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23.隣国の内情の末
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うん。
なんかもうどうでも良くなってきた。
自分の置かれてる状況とか周りの事とか考えても考えても悪い事しか浮かばない。
それなら少し考えるのを止めてみよう。
それが物事を好転させるのか悪化するのかは分からないけど、悪い事ばかり考えるよりは良い気がしてきた。
まずは目の前で起こった是非とも応援したい恋物語を全力で手助けたい。
「まずは2人で話せる場所に移動しましょうか」
まだ言い合いを続けているカインとシャイロー様が居るとリーディアさんが落ち着いて話が出来ないと踏んで、リーディアさんの手を取って立ち上がる。
「リーディアさんのお部屋にお邪魔しても?」
「はい」
頷くリーディアさんと静かに部屋を出て行く。
いつもなら気付くカインはシャイロー様との言い合いがヒートアップしているからか、全く気付く気配がない。
部屋の外に控えていたアンルーシーや護衛の女性騎士に人差し指を立てて口に当て、静かにしてもらえるように目で訴える。
私の意を酌んで誰も声を出さず、気付かれないまま無事に扉を閉める事に成功した。
「これから私達だけで私のお部屋へ移動します。申し訳ないのですが、王太子殿下達には居場所を内緒でお願いしますわ」
「畏まりました」
声量を落としたリーディアさんが簡単に説明して、王太子とシャイロー様の護衛だけを残して歩き出す。
その後に続きながら後ろを歩くアンルーシーを盗み見る。
いつも通りの態度から逃げ出そうとしてた事は知らされてないみたい。
「ここですわ」
アンルーシーの様子を盗み見ている間に来客用でも1番豪華で大きい部屋の前に着いていた。
また道を覚えられなかった。
アンルーシーが居なければ元の部屋へ戻れないかも知れない。
「…失礼します」
扉を開けて入って行くリーディアさんを追って恐縮しながら足を踏み入れた。
白を基調とした部屋はシンプルながらとても上品な家具が揃っていて落ち着いた雰囲気だ。
出窓付近にあるテーブルには紅茶の用意がされており、その椅子に勧められた。
紅茶の香りは甘いけどさっぱりしていて緩やかな湯気が立ち上っていた。
「シルヴィアさん、私はシャイロー様をお慕いしております」
椅子に座った途端にそう宣言されてきょとんとリーディアさんを見つめる。
「私の兄弟はとても多いのです。姉が二人、妹が七人、弟が一人居ます」
「ふぁ!?」
驚きのあまり変な声が出ました。
「長年男児が産まれなくて頑張った結果がこの女所帯。弟も二歳とまだ幼いのです」
「王子様がお産まれになって何よりです」
「弟が産まれるまで時間が掛かり過ぎてしまったが為に争いは絶えませんでしたが…」
急に出たリーディアさんのお家騒動話に口を挟む間もなく静かに紅茶を口にした。
「国王は親戚筋にも男児が産まれる事が少なく、養子を貰う事も出来なかったのです。そして女王が即位するという話が持ち上がりお姉様達はご自分達の結婚を蹴ってまで争いを始めました」
「結婚までも破棄されたのですか!?」
「はい。玉座に女性を…女王を望む声が大きくなり姉2人が争いを始め、お父様もお母様達も気の強いお姉様に意見しても聞き入れてもらえずで。周りの貴族や使用人達は面白可笑しく火に油を注ぐように煽るばかり」
「嫡子は男性に限るというのは世の理。女王を立てたら蔑まれて政が滞ってしまうのでは?それなのに女王を押すという貴族達は自分達の利益になる企みがあるのでしょうか?」
近隣諸国は王に男性を据えている。
それは男尊女卑がとても大きいのもあるが、女性が子供を産む時にどうしても空いてしまう玉座の空白が問題視されての事。
