90 / 164
第15章 ベンチのドラゴン
第90話 国民候補
しおりを挟む
このベンチに居ると色々な人が話し掛けて来る。
大概は一度きりの見知らぬ顔なんだが、中には顔見知りもいて少しばつの悪い話も聞けたりする。
今日は謎の女キャラナだな。
「はぁー、やってられんのだ」
ため息なんかついて、どうしたんだ。
「私にスパイなんてどだい無理。本家もどうかしている」
今日はスパイ物か。
おじさんに聞かしてみろ。
「万能薬が漏れたという噂の出所を探れだなんて」
俺もその噂は聞いたが出所は知らないな。
「だいたい、魔石をポーションにするなんてすぐに思いつく事なのよ」
やっぱり、魔石ポーションは万能薬だったか。
こんな時に余計な男が来やがった。
なんでダッセンはこう余計な事に首を突っ込みそうになるのかな。
「こんにちは、美しいお嬢さん」
「お嬢さんなんて言われるほどではないのだ。ちょうどいい。学園の職員だったね。万能薬についてなにか噂を知らないか」
「いえ、暗部なんて知りませんよ」
おいおい、惚け方が下手すぎだろう。
「私の聞いた噂では確かに暗部が盗みだしたとなっていた。その噂の事だよね」
「そうそう、何でも恐い人達だとか。私は会った事はありませんが」
「噂の出所は誰なんだか知っているか」
「ああ、それなら知っています。同僚の職員が食堂で、亡国の姫の噂をしていたのですよ。隣席ではカンニングの方法は万能薬だと自信満々に言い放っていたのです。俺がそれを合成して話をでっちあげたのですよ」
お前か。お前なのか。
「それじゃ、全くのでたらめじゃないか」
「いやそれがですね、お嬢さん。ここだけの話。瓢箪から駒っていうか本当らしいですよ」
おいおい。口止めしたはずだ。
キャラナを見つめる顔が恋した男の顔だ。
やばい、暴露される。
「ちょっと、待ったぁー」
俺は文字を出すようにティに命令した。
「何っ、この文字」
「ドラゴンテイマーの子がいるでしょ。その子の師匠が感覚共有しているらしいですよ」
「そんな技が」
「仮にだよ。君がメモを落とした時に、魔石の液体化を盗んでしまったらどうなる?」
「なぜあのメモが魔石の液体化だと知っているのだ」
墓穴を掘ってしまった。
いやまだ逆転の目はあるはずだ。
「どうなるのか?」
「私が処分されるのだ」
そうだ。前にそんな事を言ってたな。
「お嬢さん、事情は分かりませんが、一緒に逃げましょう」
「お前は黙っていろ。話がややこしくなる。全員が幸せになる方法があります」
「どんな方法かな」
「それは、噂はデマだった。秘密の漏洩はなかったという事だ」
「無理だ。絶対ばれる」
「ある一族ってのはどうせ貴族だろう。こっちは一国の暗部が丸ごと味方だ。守ってやれる」
「話が本当なら、それは確かに対抗できる」
「いざとなれば、ミニアが建国する国へ逃してやっても良い」
「俺も一緒に行ってあげるから」
ダッセンよ何時から国民にするって事になったんだ。
「保証がほしい」
保証ねえ。どうしたら良いのか。
そうだ。
魔法を一つもらったのだからお返ししないとな。
「この魔法で液体化した魔石が元に戻せる。
ソクチス・モチキニソろテチカイスガヌワワムレ・
ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・
ニミカ・ニレ・
モチキニソ・けモセレ・
ハラスゆニほワレニねヌワワレニれれよが・
モチキニソろテチカイスガニムほモチキニソろテチカイスガニムホリニタナニシレ・む・
モセほモチキニソろモチノイゆモチキニソろテチカイスネトニツイラハゆモチキニソろテチカイスよネニモチキイコチリリよレ・
モチキニソろカスチミトゆモセよレ・む」
「待って、今メモを取るから。魔法ってつい忘れるのだ」
キャラナはメモを取り始めた。
