上 下
1 / 6

俺たちの必要性

しおりを挟む
竜宮は例のゲームに夢中になっている最中、突然部屋のドアが開いた。「うるせえな」と思いつつ後ろを振り返ると、立っているのは制服姿の職員らしき男たちだった。「お前がゲーム三昧で正業に就かないという苦情が寄せられた。治安上好ましくないので拘束する」

ショックで言葉が出ず、ビシャビシャと手錠をかけられる。母親は泣きながら「迷惑ばかりかけてごめんなさい」と謝罪する。家から半強制的に連行され、目隠しをされた途端、胸のうちがひりひりと痛んだ。

そのころ月島は、コンビニでひとりラーメンをすすっていた。隣に座った男が「おい、オタクやろ? 治安上好ましくないから逮捕するぞ」。文句を言う間もなく取り押さえられ、やはり目隠しをされる。殴る蹴るされ、拘置所送りを予感した。

一方、駅のホームから飛び降り自殺を図った男が警官に取り押さえられた。男は拘置所行きかと思いきや、「お前が死んだら面倒だ。特別プログラムがあるんだ」と黑塗りの車両に押し込まれた。

杉山はネットカフェから出てきたとたん、数人の男たちに取り押さえられた。理由も聞けずに黒い布袋を被せられ、拘束具をかけられる。隣にはニートのレッテルを貼られた他の青年たちも並んでいた。

渚は人前でギターを弾けずにいたが、ある日街中で今まで弾いたことのない美しいメロディーが自然と指から生まれた。その瞬間、制服の男に取り押さえられ、音楽性は社会にとって不要だと
言われた後、奇妙な施設へ連行された。

一方、全員に手錠をかけられた凶悪犯たちが、警備部隊に厳重に護送される中、要所要所で鎮静剤を打たれながら檻の中を歩いていた。死刑執行を前にした徒刑囚たちは、行く末を全く知らされずに隊列の中を仕方なく歩いていく。

その他にも多くの人々が、治安の維持や社会からの疎外を理由に集められていった。驚愕と恐怖が入り交じる閉塞的な空気が、アレを包み込んで行く。


何時間がたったのかそれとも何日経ったのか??
竜宮が意識を取り戻すと、自分は知らない廃墟の一室にある。明かりも暗く、頭がぼんやりする。同じ部屋には訳の分からない人々が数人置かれていた。

驚き呆然とする中、隣に月島が。「おい、竜宮! ここはどこだと思う?」。互いの安否を確認し合う。来歴も似ている。ここがデスゲームの舞台であることを醒めた表情で推理する。

他の参加者の中には、怯えきって押し黙った者もいれば、怒鳴り散らしたり泣き崩れたりする者も。パニックに陥る空気感が高まる。

竜宮と月島は冷静さを保ち、出口を確保し情報を集めることを優先し、人々をなだめつつ次の局面に備えることを考え始めた。

そこに「鬼の説男」と名乗る制服の男が現れるや否や、まずは高額の賞金目当てのゲームであることをアピールし始めた。参加者から驚嘆と期待感の声が上がる。

しかしすぐに男は社会人がいかに努力し我慢しているかを力説し始め、生産性のないニートや犯罪者を叩き出す。参加者から不満の声が上がるが、男を止める者はいない。

ニートの一人が「俺たちは生まれたくないんだよ!」と叫ぶと、男は扇動的に「自己責任だ」「迷惑をかけるな」と煽る。竜宮と月島は冷めた表情でその態度を嫌悪する。

男は更に過激な言葉でニートや犯罪者たちを人権放棄の対象として扱い、健全な社会を実現するためには抹殺するしかないと主張する。

参加者たちの表情が曇り、絶望感が広がっていく。竜宮と月島は身構えながら、この先どう対処するか現状を分析し始めるのだった。
しおりを挟む

処理中です...