昔は何人か居たそうだけど出産時に亡くなったり、子供が出来た時に誰の子供か分からないという問題が発生して玉座には男性がと暗黙の了解になっていた。
「そうです。それも分からず争いを続ける姉達と止められない家族に私は嫌気がさしてお城を抜け出すようになりました」
妙齢の王女様には家族同士の諍いが我慢ならなかったのかも知れない。
見たくない程に。
兄弟喧嘩としては些か物騒で壮大だものね。
「ギスギスした空間から逃げ、護衛を撒いて城下へ遊びに行くのはとても開放的で楽しかったのです。でも私は本当に無知でした。賑やかで明るい街の暗い部分を知りもしなかった…」
ふとリーディアさんの表情が曇り、目の前のカップにスプーンを入れてクルクル掻き混ぜ始めた。
「私は街中で人攫いに合い、この国まで来てしまいました。それは本当にあっという間であの人達は私を王女とは知らず売り捌かれそうになりました。その時現場に居たのが……」
スプーンから手を離して私に目を向ける。
あ、これはシャイロー様との馴れ初め話だったのかも知れない。
「シャイロー様ですか?」
自分でも分かるくらい目を輝かせてリーディアさんを見つめる。
乙女は恋話が大好物ですから。
「え?いえ、そこに居たのはカインラルフ様でした」
「え?カインが?」
そんな話は聞いた事がない。
何でも話してきたと思って居たのは私だけだったのかも知れない。
そんな考えが胸をチクリと刺激する。
リーディアさんはカインの事を好きだったのかも。
「カインラルフ様達は人攫いをあっという間に倒して助けてくれました。王子様が来てくれたと内心喜んでいたのは事実です」
薄っすら頬をピンクに染めるリーディアさんはとても綺麗で可愛かった。
「見るからに貧しい格好のカインラルフ様に私は隣国の王女だと伝え、無事帰ったら褒美をやると言ったのです。自分が嫌で見ないように逃げてきた尊大な態度や押し付け、上に立っていると…相手を見下しながら」
苦笑を漏らしながらスプーンを置いて紅茶に口を付けた。
なんかもうどうでも良くなってきた。
自分の置かれてる状況とか周りの事とか考えても考えても悪い事しか浮かばない。
それなら少し考えるのを止めてみよう。
それが物事を好転させるのか悪化するのかは分からないけど、悪い事ばかり考えるよりは良い気がしてきた。
まずは目の前で起こった是非とも応援したい恋物語を全力で手助けたい。
「まずは2人で話せる場所に移動しましょうか」
まだ言い合いを続けているカインとシャイロー様が居るとリーディアさんが落ち着いて話が出来ないと踏んで、リーディアさんの手を取って立ち上がる。
「リーディアさんのお部屋にお邪魔しても?」
「はい」
頷くリーディアさんと静かに部屋を出て行く。
いつもなら気付くカインはシャイロー様との言い合いがヒートアップしているからか、全く気付く気配がない。
部屋の外に控えていたアンルーシーや護衛の女性騎士に人差し指を立てて口に当て、静かにしてもらえるように目で訴える。
私の意を酌んで誰も声を出さず、気付かれないまま無事に扉を閉める事に成功した。
「これから私達だけで私のお部屋へ移動します。申し訳ないのですが、王太子殿下達には居場所を内緒でお願いしますわ」
「畏まりました」
声量を落としたリーディアさんが簡単に説明して、王太子とシャイロー様の護衛だけを残して歩き出す。
その後に続きながら後ろを歩くアンルーシーを盗み見る。
いつも通りの態度から逃げ出そうとしてた事は知らされてないみたい。
「ここですわ」
アンルーシーの様子を盗み見ている間に来客用でも1番豪華で大きい部屋の前に着いていた。
また道を覚えられなかった。
アンルーシーが居なければ元の部屋へ戻れないかも知れない。
「…失礼します」
扉を開けて入って行くリーディアさんを追って恐縮しながら足を踏み入れた。