「試しても良いか」
「良いぞ」
キャラナはポーション瓶を取り出すとメモを見ながら魔法を唱え始めた。
ポーション瓶の蓋が弾け球状の魔石が現れる。
「本当に出来た」
「これの有用性は分かるだろう。Fランク魔石二個がCランク魔石になる」
「これさえあれば、本家に感づかれた時に、この功績で工作が出来る」
「納得してくれたか」
「もしもの時は頼むよ」
「任された」
「俺は、俺はどうなるの。一緒に連れてってくれるよね」
「しょうがない。もしもの時はダッセンも連れてってやるよ」
ミニアが建国するときの国民候補が二人できた。
「ところで、師匠さんはどんな方なのだ」
「姿は異形だな。魔力は53万だ。空を飛ぶ事もできる」
「そうなのか、苦労したのだな」
「あっさり受け入れているけど俺は騙されないぞ。異形ってのは良いとして。53万だぁ、それは盛りすぎだろう。女の子前だからって良い格好するなよ。空なんて飛べないだろう」
「空ならミニアだって飛んだ事がある」
「本当、本当なのか。くそう、なぜか負けた気分だ。なんか悔しい」
「二人は国民候補の第一号と第二号だから、後で空の旅に連れてってやるよ」
「楽しみなのだ」
「いいなぁ、女の子と二人で空の旅」
ダッセンが空想に浸り始めた。
この二人をミニアの国に連れて行く時は正体をばらそう、何となくそう思った。
「こんにちは」
迎えに来たミニアが言った。
「こんにちは」
「お前かよ」
「ミニア、よろこべ。この二人が国民候補の第一号と第二号だ」
「よろしくなのだ。国王様」
「俺は陛下なんて絶対に呼ばないぞ」
「下僕の癖に生意気だけど、特別に許す。道化師枠よ」
「えっ、俺の役職、道化師なの」
笑い声が校舎にこだました。
平和な日々だ。
キャラナとダッセンの憂いは完全に晴れたな。
俺って悩み事相談係じゃないんだけどな
また、誰か悩みを持ってきそうな気がする。
大概は一度きりの見知らぬ顔なんだが、中には顔見知りもいて少しばつの悪い話も聞けたりする。
今日は謎の女キャラナだな。
「はぁー、やってられんのだ」
ため息なんかついて、どうしたんだ。
「私にスパイなんてどだい無理。本家もどうかしている」
今日はスパイ物か。
おじさんに聞かしてみろ。
「万能薬が漏れたという噂の出所を探れだなんて」
俺もその噂は聞いたが出所は知らないな。
「だいたい、魔石をポーションにするなんてすぐに思いつく事なのよ」
やっぱり、魔石ポーションは万能薬だったか。
こんな時に余計な男が来やがった。
なんでダッセンはこう余計な事に首を突っ込みそうになるのかな。
「こんにちは、美しいお嬢さん」
「お嬢さんなんて言われるほどではないのだ。ちょうどいい。学園の職員だったね。万能薬についてなにか噂を知らないか」
「いえ、暗部なんて知りませんよ」
おいおい、惚け方が下手すぎだろう。
「私の聞いた噂では確かに暗部が盗みだしたとなっていた。その噂の事だよね」
「そうそう、何でも恐い人達だとか。私は会った事はありませんが」
「噂の出所は誰なんだか知っているか」
「ああ、それなら知っています。同僚の職員が食堂で、亡国の姫の噂をしていたのですよ。隣席ではカンニングの方法は万能薬だと自信満々に言い放っていたのです。俺がそれを合成して話をでっちあげたのですよ」
お前か。お前なのか。
「それじゃ、全くのでたらめじゃないか」
「いやそれがですね、お嬢さん。ここだけの話。瓢箪から駒っていうか本当らしいですよ」
おいおい。口止めしたはずだ。
キャラナを見つめる顔が恋した男の顔だ。
やばい、暴露される。
「ちょっと、待ったぁー」
俺は文字を出すようにティに命令した。
「何っ、この文字」
「ドラゴンテイマーの子がいるでしょ。その子の師匠が感覚共有しているらしいですよ」
「そんな技が」
