転生ドラゴンの魔法使い～魔法はガチでプログラムだった～

第２５章 鎮圧のドラゴン

第１４５話 反乱

　王城にミニアが行かなくなって一週間。
　遂に事態は動いた。
　ミニア宛に国名をリトワース王国に変えるよう書簡が届いたのだ。
　書簡にはミニアは退位して国宝の剣を返還するよう書かれていた。

　やっぱり反乱したか。
　俺は従魔にしていたフェンリルを後足でがっしり掴むとクレーターの中に運んだ。
　今頃、建国クラブの面々が魔獣が山を越えたと触れ回っているはずだ。
　手はずでは味方の人間が王城の裏口に避難しているはずだ。
　兵士が迎撃に出たら、裏口から侵入する予定だ。

　現在、王城の前にはいくつもの家屋が立ち並んでいる。
　その数、数千。
　フェンリルが城下町の手前から、吹雪のブレスを吐き始めたのが遠目に見えた。
　魔法や矢がフェンリルに向って飛んでくるが、ブレスが手前にあるので魔法や矢は全て跳ね返された。
　遠距離では太刀打ちできないぞ。
　どうする、どうする。

　正面の門が開いて兵士が迎撃に出てきた。
　後退するフェンリル。
　接近戦を挑もうと詰め掛ける兵士。
　もう良いだろう。

　伝言魔法でフェンリルに逃げろと伝えた。
　俺は羽ばたくと正門の前に立ちふさがって門を塞いだ。

　王城に戻れなくなって右往左往する兵士達。
　俺はゴーレムに意識を戻した。
　ちょうど蓋をしていた石の板を外した所だった。

　俺が先頭を切って中に入る。
　姿隠し破りを発動した。

「お前らの主君は誰だ。良く考えろ」

　姿を現した暗部の人間に俺は言った。
　暗部は大人しく退いていった。
　廊下で警備する兵士を力ずくで眠らせ、執務室の扉を蹴破ると中にホレイルと数人の騎士が居た。

「お前は」
「観念しろ。反乱は終わりだ」

　俺達の数が多く、とても敵わないと思ったのか、騎士は早々に降伏した。
　それからミニアが主になって部屋を一つずつ制圧していった。

　そして、リトワースの旗が降ろされミレニアムの旗が上がった。
　終わったのだな。
　捕縛されたホレイルと改めて向き合う。

「この奸臣めが。お前のせいでミニア様は舵取りを間違った」
「ミニア、ちょっと良いか」

　ミニアを呼んでこれからの事を話した。

　王城の小部屋にホレイル、ミニア、俺で話し合う事にした。

「ホレイル、お前に真実を告げる。ミニアはな。ユフィレーヌの血を引いてない」
「そんな騙したのか」
「いや、嘘は言って無い。おまえらが、勘違いしただけだ」
「私、ユフィレーヌの意志を継いだ。これは本当」
「嘘だ信じられるものか」
「真偽鑑定を掛けてみろ」

　ホレイルが真偽鑑定して、ミニアにいくつか質問したようだ。

「本当だ。やり方はともかく正当な跡継ぎだと認めねばならん」
「もう諦めろ。お前だって分かっているだろ。ドラゴンに襲わせれば、こんな砦みたいな王城など木っ端微塵だ」
「王族の血を引くお方はもう残っておられないのか」

「リトワースは滅びたの。もうないのよ」
「そうか。わしらは亡霊という訳だ」
「表にいる兵士に反乱をやめろと呼びかけてくれ。殺したくない」

「そうか。もう過去は戻ってこんのだな」

　肩を落としてホレイルが部屋から出て行った。
　ホレイルが呼びかけ反乱騒ぎは収まった。

　死人が出なくて良かったな。
　怪我人は多数出たが、満足行く結果だ。
　暗部が退いたのが良かったと思う。
　暗部の出方しだいでは死人が多数出ていただろう。
　リトワース人にも分かっていたはずだ。
　反乱は成功しないって事がな。
　ただ時代の変化を受け入れなかっただけ。

　ホレイルは気が抜けたようになって、日がな一日ぼーっとしているようだ。
　掌握した暗部の人間が教えてくれた。

　なんかやるせない気持ちが残った。
　でも、リトワース人にとってはこれが良いような気がする。
　いつまでも過去の恩讐にとらわれていると、進歩がないばかりか周りが不幸になる気がする。

「ミニア、浮かない顔だな」
「私、復讐心があったの。村を滅ぼしたリトワース人に対して」
「なんでリトワース人の国を作ろうだなんて思ったんだ」
「彼らは私に対して償いをする必要があると思ったの」
「従えて償わせようと思った訳だ」
「だけど彼らも理由があって」

「彼らも生まれ変わる必要があるんだよ。そうすればミニアがやった事は無駄じゃない」
「私が彼らを生まれ変わらせるのね」
「そして、ミニアも生まれ変わる。奴隷のミニアから女王のミニアにだ」
「できるかな」
「できるさ。俺が手伝ってやる」

　さてと、後片付けが大変だ。
　反乱に加担していた議員には引退してもらった。
　議員を新しく選出して、組織の作り直しだ。
　いいかげんこういう雑事は人に任せたい。
　何か上手い手はないだろうか。