ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第二部 成り上がり編

第29話 雨期

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 今日も雨だ。
 外に出たくはないが、雨具を着て職人に会いに行く。
 紹介状と共に貰った地図に書いてある場所にたどり着いた。

 ヘッドリー工房は職人街と呼ばれる地区にある。
 工房の煙突から黒い煙を盛んに噴き上げていた。
 呼び鈴をチリンと鳴らし中に入る。

 商業ギルドからの紹介で来た事を告げ紹介状を渡す。
 出てきた十代前半と思われる人は爪と皮膚の間には黒い油みたいな物がこびり付いていた。
 つなぎの作業着には所々油汚れみたいな物や塗料が染み込んでいる。
 若いなお弟子さんかな。

 親方は手を離せないので代わりにお弟子さんが聞いてくれるらしい。
 変形のスキルを見たいと告げると出来る事を注文されて嬉しかったのか。
 お弟子さんは胸を張って承諾する。



 工房の中で銅のカップを作るところを見せてもらう。
 銅のインゴットを取り出しスキルを発動する。
 銅が溶け、カップの形になって固まった。
 なるほど、変形は溶かし固めるの二段階のイメージでスキルを発動するのか。
 様は鋳物だ。
 うむ参考になった。



 家に戻るとローレッタが台所で楽しそうに作業している。
 野菜を塩で揉んで瓶に積めていた。
 瓶に酒や酢を入れて完成らしい。

「ローレッタ楽しそうだな。何作ってるの」
「漬物だ。田舎の味だ」

 漬物か。日本の漬物はどうかな作れるなら試してみたい。
 浅漬けなら可能だろう。
 調味料が分からないからそこは二人に色々聞かないと出来ない。

 ぬか漬けのぬかは確か米を精米する時に出るものだった筈だ。
 俺の住んでいた地方都市はまだ水田とか点在して米を作っていた。
 無人の精米所があちこちに有る。
 俺も先輩に頼まれて精米した事があるから、ぬかがどんな物かは知っていた。
 米が無いこっちでは難しい。
 代用品とか無いだろうか。
 麦とかで出来ないかな。

 ローレッタに俺の世界の漬物も研究してみて欲しいと頼む。
 頼られるのが嬉しいのようで二つ返事で頷いてくれた。
 研究費用として大銀貨三枚を出す。
 美味しいのが出来たら、商業ギルドにレシピを売ろう。



 三日連続で雨になった。いよいよ雨期に入ったらしい。
 二人をリビングに集める。

「どうやら雨期に入ったらしい。スキルの習得や室内で練習できる事があったら、どんどんやってほしい」
「スキル沢山覚えます」
「筋力強化のアビリティけっぱる。狩にでない間の収入はどなる」
「雨期が終わるまで一日一人当たり大銀貨一枚だそう。少なくてすまないがなにか副業を見つけて各自稼いでほしい」

 フィオレラに昨日やっと覚えた変形のアビリティを教える。
 スキルの練習して魔力回復の間の時間が勿体無いので道場に行く。



 道場にはあれから暇を見つけてはフィオレラと通っている。
 素振りにはだいぶ慣れた。
 強くなった気はしないが。

 今日は以外と人が多い。
 雨の日だからハンターが多いのかな。



「こんにちは師範、実は得物を槍から杖に変えまして。どうしようか迷ったんですが思い切って杖術に切り替えたいと思います」
「うちの道場は警備兵も通っている。杖術も教えているから問題はないが、得物はあまり頻繁に変えない方がいいぞ」
「これからはずっと杖を使っていくと思いますからお願いします」

