ」
柳生さんあんたどれだけ将軍になりたかったの。
こそっとフィオレラに俺が稀人ってことは秘密だと耳打ちする。
わかりましたとフィオレラが小さく肯く。
「女将さん荷物を置いたら、外出して夕方まで帰りません」
「あいよ。教会の夕方の鐘がなる頃に帰ってきておくれ」
建築ギルドは相変わらず汗臭さそうな男達でごった返している。
フィオレラが入るのをためらっていた。
しょうがない一人で行くか。
建築の仕事は今盛況なのか。
唯一のオアシス受付嬢の所に行く。
この人は前に受付してくれた人だ。
「こんにちは。又仕事を貰いにきました。できれば昨日請けた現場がいいです」
「昨日受けた現場はブレンドンさんの所ですね」
親方の名前ブレンドンだったのか。
みんな親方と呼んでいるから聞かなかった。
「たぶんそこだと思います。仕事あります?」
「はいございます。昨日と同じ条件ですが」
「手続きおねがいします」
親方に会うと親方はフィオレラを見て何だこいつはという顔をする。
面倒事を嫌うタイプでなければいいけど。
「親方。弟子のフィオレラです。まだゴーレム使いのスキルは使えません。スキルを覚えるまで根気強く弟子として使っていくつもりです」
「弟子のフィオレラです。今日はよろしくおねがいします」
「おうシロクだったか。スキルを覚えるまで何年掛かるか分からないのに弟子を養うのは大変だな」
「それで、今日は相談がありまして、フィオレラに何か仕事を与えてはもらえませんか。もちろんお金は要りません」
「女ができる仕事というと事務所の掃除あたりだ」
親方良い人だ。俺なら断っていたかもしれない。異世界は人情に厚い人が多いのかな。
「どうだ」
「是非やらせて下さい」
「じゃあ頼むぞ。タダじゃ悪いからシロクの依頼に少し色をつける」
「フィオレラ、親方の指示にしたがってがんばれ。親方、フィオレラのことよろしくおねがいします」
昨日使ったゴーレムがそのままあったので使う。
ゴーレムの仕事は楽しい。
ゴーレムも楽しげだ。
「おつかれ様です親方。フィオレラもおつかれ。さあ帰りましょうか」
報酬は銀貨五枚と大銅貨五枚だった。
ええっと変換レートは三倍だから、五千五百リル掛ける三で、日本円換算にすると一万六千五百円。
まずまずの稼ぎだ。
「今日仕事してみてどうだった」
「ずっと孤児院の他の子が十才から見習いとして、働きに出ているのを見てうらやましく思っていました。でも今日仕事をしてやっと同じ場所に立てた気がします」
「少ないけど、今日の給料は約束の銀貨一枚と現場で働いた分の大銅貨五枚だ」
日本円換算で四千五百円。
アルバイトとしてみれば妥当だろう。
「すごいうれしいです。また明日からがんばれます」
フィオレラは勤勉だし良い子だ。幸せにしてあげたい。
教会長はフィオレラを気に掛けていた。
娘に接する気持ちだったのかもしれない。
俺は初めてできた会社の後輩に向けるような感情で接してやりたいな。
12
あなたにおすすめの小説
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ネグレクト少年の拾い食いとヤンデレ少女の餌付け 〜全てはあの子の「離れないで」という懇願で。気づけば僕の方が溺愛していた〜
小鳥遊愚香
恋愛
餌をくれる君に、今度は僕が全部あげる。
土砂降りの雨の日。泥まみれのカレーパンを食べていた僕を拾ったのは、同い年の少女、わたらいさんだった。
空腹の僕に彼女が与えたのは、わずかな餌と、逃げ場のない支配的なまでの優しさ。
亡き兄の遺骨ネックレスを首にかけられ、その影を演じさせられる僕。
ママが愛しているのは僕の中に残る兄の残像だけで、僕自身は一度も愛されたことがなかった。
そんな空っぽの僕を、わたらいさんは歪な優越感とともに餌で満たしていく。
彼女は僕を餌で手懐け、僕は彼女の底なしの孤独を埋めるための生贄になる。
僕は彼女に支配されていた、はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる