転生ドラゴンの魔法使い~魔法はガチでプログラムだった~

喰寝丸太

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第21章 助手のドラゴン

第121話 呪文効率学

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 今日もミニアの講義に付き合う。
 一週間は同じ内容だから、聞いていて非常に飽きる。
 週が変わると内容が変わる。
 なんか面白い事ないかな。
 教室の部屋のドアが少し開いていてそこに誰か居る。
 ホラーか。
 いや、この世界は幽霊のたぐいは居ないはず。
 俺はドアの隙間の死角からそおっと近づいた。
 うん、まだいるな。
 ドア越しに息遣いきづかいを感じる。

「わっ」

 俺が脅かすとドアが大きく開けられ一人の男が転がり込んできた。

「いきなり、何をするんだ。驚いたじゃないか」
「隠れるように講義を見ていたお前が悪い」

「そこっ、うるさい。今、授業中」

 ミニアからお叱りの言葉を頂いてしまった。
 男に仕草で外に出るよう伝える。
 男と一緒に廊下に出ると、堰を切った様に喋り始めた。

「ふん、愚民には分からないだろうが、この天才ジャスガ様が直々に足を運んでやったのだ。嬉しく思うが良い。呪文翻訳学、大層な名前が付いているが、大した事が無い。最先端の研究と言えば、私がやっている呪文効率学が誰しも頭に浮かぶだろう。どうだね、呪文翻訳学など辞めて、その知識を呪文効率学に生かしてみないか。ミニア君にもそう伝えておきたまえ」

 えーと、端的に言えば俺は凄い下につけと言いに来たのかな。
 ところで呪文効率学ってなんだ。
 聞いてみるか。

「呪文効率学って何だ」
「ふん、無知な人間にも分かり易く説明してやろう。呪文効率学とは魔法の呪文を如何いかに短くするか追求する学問なのだよ」
「それで研究は進んだのか」
「そ、それは。鋭意努力中だ」

 うろたえっぷりが面白い。
 表情に出やすい奴だな。

「呪文の中に『モセ』てっのが何度も出て来るだろう。それを『モ』に変えてみろよ」
「そっそれは。禁忌に踏み込んでいるのではないか」
「そんなの気にしたら呪文は短くならんだろう。作法にのっとっていればプログラムは怒らないさ」
「ふん、さも分かってますという事を言いやがって。良いだろう、ミニア君に伝えておきたまえ。教授になるのは僕の方が先だと」

 そう言うとジャスガは去って行った。

 呪文効率学に興味があったのでダッセンの所に行った。

「よう、ダッセン。呪文効率学について教えろよ」
「気安いな。言っとくが。ミニアには雇われているが、お前には雇われていない」
「俺はミニアの師匠だぞ」
「くそう、権威には勝てないのか。何が知りたい?」
「呪文効率学について学生が知っている程度の事で良い」
「呪文効率学は呪文学の一部でミニアがやっている呪文翻訳学と扱いは一緒だな」
「人気はあるのか」
「最初の一週はかなり人数を集めるが、その後は閑古鳥かんこどりだな」
「なんでだ」
「詠唱が短い方が何かと有利なのは分かるだろ。でも講義の内容が酷い。一番簡単な呪文を教えて、これが究極ときたものだ」

 余計な事を教えたかな。
 でも人気の寿命が一週間延びただけだろう。

「面白そうな学問だが、講師があれじゃな」
「講師のジャスガには気をつけろ。黒い噂がある」
「へぇ、表情に感情が出やすい奴だと思ったんだがな」
「噂では、奴はカンニング入学らしい。でもその手口が判明してない」
「ほう、少し興味が出てきたな」
「学園の卒業も講師の試験もそれで乗り切ったという、もっぱらの噂だ」

 俺はミニアの所に戻ると、講義はちょうど終わった所だった。

「ミニア、呪文の短縮を講義に組み込んだらいいんじゃないか」
「どういうふうに」
「たとえば、方向のデータを示す『ラスコニカ』という魔法語あるよな。それを『ラ』に変えるんだ。かなりの呪文短縮になるだろ」
「そのネタは講義するのにはもったいない。論文に書く」
「それに少し不思議に思っている事がある。ライブラリが無い」

「ライブラリって?」
「この場合は自分で作った呪文を簡単に呼び出す方法だな。何百文字の呪文がたった一つの言葉で呼び出せる」
「それがあれば詠唱って意味無しになるんじゃないの」
「だけどやり方が分からない。総当りで念じると何日かかるか分からない」

「それなら、番人に聞けば良いよ」
「番人って誰だ?」
「苦戦したゴーレムが居たじゃないあれが番人よ」
「もしかして、アンチマジックの魔法の入手先って番人なのか」
「そうよ」
「これは大発見だな」
「でも代償がいるの。私の魔力を捧げないといけないの。知りたい情報量によって捧げる魔力の大きさは変わるわ」

 パケット通信かよ。
 思わず心の中で叫んだ。
 俺の魔力が使えれば、情報引き出しまくりなんだが。
 ミニアが言い出さないところから無理なんだろうな。
 これは是非とも番人に会わないと。

「よし、会いに行こう」
「今は駄目よ。一週間で講義内容が変わるから。その合間に休みがある。その時にね」

 くそう、週末が待ち遠しいぜ。
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