 基本の型を教わる。

「師範、何かすぐ強くなれる必殺技とかないです?」
「よし素振りばかりじゃ飽きるだろうから良い物を見せてやる付いて来い」



 木の人形の的がある所に連れて来られる。

「一生懸命努力すればスキルを覚えられる。特別に見せてやろう」
「はい、よろしくおねがいします」

 おおっ言ってみるもんだ。アビリティを増やすチャンスだ。

「【筋力強化】とりゃ」

 木の人形の腕が木槍の打ち降ろしで砕ける。
 なんだ筋力強化かそれはもう使える。一応褒めておく。

「すごいです師範、筋力強化はどれくらいの人が使えるのです?」
「筋力強化のスキルは応用が利く。二流以上なら使えないと話にならない」

 これは筋力強化が使える事は黙っていた方がいいな。

「今日は後二つ見せてやる。【貫通】せいやっ」

 木の槍が人形の頭を貫いている。
 魔力でドリルを作って貫通させるのか。
 これで一つ増えた。

「このスキルはもしかして矢とかにも使えます?」
「矢でも剣の突きでも使えるぞ」

 良い事を聞いた。ローレッタに後で覚えさせよう。

「次は【強打】そりゃ」

 人形のもう一方の腕が取れた。
 このスキルは重力を操っている。
 俺には無理だ。

「このスキルはメイスなど鈍器で殴る時に使うと絶大な威力を発揮する」
「ありがとうございました。俺もこのようなスキルが覚えられるように努力します」

 魔力が回復する時間になったので家に戻る事にする。



 家に戻るとローレッタが道具でゴリゴリやっていた。
 あの道具は時代劇で見たことある。
 確か薬研やげんだったか。
 医者が薬を作るのに使う奴だ。

「ローレッタそれどうしたんだ」
「おかえりまれ、さっそく副業だ。近所のばっちゃが薬師ギルドに伝手があって仕事こば貰った」
「ちなみに幾らだ」
「一日で大体。大銅貨五枚だ」
「安い。主婦の副業だからそんな物か」
「これ筋力強化の訓練にちょんどいんだ。今始めで一時間ぐらいだんずばって半日分できてら」
「おう、がんばれ」
「えい、今は木の根だばって。魔獣の角や骨なんかだと一日銀貨三枚ぐらい貰えるった」



 フィオレラは何か副業見つけたかな。フィオレラの部屋をノックする。

「フィオレラ、今いい?」
「どうぞ」

 フィオレラの部屋に入った。
 女の子の部屋に入る時はいつもドキドキする。
 へたれだからしょうがないか。

「フィオレラは副業なにか見つかった?」
「スキル覚える合間に考えたのですが、これといって思いつきませんどうしましょう」
「俺のほうでも何か考えておく。今は曇りになっている。気分転換に馬ゴーレムでも習いに行く?」
「はい、ご一緒します」



 デリックさんの所に行く。

「こんにちは、今日はもう一人連れてきました」
「はじめまして、弟子のフィオレラです」
「デリックだ。使ってない馬ゴーレムがあるからそれを使うからちょっと待て」

 デリックさんが馬ゴーレム三頭を同時に操って連れてくる。
 すごい三頭同時なんて達人だ。

「よし今からゆっくり歩かせるから動きを良く見るんだ」

 馬ゴーレムを一頭ゆっくり歩かせる。
 じっくり観察するが難しい。
 三十分程観察する。

「そろそろ、やってみろ」
「【ゴーレム操作】うわ難しいな想像以上だ」

 フィオレラの方を見る。ぎこちないがなんとか歩いている。

「嬢ちゃんは筋が良いねえ。鍛えがいがありそうだ」
「フィオレラ上手いな。コツとかあるの?」
「ダンスのステップだと思えば良いのです」
「え、フィオレラはダンス踊れるの」
「はい、教会長が貴族の四男だということで踊り方を知っていて教えてもらいました」

 そうか、教会長はフィオレラを裕福な家に嫁がせるつもりだったのかも。
 しかし、ダンスねぇ。全くの素人には馬の歩きは無理だ。
 しょうがないゆっくり覚えよう。
 しばらく四苦八苦する。
 良い時間になったので家に帰った。
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