愛するということ

緒方宗谷

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21.島根隆弘と水野彩絵

5.過去と照らし合わせて

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 とても不思議な感じがする。島根は、改めて自分がロリコンではないと確信する。見た目が完全な小学生の彼女だから、知り合いは島根をロリだと決めつけたが、断じて違う。その証拠に、彩絵に対して欲情したことは無い。セックスには至っていなかった。
 こういう感覚には記憶がある。以前にも体感したことがある。高校2年生の時に、親戚の子供が遊びにきたことがあった。小学校3年生の尋という男の子だ。母子家庭で、1カ月出張しなければならない親戚に頼まれて、家で預かることになった。
 初めはオドオドしていた尋だったが、仲良くなるととても元気な子供で、朝6時くらいに起きると、島根の上に馬乗りになって、「あそぼーあそぼー」とせがんでくる。学校に行く7時45分まで、島根はご飯も食べさせてもらえずリビングで相手をしていた。
 いつも寝坊助の島根だったのに、尋の声が聞こえるや否や完全に目が覚める。脳みそも肉体もHPは満タン状態だ。
 全身全ての細胞が一瞬のうちに覚醒するさまをまざまざと感じた島根は、超感覚を手に入れたように思った。子を持つ親は強いというのは、こういう感覚があるからか、と思った。
 島根は母性が強い。家族がスマホで取った動画に映る尋と遊んでいる自分の姿は、大人の体型をした小3だ。明らかに高校生の言動ではない。妙に子供言葉で語尾を伸ばし、ニコニコニコニコしている。面白おかしくて、「バカじゃねーのコイツ」と自分の画像に突っ込みを入れた。
 その時に生まれた感情に対して島根は、愛情とはこういうものか? と感じた。愛の世界を垣間見たその時の感覚と同じ感覚を彼女にいだいていた。
 不思議な感覚だ。彼女であり娘の様である。ちなみに妹の様には感じなかった。この時の島根は気が付いていなかったが、これと同じ感覚を味わうには、自分の子供という仮定が条件らしい。
 彩絵を本当に守ってあげたい。目に入れても痛くないとはまさにこのことだと、島根は思った。
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