貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太

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第96話 刃物男

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「くそう、殺してやる」
「お前、誰だ」
「俺は、お前のせいで遺産が貰えなかった者だ」
「自己紹介おつ」

 ギルドの帰りに刃物を持った男に絡まれた。

 手首を優しくトン。
 あれっ折れちゃった。

「ぐぎゃあ」

「カメラちゃんと回ってたよな」

【ばっちり見てた】
【現行犯だな。手首骨折はやり過ぎだけども】
【いや刃物もって立ち塞がるのが悪い】

 警察が来て、色々と聞かれた。
 一応相手が刃物持ってたから、正当防衛にはなるらしい。
 全く、世話を掛けさせやがって。

【アンチ、最近大人しいね】
【何人も有罪になりそうだと言ってたな】
【おっさんに許してもらう条件が寄生だものな】
【寄生してもらえばダンジョンに入れる?】
【そうだけどな】
【元底辺おっさん→いまうんこおっさん、被害者の会ってサイトを見つけたぜ】
【おお、香ばしい匂いが】
【どんな活動してる?】
【おっさんを告訴しようって息巻いている】
【無駄なのに】

「俺も気になったのでみてみた。俺の経歴から、過去の動画まで載っている。被害者の会じゃなくて、ファンクラブ?」

【ファンクラブ、ワラタ】
【でも動画に罵詈雑言のコメント書き込もうぜとなっている】
【度が過ぎると告訴されるのに】
【このサイトの主催者がまずは特攻してみないと】
【人を扇動するなんて奴はろくなもんじゃない】

「それには同意見だ。人を焚きつける奴は良くない」

【サイトに主催者がどんな活動したか説明してくれって書き込んだ】
【返事は?】
【まだない。というか答えないかも】
【チキン野郎だな。俺も書き込んで来る】

「捕まるような言動は慎めよ」

【分かっている。どんな活動を今までやったか聞くだけだから】
【そこで犯罪を暴露して自滅してたりしてな】
【この配信も見ているだろう。自滅はしないと思われ】

 色んな奴がいるものだな。
 俺の敵になりたがる奴もいれば、味方になる奴もいる。
 まあ、そういうものか。
 俺が行き詰っていた時も、周りをよく見れば、味方がたくさんいたのかもな。
 視野が狭くなるってああいうことなのだな。
 今はなんとなく視野が広くなった気がする。
 それも相棒のおかげだ。
 俺は装着してあるカメラを触った。

 俺が家に帰ると弥衣やえが来ていた。

弥衣やえも気をつけろよ。通り魔が出るからな」
「大丈夫。護身用にグラトニーマテリアル製のドリルガン持っているから」

「何、その物騒なの?」
「グラトニーマテリアルが穴を開けるの。グラトニーマテリアルって便利ね。自分は消えないんだから」

「そうだな。グラトニースライムも自分自身は消さないからな。めったなことで使うなよ」
「大丈夫。3センチぐらい針で突いたような穴が一瞬でできるだけだから」

「グラトニーマテリアルって、暗殺とかスパイ活動に向いているな」
「今は国が全部お買い上げしてるんだっけ」

「そうみたい。うちしか採れない物質だから、他には漏れないと思うけど」
「小耳にはさんだんだけど、ダンジョンで働いている人たちは全員を公安がマークしているみたいよ。盗聴器が見つかったって。それも電気駆動でなくて魔力駆動の魔力波発信」

「へぇ、電波じゃないんだろ。よく見つかったな」
「偶然分かったけど、あまりに最先端技術の塊で、恐くなってそのままにしているらしいわ」

「外国のスパイって線はないのか?」
「ないみたいね。外国人の影は見えないから。こっちにはコボルトとケットシーの鼻があるのよ。どんな組織も丸裸」

「突き止めたのか」
「みたいね。日本の組織だと分かってそのままにしてる」

 見張られるのは嫌だな。
 でもグラトニーマテリアルは危険だ。
 仕方ないことなのかも知れない。

 グラトニーマテリアルの対抗策もあるな。
 魔力イレーサーDXを服に掛けておけばいい。
 いっそのこと繊維に練り込んでもらうか。
 武器工房のおっちゃんに相談だな。

「というわけで魔力イレーサーDXから繊維を作って、服を作ってほしい」
「いや、鎧下とか作るけどよ。服の発注は初めてだ」
「作れるだろ」
「そりゃ、糸紡ぎはあるし、機織りもあるし、ミシンもあるし、俺は器用だから作れるけどよ」
「作ってよ。ついでだからミスリルの糸も織り込んで」
「なんで?」
「丈夫そうだから。春、夏、秋、冬の一揃いな。デザインは任せるけど、ダサいの作ってきたらやり直しだから」
「おいおい」
「頼んだから」

 なんだかんだ言ったって作ってくれるさ。
 良いのが出来たら、弥衣やえ達の分も作ってもらおう。
 だが、弥衣やえの採寸はおっちゃんにはやらせない。
 女の人にやってもらうつもりだ。
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