転生ドラゴンの魔法使い~魔法はガチでプログラムだった~

喰寝丸太

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第24章 勧誘のドラゴン

第139話 SIDE:ルルシャ族の族長ニコント 旅が終わる

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 ホムン様は不思議なお方だ。
 援助やら行き場所をポンと用意する。

 底なしの善人とも取れるがそうではないのだろう。
 人間を超越している感じがする。
 世間の全てがどうでも良い事だと思っている節がある。

 今はその善意を信じて進むだけだ。
 魔道具が音楽と歌を奏で、一族の若い女衆が舞い踊る。
 男衆は囃し手だ。
 手を叩いたり掛け声を掛ける。

「見事な物だ。通行を許可しよう」
「ありがとうございます。お役人様」

「行き先は魔法都市だったな」
「はい、そこで一旗揚げようかと思っています」
「あそこは文化の中心だ。競争は激しいと聞く」
「ええ、それは存じております」

「もし、駄目だったら。この町に戻ってくるといい。ここは国境だから娯楽が少なくてな」
「はい、その時は」

 ふぅ、無事に国境を越えられた。
 旅芸人に扮するという解決策を用意してくれたホムン様に感謝だ。

「族長、この間の提案を検討してくれたか」
「あれなら駄目だ。論外だ」

 旅芸人の真似事をしていると少なくないお捻りを貰える。
 若い者の仲にはこのままで良いなんて考える者もいる。
 困ったものだ。

「魔法都市に行っても今より楽ができるあてもないんだろう」
「信義には答えないとならん。ホムン様は国境を越える手立てとして芸ができるようして下さった。あくまでも手段だ、目的ではない」
「でもな芸人の生活は悪くないぜ」
「歌を奏でる魔道具がなければ、お前達の芸は人に見せられんレベルだ」

「ホムン様に魔道具の供給を頼んだらどうか」
「馬鹿な。そんな事を言い出したら、見捨てられるぞ」
「そこは上手く丸め込んでさ」
「駄目だ、駄目だ。あの方は賢い。そうでなければ魔法使いにはなれん」
「ふん、分かったよ。もう良い」

 そして、夜。

「族長、若い奴らが何人かで魔道具を盗み脱走しました」
「困った奴らだ。見張りの人間を何人か使わそう。たぶん、奴ら食い詰めるはずだ」
「はい、手配します」

 十日後。
 脱走した若い奴らが戻って来た。

「何か言う事はあるか」
「上手くいくはずだったんだ。騙されなければ。大きい劇場でやらしてくれるというからついて行ったら、魔道具を取り上げられてしまって」
「人間を見抜けないような奴が、一族を離れて生きていけるはずがない。いい勉強になったな。罰として野営の時のトイレの穴掘りをやれ」
「はい、すいませんでした」

 たぶんこんな結末だろうとは思っていた。
 そして、一ヶ月後。
 遂に我らは魔法都市に着いた。

 教えられたとおりにドラゴンが居る四角い建物の所に行った。
 ドラゴンの前にホムン様はいらした。

「長旅ご苦労だったな。後はホレイルを尋ねろ」
「はい」
「だが、ホレイルの風下に立つ必要はないぞ」
「我々に争えと」
「違う。一つの一族で統治する治世は腐敗など無ければ安定するだろう。しかし、必ず腐敗は起こる」
「我々に監視役をやれと」
「まあ、選択肢の一つだな。あまり今は気にしなくて良い。リトワースの民とルルシャ族は平等に扱うって事だ」

「一つ疑問に思ったのですが、なんで我々にこんなに良くしてくれるのですか」
「気まぐれだな。特に意味はない」

 やっぱりだな。
 我々の事など大して気にしてなかったか。

「ですが、我々はこの恩は忘れません」
「ホムンこの人達は誰?」

 もの凄い高級そうな剣をぶら下げた女の子が現れた。
 誰だろう。

「ミレニアム王国の国民になってくれる人達だ」
「私の国民って事ね。私はミレニアーヌ・ミレニアム。よろしくね。ミニアと呼んで」
「この方が前に聞いたミニア様なのですか」

「ああ、そうだ。ミレニアム王国の初代国王だな」
「これは失礼致しました。ルルシャ族の族長ニコントです」
「いいのよ。育ちが悪いもので、礼儀は最低限で良いわ」

「ミニア様はルルシャ族をどのように導くおつもりですか」
「戦いで死ぬ事のない国。他国の人間でも害さない国。そういうのを目指す」
「立派なお考えです。しかし、理想ですな。実際は攻められる事もある」

「そんな時は無敵の魔道具兵団がお相手するわ」
「それは素晴らしいですな」
「予定だけどな」
「ホムン様がお作りになられるので」
「ああ、俺が魔道具を作って魔力を供給する」

「一国の防衛の魔力を全て担うのですか。驚きです」
「まあな」

 国家機密に当たる情報を易々と教えるとは。
 信用して下さっているのだろうが。
 いや、違う。
 ホムン様は常に鎧を身に纏っている。
 暗殺を恐れての事だろう。
 もの凄く用心深い事だ。
 魔力供給の情報は隠すには、あたらないと考えたのか。
 何やらチグハグな感じもするが、一介の凡人にはその考えは分からないのかも知れない。
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