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第25章 鎮圧のドラゴン

第144話 戸籍調査

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「建国クラブ始めるよ」

 ミニアの掛け声で始まった。

「戸籍調査をやりたいのだが、文官が足りない」

 俺の発言にみんなめんどくさそうな顔をした。

「辛気臭い顔しないで、みんな手伝ってよ」

 ミニアが発破をかけた。

「ミニアはいいでげす。国王様でげすから。何か見返りが欲しいげす」
「じゃあ、爵位をあげましょう。男爵の地位をあげるわ」

「支給金は出るでげすか」
「私のポケットマネーから金貨10枚だすわ」
「ふとっぱらでげすな」

「ふん、一応貰っておく」

 ライナルドが満更でもない顔で言った。

「嫌なら断わっても良いよ」
「嫌だとは言って無い」

「みんな不満はなさそうね。じゃ、戸籍調査をやるという事で決まりね」

 それからは問題なかった。
 魔法学園に入れるだけあってメンバーはそれなりに優秀だった。
 一週間で戸籍の名簿が出来た。

 楽ができたな。
 俺のやった事といえば放課後、ミレニアム国まで建国クラブのメンバーを運んだ事だけだ。

「ミニア、戦争でもするのか」

 建国グラブの集まりでライナルドがそう言った。

「根拠は何?」
「武器や食料を集めているし、兵士が符丁を頻繁に使っている」

「それだけ」

 ミニアはスルーするようだが、そんな訳にはいかない。
 平時に符丁なんて使わないだろう。

「いや、それは問題だろう。反乱だな」
「道理で兵士が殺気立っていると思ったよ」

 殺気立つような案件は抱えていないはずだ。

「やっぱりか、どうもそうなる予感はしたんだよな。ミニアは王族でも何でもない。名前を受け継いだにすぎない」
「えっ、ミニア、王族でなかったのげすか」
「このメンバーだから言うが。始まりは戦場でミニアが王族を倒した時からだ。王族が死ぬ間際にミニアが名前と意思を継ぐと言ったら、了承されたんだ」
「それは、凄い秘密でげすな」
「もし、ミレニアム国の国民がその事を聞いてきたら、素直に喋るつもりだ」

「そうね。嘘はいけないわ。でも、反乱はもっといけない」

 セラリーナがそう述べた。

「反乱は初代国王の名にかけて鎮圧する」
「敵と味方の区別を付けないとな。たぶん反乱の母体はリトワース人だろう。まずは情報を集めないと」

 ミレニアム国に飛んで情報収集を開始した。
 調べたところ、食料と武器は王城に集められているみたいだ。
 ここを拠点にするつもりなのだろう。
 まあ、普通そう考えるよな。

「作戦、どうしよう」
「相手の作戦を逆手にとるのが良いだろう」

 俺の問いにライナルドが答えた。

「王城を逆に乗っ取るのか」
「そうだ。今のうちに裏口を作っておく。そしてどうにか兵士を外に出す。そして空同然の王城を乗っ取る。後は立てこもれば良い」
「なるほどな。兵士をどうやって外に出す」
「ドラゴンがいるじゃないか。ドラゴンに魔獣を捕まえさせて王城にけしかけるのさ。そしたら迎撃に出てこなくならざろう得ない」
「迎撃に出てきたところを乗っ取ると」

 ドラゴンが直接攻撃しないのはドラゴンだと兵士皆殺しだとライナルドが思ったのか。
 そうなると篭城が不味い魔獣となるとフェンリル辺りだな。
 遠距離攻撃を持っているので、篭城はあまり意味が無い。

「じゃ、その作戦でいこう」

 ミニアが了承して作戦開始された。
 ドラゴンが石の城壁を溶接作業に掛かる。
 辺りが高温になるので人がみな避難するように勧告。
 こうなれば、やりたい放題だ。
 城壁の裏手に胃液のブレスで穴を開けて、人間でも動かせる石の板で塞いでおく。

 継ぎ目に糊を塗って砂を掛ける。
 ぱっと見は繋がっているように見えるはずだ。
 後は敵と味方の識別方法だな。

 リトワース人以外の人達に真偽鑑定を掛けて識別。
 結果、リトワース人以外の人は反乱に加担してなかった。

 決行日に魔獣が現れたら王城に避難するように打ち合わせた。
 後はリトワース人の敵と味方をどう識別するかだ。
 これは篭城してから、真偽鑑定を掛けよう。

 万が一という時の為にリトワース人以外の人達に戦闘用の魔道具を支給した。

 そして、俺はホレイルに会談を申し込んだ。

「主だった人に聞いているんだが、不満とか不便な事はないか」
「国としては足りないものだらけですが、ありませんのう」

「そうか。理想の国を聞いていいか」
「わしにとって理想の国は亡ぶ前のリトワースかのう」
「そうか、この国をリトワースのようにしたいと言うんだな。参考になったよ」

 ホレイルにとって過去が一番なのだな。
 よく分かったよ。
 たぶんミニアが色んな事をすると溝はどんどんと広がっていくのだろうな。
 反乱は必然だったのかも知れない。
 俺がここでホレイルに何か言っても止まらないだろう。
 やはり暴発させるしかないのか。
 反乱が杞憂なら良いのだが。
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