無限魔力のゴーレム使い ~無力な奴隷から最強への一歩は逆転の発想から~

喰寝丸太

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第1章 禁忌活用編

第22話 違法奴隷

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 三階はゴブリンの上位種がザコ敵に出てきたが、ゴーレムの敵ではなくあっさりと倒せたのでボス部屋に直行した。
 ボスのグレートウルフもあっさり倒す事に成功。

 四階も特筆すべき点はなくすんなりと攻略。
 五階も敵ではなく、魔石を稼ぎながら進んでいた所、通路に人が倒れている。

 粗末な皮鎧にボロボロの服で武器は持っていない。
 鞄らしき物もない事からスラムの人間だと思った。
 欠損部分はないが、鈍器のような物で滅多打ちにされている。
 ポーションを慌てて振りかけると、顔の腫れも引き、中年の男性だと分かった。



「おい、おっさん。何があった」

 男性を軽く揺さぶり声を掛ける。

「うっ、ここは。ああ、まだダンジョンの中か」

 男性は意識を取り戻したみたいだ。

「俺はフィル、冒険者だ」
「俺は……」
『記憶喪失だ! 初めて見た!』

 ライタが騒ぐ。
 ライタの知識を調べる。
 なるほど強く殴られると記憶が無くなるのか。

「記憶はどこまで?」
「記憶はある……だけだ」

「最後に戦った敵は?」
「オークだ」

「今何歳?」
「歳は……歳だ」

 この虫食いの会話は何だ。
 自分に係わる記憶が抜け落ちているのか。

「一緒にきた仲間は?」
「死んだ」
「じゃあ仲間の名前は?」
「……と……だ」

 身元が分かる情報だけ巧妙に隠されている感じがする。
 これはやばそうだ。
 噂にに聞く違法奴隷という奴じゃないか。

 腹の所を魔力視で見ると契約魔法が確かにある。
 こうなったらしょうがない。

「おい、おっさん。スキルで今から契約魔法を消す。俺のスキルを受け入れろ」
「そんなスキルは聞いた事がないが、受け入れよう」

 並列システムの一つが拳大の魔力ゴーレムを作り、おっさんの体の中に入れる。
 並列システムが唱えるスキルの詠唱は俺意外には聞こえない為こういう時に便利だ。
 無事入った魔力ゴーレムが契約魔法を攻撃した。
 魔力視で契約魔法が消えたのを確認。

「おっさん、名前を言ってみろ」
「俺はアントム、違法奴隷だ。いや、元違法奴隷だ」
「契約を消したスキルの事は聞くなよ。秘術だ」

「助けてもらってこんな事をいうのは何だが、俺には係わらない方が良い。皆殺しにされるぞ」

 なるほど、マリリに聞いた話では違法奴隷に係わった人間は死刑だ。
 裏組織は必死になって違法奴隷の存在を知った人間を消しに掛かる訳か。
 さて、どうするかな。
 このまま放置しても、俺の所へ殺し屋が来る可能性は大だろう。

「もう手遅れだ。覚悟はした」

 無駄だと分かっているが、おっさんを隠さないとな。
 俺はライタと相談するため後ろを向いて小声で話し始めた。

「ライタ、どうしよう」
『仮面を付けさせ、アントムを一人でダンジョンから出させるんだ』
「なるほど、変装させる訳だ。それなら、服も変えたほうがいいな」
『冒険者ギルドに助けを求めさせろ。組織に個人で対抗するのは愚か者がする事だ』

