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第23章 講師のドラゴン

第136話 楽園

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「建国クラブを始めるよ」

 ミニアが今回は司会を務める。

「一言いいか。気づいていると思うが、ここにいる二人が建国クラブに加入する」
「キャラナなのだ。ポーションの事ならお任せなのだ」
「ヴィナです。面白い魔法があったら私の所に持ってくるように」
「よろしく頼む」

 俺は頭を下げた。

「クラブの人員も増えたし、新しい事を始めたい。何かないか」

 ミニアが偉そうにそう言った。

「国を作るには土地がないと始まらないげすな」
「その通り。諸君どこかあてはあるかね」
「そんなの戦ってぶんどれば良い」
「却下。そういうのは後々に禍根を残す」

「はい」
「セラリーナ君なんだね」
「おとぎ話を聞いた事があるの。絶壁とも言える山を登った先に楽園があるんだって」
「ミニア、面白そうだからそれにしよう」
「うん、師匠そうする。次回は楽園に遠征する事にする。解散」

 俺はセラリーナが言った楽園の資料を図書室で探し始めた。
 それはすぐに見つかった。
 本のタイトルは楽園冒険記。

 冒険家が苦難の末、楽園を見つけるというものだ。
 これ、フィクションだよな。
 場所についての記述はない。
 どうやって調べよう。

 生憎と未知の場所を冒険している人間に心当たりはない。
 タルコットあたりは何か知ってそうだな。

 俺は伝言魔法で会話を始めた。

「ホムンだ。楽園冒険記について何か知っている事があれば教えてほしい」
「一昔前に流行った小説ですな。噂では楽園は実在するとか。眉唾ですな」
「分かった。ありがと」

 空振りか。
 あと知ってそうなのはザンダリルぐらいだな。
 伝言魔法で会話を始める

「ホムンだよ。久しぶり」

 返答がない。
 そうだ、ザンダリルには魔法名教えてなかった。
 それどころかホムンの名前すら知らない。

「先ほどは失礼。ミニアの師匠のホムンだ。魔法名はテニツチスシだ。返答よろしく」
「びっくりしたよ。いたずらかと思った」
「いきなりだが。楽園冒険記に書いてある楽園の場所に心当たりはないか」
「色んな所に行ったけど、該当する場所に心当たりはない」
「ありがとよ」

 うん、行き詰った。
 秘境を旅する人間なんて、知り合いには居ない。
 俺はゴーレムを街中に行かせた。
 行き詰った時は気分転換するに限る。

 街では子供たちが元気に遊んでいた。

「知ってた。オークってグルメなんだってさ。美味い物しか食べないらしいぜ。だからオークの肉は舌がとろけるんだって」
「ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・
モチキニソ・けモセレ・
モセほコナカカラミろモチノイゆヌよレ・
テクニリイゆヌよが・
ニハゆカラナソクゆモセよほほヌよが・
トセイチノゆふへぇーふよレ・む・む・む」

 ボタンが空中に現れ、子供はそれを押しまくる。
 へぇーの声があたりに響いた。
 さっきの魔法のイメージはこんなだ。

void main(void)
{
 MAGIC *mp; /*魔法の定義*/
 mp=button_make(1); /*ボタン生成*/
 while(1){
  if(touch(mp)==1){ /*ボタンに触った*/
   speak("へぇー"); /*音声を流す*/
  }
 }
}

 これは俺が子供に教えてやった魔法だ。
 使ってくれているんだな。

「ドラゴンの雌は卵を産む場所を求めて各地を放浪するんだって」

 またもや響くへぇーの声。
 そうか、ドラゴンの雌か。
 思いつかなかった。
 ウィッチなら楽園の情報を持っているに違いない。
 駄目でもスネイルがいる。
 さっそく伝言魔法で会話する事にした。

「ウィザードだ。秘境の情報を教えてくれ」
「いいわよ。どんなのがいい」
「ドラゴンが居なくて、人が来ない所だ。山に囲まれた場所らしい」
「知っているわよ。獲物があまりにも少ないので卵を産む候補地から外したけど、そういう場所があるわ」

 詳しい場所を聞いて、記憶した。

 建国クラブのメンバーに場所が見つかったと伝言魔法する。
 ミニアから週末にそこへ出かけましょうとの返信があった。
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