白を基調とした部屋はシンプルながらとても上品な家具が揃っていて落ち着いた雰囲気だ。
出窓付近にあるテーブルには紅茶の用意がされており、その椅子に勧められた。
紅茶の香りは甘いけどさっぱりしていて緩やかな湯気が立ち上っていた。
「シルヴィアさん、私はシャイロー様をお慕いしております」
椅子に座った途端にそう宣言されてきょとんとリーディアさんを見つめる。
「私の兄弟はとても多いのです。姉が二人、妹が七人、弟が一人居ます」
「ふぁ!?」
驚きのあまり変な声が出ました。
「長年男児が産まれなくて頑張った結果がこの女所帯。弟も二歳とまだ幼いのです」
「王子様がお産まれになって何よりです」
「弟が産まれるまで時間が掛かり過ぎてしまったが為に争いは絶えませんでしたが…」
急に出たリーディアさんのお家騒動話に口を挟む間もなく静かに紅茶を口にした。
「国王は親戚筋にも男児が産まれる事が少なく、養子を貰う事も出来なかったのです。そして女王が即位するという話が持ち上がりお姉様達はご自分達の結婚を蹴ってまで争いを始めました」
「結婚までも破棄されたのですか!?」
「はい。玉座に女性を…女王を望む声が大きくなり姉2人が争いを始め、お父様もお母様達も気の強いお姉様に意見しても聞き入れてもらえずで。周りの貴族や使用人達は面白可笑しく火に油を注ぐように煽るばかり」
「嫡子は男性に限るというのは世の理。女王を立てたら蔑まれて政が滞ってしまうのでは?それなのに女王を押すという貴族達は自分達の利益になる企みがあるのでしょうか?」
近隣諸国は王に男性を据えている。
それは男尊女卑がとても大きいのもあるが、女性が子供を産む時にどうしても空いてしまう玉座の空白が問題視されての事。
昔は何人か居たそうだけど出産時に亡くなったり、子供が出来た時に誰の子供か分からないという問題が発生して玉座には男性がと暗黙の了解になっていた。
「そうです。それも分からず争いを続ける姉達と止められない家族に私は嫌気がさしてお城を抜け出すようになりました」
妙齢の王女様には家族同士の諍いが我慢ならなかったのかも知れない。
見たくない程に。
兄弟喧嘩としては些か物騒で壮大だものね。
「ギスギスした空間から逃げ、護衛を撒いて城下へ遊びに行くのはとても開放的で楽しかったのです。でも私は本当に無知でした。賑やかで明るい街の暗い部分を知りもしなかった…」
ふとリーディアさんの表情が曇り、目の前のカップにスプーンを入れてクルクル掻き混ぜ始めた。
「私は街中で人攫いに合い、この国まで来てしまいました。それは本当にあっという間であの人達は私を王女とは知らず売り捌かれそうになりました。その時現場に居たのが……」
スプーンから手を離して私に目を向ける。
あ、これはシャイロー様との馴れ初め話だったのかも知れない。
「シャイロー様ですか?」
自分でも分かるくらい目を輝かせてリーディアさんを見つめる。
乙女は恋話が大好物ですから。
「え?いえ、そこに居たのはカインラルフ様でした」
「え?カインが?」
そんな話は聞いた事がない。
何でも話してきたと思って居たのは私だけだったのかも知れない。
そんな考えが胸をチクリと刺激する。
リーディアさんはカインの事を好きだったのかも。
「カインラルフ様達は人攫いをあっという間に倒して助けてくれました。王子様が来てくれたと内心喜んでいたのは事実です」
薄っすら頬をピンクに染めるリーディアさんはとても綺麗で可愛かった。
「見るからに貧しい格好のカインラルフ様に私は隣国の王女だと伝え、無事帰ったら褒美をやると言ったのです。自分が嫌で見ないように逃げてきた尊大な態度や押し付け、上に立っていると…相手を見下しながら」
苦笑を漏らしながらスプーンを置いて紅茶に口を付けた。
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