「仮にだよ。君がメモを落とした時に、魔石の液体化を盗んでしまったらどうなる?」
「なぜあのメモが魔石の液体化だと知っているのだ」
墓穴を掘ってしまった。
いやまだ逆転の目はあるはずだ。
「どうなるのか?」
「私が処分されるのだ」
そうだ。前にそんな事を言ってたな。
「お嬢さん、事情は分かりませんが、一緒に逃げましょう」
「お前は黙っていろ。話がややこしくなる。全員が幸せになる方法があります」
「どんな方法かな」
「それは、噂はデマだった。秘密の漏洩はなかったという事だ」
「無理だ。絶対ばれる」
「ある一族ってのはどうせ貴族だろう。こっちは一国の暗部が丸ごと味方だ。守ってやれる」
「話が本当なら、それは確かに対抗できる」
「いざとなれば、ミニアが建国する国へ逃してやっても良い」
「俺も一緒に行ってあげるから」
ダッセンよ何時から国民にするって事になったんだ。
「保証がほしい」
保証ねえ。どうしたら良いのか。
そうだ。
魔法を一つもらったのだからお返ししないとな。
「この魔法で液体化した魔石が元に戻せる。
ソクチス・モチキニソろテチカイスガヌワワムレ・
ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・
ニミカ・ニレ・
モチキニソ・けモセレ・
ハラスゆニほワレニねヌワワレニれれよが・
モチキニソろテチカイスガニムほモチキニソろテチカイスガニムホリニタナニシレ・む・
モセほモチキニソろモチノイゆモチキニソろテチカイスネトニツイラハゆモチキニソろテチカイスよネニモチキイコチリリよレ・
モチキニソろカスチミトゆモセよレ・む」
「待って、今メモを取るから。魔法ってつい忘れるのだ」
キャラナはメモを取り始めた。
「試しても良いか」
「良いぞ」
キャラナはポーション瓶を取り出すとメモを見ながら魔法を唱え始めた。
ポーション瓶の蓋が弾け球状の魔石が現れる。
「本当に出来た」
「これの有用性は分かるだろう。Fランク魔石二個がCランク魔石になる」
「これさえあれば、本家に感づかれた時に、この功績で工作が出来る」
「納得してくれたか」
「もしもの時は頼むよ」
「任された」
「俺は、俺はどうなるの。一緒に連れてってくれるよね」
「しょうがない。もしもの時はダッセンも連れてってやるよ」
ミニアが建国するときの国民候補が二人できた。
「ところで、師匠さんはどんな方なのだ」
「姿は異形だな。魔力は53万だ。空を飛ぶ事もできる」
「そうなのか、苦労したのだな」
「あっさり受け入れているけど俺は騙されないぞ。異形ってのは良いとして。53万だぁ、それは盛りすぎだろう。女の子前だからって良い格好するなよ。空なんて飛べないだろう」
「空ならミニアだって飛んだ事がある」
「本当、本当なのか。くそう、なぜか負けた気分だ。なんか悔しい」
「二人は国民候補の第一号と第二号だから、後で空の旅に連れてってやるよ」
「楽しみなのだ」
「いいなぁ、女の子と二人で空の旅」
ダッセンが空想に浸り始めた。
この二人をミニアの国に連れて行く時は正体をばらそう、何となくそう思った。
「こんにちは」
迎えに来たミニアが言った。
「こんにちは」
「お前かよ」
「ミニア、よろこべ。この二人が国民候補の第一号と第二号だ」
「よろしくなのだ。国王様」
「俺は陛下なんて絶対に呼ばないぞ」
「下僕の癖に生意気だけど、特別に許す。道化師枠よ」
「えっ、俺の役職、道化師なの」
笑い声が校舎にこだました。
平和な日々だ。
キャラナとダッセンの憂いは完全に晴れたな。
俺って悩み事相談係じゃないんだけどな
また、誰か悩みを持ってきそうな気がする。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる