ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

文字の大きさ
32 / 88
第二部 成り上がり編

第31話 真偽判定

しおりを挟む
 フィオレラにいつもゴリゴリやってるローレッタが見えないから疑問に思い聞くと、弓場ゆみばを見つけてそこに行っていると聞いた。
 投擲の練習もできる施設らしい。
 ローレッタは前向きで行動力がある。

「師匠、誰か来たみたいですよ」

 ドアを開けると男の子が立っていた。
 見た事がある。
 どこだっけ。
 そうだ、孤児院だ。
 男の子から教会長が呼んでいると聞かされた。
 伺いますと伝言を頼み駄賃の銀貨一枚を渡す。
 男の子はにっこり笑うと元気に駆け出して行った。
 外の天候は曇り空だ。
 雨が降っても良い様に雨具を持ち教会に向かう。



 教会に行くと通された部屋には教会長と見知らぬ女性がいた。
 ほのかに香水の匂いがする。
 三十代と思われる女性はちょっと豪華な神官服を着て印象はスーツが似合いそうな出来るキャリアウーマンみたいな感じだ。

「教会長お呼びだそうで」
「こちらは真偽官のカミラ様です」

 カミラを紹介する教会長は少し緊張の色が見える。
 国に仕えてる真偽官はエリートだと聞いた。
 教会でもそうみたいだ。



「始めまして、ゴーレム使いのシロクです」
「カミラだ。なんでゴーレム使いが真偽官に用事があるのかな。非常に興味深い」

 笑っているが、目の奥が笑ってない気がする。

「【真偽判定】【スキルの使用を何故見たい】」

 スキルを使用する時の魔力の動きとイメージが分かったぞ。

「スキルの研究をしてましてスキル獲得の条件を探る為見たいのです」
「真実だな。スキルの研究とは学者にでも成りたいのか。これも一応聞いておくか。【真偽判定】【教会に敵対する意志はあるか】」
 何か疑われた。気になる。でも質問したら、やぶ蛇になりそうだ。

「ありません」
「真実だな。どうする教会長に言われた十分にはまだ大分ある」



「スキル獲得に繋がったと思われる経験について教えて下さい」

 一応スキル研究者の建前として聞いておくとするか。

「私は成人した時に尋問官になってな。尋問官というのは真偽官の下働きで重要でない案件を担当する」

 尋問官は警察官と裁判官が一緒になったような役職なのかな。

「スキルを使わないで嘘を見抜くという事ですか?」
「そうだ。表情や喋り方などから嘘を判断する。それを十年ほど続けていたら、真偽判定のスキルを授かった」
「なるほど、趣味や仕事に関したスキルを覚えやすいのに当てはまります」
「参考になったか。では行くぞなかなか忙しい身でな。失礼する」

 忙しいのか。
 確かに嘘が見抜けたら、便利な場面はいくらでもある。

「教会長、謝礼はいかほど用意すればいいですか?」
「そうですね。金貨二枚ぐらいが適当です」

 十分で六十万円以上か高い。
 待ち時間を入れて一時間でも良い値段だ。

「日頃の感謝も入れて金貨三枚払います。また何かあればお願いします」



 教会の外に出ると雨が降り出していた。
 雨具を着込み足早に家へ戻る。
 行き交う人々はカッパの雨具を着込んでいた。

 傘を見たことがないとふと気づく。
 傘作れないかな。
 竹があれば作れそうだ。
 金属でも代用できるか。
 開閉できる傘を作りたいが、仕組みが思い出せない。
 傘を分解した事はないな。
 商売の種があるのに形にできないのが悔しい。



 フィオレラに真偽判定のやり方が分かった事を告げる。
 水筒を作る手を止め興味深げにこちらに来た。

「実際にやってみるぞ【フィオレラは十五才か】」
「はい十五才です」

 もの凄い頭痛が襲って来た。
 駄目だこのアビリティは出来ない。
 心配そうなフィオレラに大丈夫な事を伝え、頭痛の原因を説明した。
 真偽判定は罪状確認の上位スキルとも言えるぐらい色々な情報を集める。
 魔力の揺らぎはもちろんの事、脳波、心拍数、汗、筋肉の動きなど全身の状態を探った。
 情報が多すぎてとても脳が処理できないと言うと、フィオレラは一度やってみたいらしい。
 俺は頭痛に襲われたが、フィオレラはどうだろう。
 異常があったら、すぐやめるよう念を押しやり方を教える。

「やってみます【師匠に好きな人はいますか】」
「今はいない」
「これはきついですね。でも耐えれます」

 さすがチートこんな所にも差が出たか。
 身体に悪そうだ。
 やるなと警告する。



 傘の事が悔しくてフィオレラに愚痴を溢すと、開いたままで良いのではないかと言われた。
 俺としてはそれでは納得できない。
 何か良い方法が分かるまで封印だ。
 さて魔力探知の訓練をしよう。



 しばらく経ってローレッタが帰ってきた。
 弓場ゆみばの感想を聞く。
 筋力強化して強弓引いたら、的壊して怒られたと少しシュンとした様子で話す。
 練習が出来ないのは問題がある。
 前使ってた子供用弓で練習するよう提案。
 しばらくはそっちでやってみると納得していた。
 投げナイフはだいぶ良い感じになったと、かなり自信がある様子。

「投げナイフも筋力強化して使ったら、凄い威力が出そうだ」
「的ば壊しそなんで実戦でしか使えませんけど」



「フィオレラたまにはローレッタにスキル鑑定掛けてやってくれ。まだ筋力強化は覚えないと思うがフィオレラの例もあるし」
「はい魔力は問題ないので毎日掛けます」

 今の問題はフィオレラの副業と新しいゴーレムのアイデアだ。
 今の副業でも金銭的にはローレッタの八十倍は稼いでいるから問題はないけど。
 スキル訓練だけではさすがに飽きる。
 うーん新しいゴーレムはお金を貯めてミスリルゴーレムか。
 使いこなせない前提のトレントゴーレムか。
 それとも全く新しいゴーレムか。
 非常に悩む。



 副業は何がしたいかフィオレラに聞いてみるか。

「フィオレラ副業は何がやりたい?」
「そうですね。スキルの多さを生かす仕事か。物を作る仕事が良いです」

 スキルの多さか。スキルコピー屋ならぴったりだな。覆面をさせてやらせるか。駄目だな後をつけられそうだ。
 物を作るか。大々的にやると職人から文句がきそう。
 数作っても問題ないのは考えつくのはピーラーぐらいだ。
 ピーラーは会社で仕事を受けて中国の企業に丸投げしていた。
 管理やってる先輩から薀蓄うんちくを散々聞いたので作れるとは思う。
 しかし、安い仕事で張り合いは無いだろう。権利料も高く望めそうにない。

「今はまだ思いつかないが希望に添える物を何か考えるよ」

 悩みは尽きない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...