子爵令嬢は高貴な大型犬に護られる

颯巳遊

文字の大きさ
23 / 32

23.隣国の内情の末

しおりを挟む
うん。
なんかもうどうでも良くなってきた。
自分の置かれてる状況とか周りの事とか考えても考えても悪い事しか浮かばない。
それなら少し考えるのを止めてみよう。
それが物事を好転させるのか悪化するのかは分からないけど、悪い事ばかり考えるよりは良い気がしてきた。
まずは目の前で起こった是非とも応援したい恋物語を全力で手助けたい。
「まずは2人で話せる場所に移動しましょうか」
まだ言い合いを続けているカインとシャイロー様が居るとリーディアさんが落ち着いて話が出来ないと踏んで、リーディアさんの手を取って立ち上がる。
「リーディアさんのお部屋にお邪魔しても?」
「はい」
頷くリーディアさんと静かに部屋を出て行く。
いつもなら気付くカインはシャイロー様との言い合いがヒートアップしているからか、全く気付く気配がない。
部屋の外に控えていたアンルーシーや護衛の女性騎士に人差し指を立てて口に当て、静かにしてもらえるように目で訴える。
私の意を酌んで誰も声を出さず、気付かれないまま無事に扉を閉める事に成功した。
「これから私達だけで私のお部屋へ移動します。申し訳ないのですが、王太子殿下達には居場所を内緒でお願いしますわ」
「畏まりました」
声量を落としたリーディアさんが簡単に説明して、王太子とシャイロー様の護衛だけを残して歩き出す。
その後に続きながら後ろを歩くアンルーシーを盗み見る。
いつも通りの態度から逃げ出そうとしてた事は知らされてないみたい。
「ここですわ」
アンルーシーの様子を盗み見ている間に来客用でも1番豪華で大きい部屋の前に着いていた。
また道を覚えられなかった。
アンルーシーが居なければ元の部屋へ戻れないかも知れない。
「…失礼します」
扉を開けて入って行くリーディアさんを追って恐縮しながら足を踏み入れた。
白を基調とした部屋はシンプルながらとても上品な家具が揃っていて落ち着いた雰囲気だ。
出窓付近にあるテーブルには紅茶の用意がされており、その椅子に勧められた。
紅茶の香りは甘いけどさっぱりしていて緩やかな湯気が立ち上っていた。
「シルヴィアさん、私はシャイロー様をお慕いしております」
椅子に座った途端にそう宣言されてきょとんとリーディアさんを見つめる。
「私の兄弟はとても多いのです。姉が二人、妹が七人、弟が一人居ます」
「ふぁ!?」
驚きのあまり変な声が出ました。
「長年男児が産まれなくて頑張った結果がこの女所帯。弟も二歳とまだ幼いのです」
「王子様がお産まれになって何よりです」
「弟が産まれるまで時間が掛かり過ぎてしまったが為に争いは絶えませんでしたが…」
急に出たリーディアさんのお家騒動話に口を挟む間もなく静かに紅茶を口にした。
「国王は親戚筋にも男児が産まれる事が少なく、養子を貰う事も出来なかったのです。そして女王が即位するという話が持ち上がりお姉様達はご自分達の結婚を蹴ってまで争いを始めました」
「結婚までも破棄されたのですか!?」
「はい。玉座に女性を…女王を望む声が大きくなり姉2人が争いを始め、お父様もお母様達も気の強いお姉様に意見しても聞き入れてもらえずで。周りの貴族や使用人達は面白可笑しく火に油を注ぐように煽るばかり」
「嫡子は男性に限るというのは世の理。女王を立てたら蔑まれて政が滞ってしまうのでは?それなのに女王を押すという貴族達は自分達の利益になる企みがあるのでしょうか?」
近隣諸国は王に男性を据えている。
それは男尊女卑がとても大きいのもあるが、女性が子供を産む時にどうしても空いてしまう玉座の空白が問題視されての事。
昔は何人か居たそうだけど出産時に亡くなったり、子供が出来た時に誰の子供か分からないという問題が発生して玉座には男性がと暗黙の了解になっていた。
「そうです。それも分からず争いを続ける姉達と止められない家族に私は嫌気がさしてお城を抜け出すようになりました」
妙齢の王女様には家族同士の諍いが我慢ならなかったのかも知れない。
見たくない程に。
兄弟喧嘩としては些か物騒で壮大だものね。
「ギスギスした空間から逃げ、護衛を撒いて城下へ遊びに行くのはとても開放的で楽しかったのです。でも私は本当に無知でした。賑やかで明るい街の暗い部分を知りもしなかった…」
ふとリーディアさんの表情が曇り、目の前のカップにスプーンを入れてクルクル掻き混ぜ始めた。
「私は街中で人攫いに合い、この国まで来てしまいました。それは本当にあっという間であの人達は私を王女とは知らず売り捌かれそうになりました。その時現場に居たのが……」
スプーンから手を離して私に目を向ける。
あ、これはシャイロー様との馴れ初め話だったのかも知れない。
「シャイロー様ですか?」
自分でも分かるくらい目を輝かせてリーディアさんを見つめる。
乙女は恋話が大好物ですから。
「え?いえ、そこに居たのはカインラルフ様でした」
「え?カインが?」
そんな話は聞いた事がない。
何でも話してきたと思って居たのは私だけだったのかも知れない。
そんな考えが胸をチクリと刺激する。
リーディアさんはカインの事を好きだったのかも。
「カインラルフ様達は人攫いをあっという間に倒して助けてくれました。王子様が来てくれたと内心喜んでいたのは事実です」
薄っすら頬をピンクに染めるリーディアさんはとても綺麗で可愛かった。
「見るからに貧しい格好のカインラルフ様に私は隣国の王女だと伝え、無事帰ったら褒美をやると言ったのです。自分が嫌で見ないように逃げてきた尊大な態度や押し付け、上に立っていると…相手を見下しながら」
苦笑を漏らしながらスプーンを置いて紅茶に口を付けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良
恋愛
「 御前を幸せにする為に、俺は買ったんだ 」 〜 闇オク花嫁 〜 毒親である母親の為だけに生きてきた彼女は、 借金を得た母の言葉を聞き、 闇オークションへ売られる事になった。 どんな形にしろ借金は返済出来るし、 母の今後の生活面も確保出来る。 そう、彼女自身が生きていなくとも…。  生きる希望を無くし、 闇オークションに出品された彼女は 100億で落札された。 人食を好む大富豪か、 それとも肉体を求めてか…。 どちらにしろ、借金返済に、 安堵した彼女だが…。 いざ、落札した大富豪に引き渡されると、 その容姿端麗の美しい男は、 タワマンの最上階から5階部分、全てが自宅であり、 毎日30万のお小遣いですら渡し、 一流シェフによる三食デザート付きの食事、 なにより、彼のいない時間は好きにしていいという自由時間を言い渡した。 何一つ手を出して来ない男に疑問と不満を抱く日々……だが……? 表紙 ニジジャーニーから作成 エブリスタ同時公開

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...