漬物はネクロマンサーの香り~大量レベルアップの秘訣は新鮮な野菜の死体。大根アンデッド(漬物味)から始まる最強への道~

喰寝丸太

文字の大きさ
2 / 84
第1章 野菜ゾンビから始まる成り上がり

第2話 大根ゾンビ

しおりを挟む
「さあ、大根を村に売りに行くとしますかね」

 なんじゃこりゃー。
 収穫した全ての大根の葉っぱがしおれていて、白い本体もしわが寄っている。
 独特な匂いも漂っていた。
 昨日の夕方に収穫したはずだ。
 こんなになるなんて。

 レベルが、レベルが上がっている。

 昨日飲んだ時にたしか……。
 馬鹿、馬鹿、俺の馬鹿。
 大根をアンデッドに変えてどうするんだ。
 くそう、もう金輪際こんりんざい、酒は飲まん。
 大根はピクリとも動かない。
 そりゃ大根に筋肉と骨はないからな。

 でも心なしか嫌な匂いじゃない。
 なんとなく懐かしい気分になる匂い。
 なんだろう。
 そうだ、漬物の匂いだ。

 大根に【メイクアンデッド】掛けるとこんなになるとは。
 食えるのかなこれ。
 材料は毒ではないし、大根の腐ったのを食っても食あたり程度だろう。
 ほんの小指ぐらいの量を食ってみるか。

 俺はアンデッドになった大根を細かく切って口に入れた。
 わずかな辛味と甘さがちょうど良く混在している。

美味うまい。美味うますぎる。何でこんなに美味うまいんだ」

 ええと、禁書によれば、確かアンデッドの能力は死体の質と格に左右されるはずだ。
 この大根はそんなに質が高いのか。
 心当たりがあった。

 育てるのに魔獣の肉を肥料に使っている。
 それというのも【メイクアンデッド】を死体に掛けると掛けるごとに劣化するんだ。
 段々とパワーも落ちてきて、スピードも格段に落ちるようになる。
 最後はグズクズになるから肥料に丁度ちょうど良いので畑に撒いた。
 魔獣の死体を肥料にすると大根の育つスピードも格段に早くなる。
 一石二鳥の肥料だ。
 村では大根が美味しいと評判だったが、こんなに質が高かったとは。

 それに昨日は酒のつまみが欲しいと思いながらアンデッドを作った。
 無意識に漬物が食いたいなと思ったに違いない。

 よし、売り出そう。
 そうだ、聖水漬けなんてのはどうだろう。
 ゾンビ漬けにしたいところだがイメージが悪い。
 教会が使っているゾンビにとって天敵の聖水をゾンビ漬けの名前にするなんて、我ながら皮肉が利いている。
 キャッチコピーは『清らかな聖水みたいな水で育てた大根を漬けました』だ。

 このアンデッドどれぐらいの間、食せるのだろう。
 確かアンデッドが腐った死体に戻る期間は込めた魔力に比例して格に反比例するだったな。
 ドラゴンゾンビなど格が高い物を維持するには膨大な魔力が要る。
 大根はどうだ。
 格は低そうだな。
 何日か放置してみるか。
 一週間も経っても大丈夫なら、商品として売り出せる。
 作った日付と食べ切らないといけない日付を刻印すれば良い事だ。

 アンデッドはバラバラにされても死なない。
 行動不能になるだけだ。
 大根ゾンビもバラバラに切っても魔力が抜けるまでアンデッドだ。
 食品にするには好都合だ。

 塩が効いているとさらに美味いだろう。
 大根をアンデッドにしてから塩に漬けてみた。
 結果は惨敗。
 半分生きているアンデッドに塩は攻撃らしい。
 みるみる劣化して不味まずくなっていった。
 それならばと大根を塩に漬けてから挑戦。
 アンデッドにすると、大根の質が落ちたために不味まずくなった。
 普通にアンデッドにしただけより数段落ちる結果に。
 やっぱり死体は新鮮じゃないとな。

 塩と合成してアンデッドにしなきゃならないらしい。
 そのためにはアンデッドを作る時に武器や防具を一緒に合成する技能を覚えないといけない。
 しばらくは、ただの大根アンデッドを出荷だな。
 それをしながら、死体術士の修行だ。

 だが、魔獣で死体術士の修行するのは難しい。
 なぜならアンデッドにした魔獣は元の魔獣より弱いからだ。
 弱い魔獣を少しずつ強い魔獣に切り替える戦術は使えない。
 今までは放浪時代に覚えた戦法でやって来た。

 弱い魔獣は大体、質と格が低い。
 質と格が高いと【メイクアンデッド】した時に貰える経験値も増える。
 そうだ大根の格は低いが質は良い。
 しばらくは漬物を大量に作って過ごすか。

「よし、漬物つくるぞ。【メイクアンデッド】、【メイクアンデッド】……」

 脳内に鳴り響くファンファーレ。
 漬物を作りまくって死体術士の職業レベルはガンガン上がった。
 三日で見習いと呼ばれる10に到達。
 今まで職業レベルはろくに上げなかったものな。
 なにしろゾンビを連れている所を見られたら破滅はめつだ。
 聖騎士にぶっ殺される。

 村でアンデッドを作るのは危険すぎる。
 臆病になっていた俺は放浪していた時はアンデッドを作らなかった。
 この家でも野犬が腐り一目見てアンデッドだと分かるようになると処分だ。
 野犬の補充は野犬が襲って来た時だけにした。
 魔獣が襲って来た場合は仕方なしにアンデッドにして、畑仕事をさせた後でその日の内に肥料に。
 慎重な俺はここでもアンデッドは極力作らない。
 だが、今はどうだ。
 堂々と大根のアンデッドが作れる。
 酔ってやらかした俺、大手柄だ。

 後日、実験の結果、アンデッド漬物は一ヶ月は大丈夫だと分かった。
 一ヶ月過ぎてアンデッドでなくなった物も勇気を出して食べてみたが、味が落ちただけだ。
 遂に、アンデッドに武器を合成する事も出来るようになった。

「よし。大根の死体よ、塩の鎧をまとえ。【メイクアンデッド】」

 心なしか、匂いもさらに良くなっている気がする。
 試食といきますか。

「美味いぞー。塩加減も丁度良い。この歯ごたえがなんとも良い」

 俺が漬物をおろしている村には商人が数割増しで訪れるようになった。
 だが、まだまだだ。
 漬物は完成じゃない。
 唐辛子を合成するには死体同士を合成してアンデッドを作り出す技能を覚えないと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...