「冒険者ギルドに伝手はあるか」

 俺は振り返りアントムに言った。

「大丈夫だ。今もギルドカードは持っているし、違法奴隷にされる前は冒険者をやっていた」

 裏組織の資金調達部隊だったのかな。
 詳しい事を聞くと危なそうだから、聞かないけど。
 背負い鞄から予備の服を出して着替えさせ、魔石を加工して仮面を作る。

「縁があったらまた会おう」

 俺は分かれの言葉を告げた。

「ああ、お互い長生きしよう」

 アントムが返事を返す。

 アントムがフラフラしながら帰り道を辿り始めるのを見送る。

 時間を潰す為に攻略を再開する事にして、近くの部屋に入った。
 出てきた敵は棍棒を持ったオークで、推測するにアントムはこのオークに滅多打ちにされたのだろう。
 よく生きていたな。
 何か強力なスキルでも持っているのだろうな。

 俺は魔力ゴーレムのゼロレンジ魔法でオークをあっさり片付けた。
 この階層もさっくと攻略して今日のダンジョン攻略を終わる。
 アントムは無事に冒険者ギルドに辿り着けただろうか。



 俺はルシアラの店に行った。
 ルシアラの店の半分は木の匂いのする家具屋に生まれ変わっている。

「ルシアラ、奥でちょっといいか」
「なんだい、深刻そうな顔して」

 奥の商談スペースに腰を掛けるとルシアラに声をひそめて話し掛けた。

「裏組織の連中と揉めそうだ。片が付くまでここには来ないから、用心してくれ」
「マリリは今、出ているから、帰ったら言っとく」
「長居したいけど、急いでやらなきゃいけない事が沢山ある」
「あまり、危険な事はするなよ。マリリが悲しむ」
「分かっている。じゃあな」



 俺は店を出て、リンナの工房に向かった。
 リンナ工房の煙突からは怪しい紫色の煙が出ている。
 ドアには案内版があったが無視して入った。

「不味い事になった」

 工房に入るなり俺は言った。

「なによ突然。びっくりするじゃない」

「あまり関係ないかもしれないけど、言っておく」
「今ちょっと手が離せないのよ」
「そのままでいいから聞いてくれ。裏組織の連中と揉める事になりそうなんだ」
「私、関係ないわよね」
「どこかで会っても知らないふりをしてくれ」
「分かったわ」
「俺は当分、この工房に来ないから用心だけはしてくれ」



 リンナの工房を出て西門の解体場に足を向けた。
 ティルダは何時ものように客を探している。

「よう、少しやばいことになってな」
「何かやらかしたの」

「迷惑が掛かるから、詳しい事は言えないが、闇組織と揉める事になりそうだ」
「もしもの時はスラムに逃げなよ」

 そうだな、もしもの時はスラムに逃げよう。
 それも選択肢の内の一つだ。

「そうさせて、もらうよ。どこかで出会っても片が付くまで他人の振りをしてくれ」
「無理しないでね」
「ああ、ありがとう」


 宿に行き荷物を馬ゴーレムに積み、冒険者ギルドを目指した。
 馬ゴーレムをギルドの馬屋に入れると冒険者ギルドに入る。
 冒険者ギルドは夕方で非常に混雑している。
 窓口はどこも長蛇の列なので、フェミリの所に並んだ。

 少しイライラしながら待っているとようやく俺の番になった。

「魔石を売りたい」
「闇ギルドと揉めそうだって」

 魔石の袋を受け取りながら、フェミリが声をひそめて囁いた。
 裏組織は闇ギルドなのか。
 ずいぶん大物が絡んできたな。
 闇ギルドは裏組織のまとめ役の役割をしている組織だ。
 待てよ、フェミリは何で知っているんだ。

「情報通だな」
「私はこう見えても三人いる副ギルド長の一人なのよ」

 えっ、がめついフェミリが副ギルド長なのか。
 ぬいぐるみをたかる必要ないじゃん。
 それよりもアントムさんだ。

「裏組織が判明したってことはアントムさんは辿り着けたって事だよな」
「事が事なので安全な場所に保護しているわ」

 とりあえず一安心だな。

「宿に迷惑掛けない為にも家を借りたい」
「それなら、緊急用にギルドが確保しているうちの一つを貸し出しましょう」

 鍵と地図を受け取り、貸し家に急いだ。
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