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26.関係の変化
1.離ればなれ
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景色が秋の装いをし始めてからしばらくすると、加奈子は何事も無かったかように登校するようになっていた。ただ、いつも一緒に学校へ来ていた有紀子とは別々だった。大抵、登校途中の武蔵砂川駅か国分寺駅で加奈子が待っていて、有紀子と合流する。だが、どのような顔をして会って良いのか分からなかった加奈子は、怖くていつもの場所にいることが出来なかった。
教室に入った有紀子は、加奈子が久しぶりに登校してきていることに真っ先に気が付いた。だが同時に、自分を待たずに登校してきたことに距離を感じて、声をかけられず席についた。
もともと別々の友達もいる。特に気負いすることなく誰とでも分け隔てなく話せる加奈子には、有紀子と共通しない友達も多い。2人の距離が開いてから、有紀子は今日それをまざまざと痛感させられた。高2になってから、自分がまだ一度も話したことのないクラスの男子と加奈子が、とても仲が良いことに気が付いたからだ。
会話の内容もよく分からない。メタル?――とかなんとか言っているが、推察するに音楽のことだろう。有紀子は、テレビに出てくる閣下しか知らない。(なんでいつもあんな恐ろしげな姿をしているのだろう。変な人だなぁ)くらいにしか思ったことが無い。
10万何歳だったっけ? 有紀子には理解できないが、それもまた加奈子にとっては格好よく映っていた。
加奈子は机に座り、少年の様な笑みを浮かべてギターを弾く真似をしながら、お気に入りのバンドについて、大野という男子に語っている。
「このバンドは、最後の方でギターにすごいエッジが利くんだよ。圧巻だよね、ドラムが一気に盛り上げていって、興奮するの。
それから突然止むでしょ? そこからのギターソロが感動的。それから終局めがけて全員で疾走するように演奏するの、聞き終わった時にはなんかもう脱力」
「分かるよ。それなら村上さんって、デスメタルなんかも好きなんじゃないの?」
「うん、好きだよ。このバンドが好きっていうのは無いけど、この曲のこの部分が好きっていうのはある」
大野が持っていた雑誌の写真を指差して、加奈子が続ける。
「このバンドのフレーズがすごく好き。ツインベースが重低音で物語を広げて、サビに入るまでのタメが凄過ぎ。重厚なメロディラインで来るぞ来るぞって、来たー!!!! ってところからの高揚感が堪んないよね」
「この間来日した時ライブに行ったけど、すごかったよ」
加奈子はビックリしてバランスを崩し、机がガタンと音を立てた。
「本当⁉ いいなぁ‼ どんな感じ? ねえ、どんな感じ?」
「ポッドで聴くより全然迫力ある。全身で聴く感じ? 爆音が全細胞を突き抜けていくんだ。全ての毛穴が開いちゃうの。骨伝導ってあるでしょ? あれ以上。皮膚も骨も全身使って聴くんだ。ほら、和太鼓とかデカいスピーカーの音を浴びた時の感じ、あれのスゲーやつ。音の波の衝撃がスゲー」
口をあんぐり開けて食い入るように聞く加奈子は、まるで少年の様だ。
教室に入った有紀子は、加奈子が久しぶりに登校してきていることに真っ先に気が付いた。だが同時に、自分を待たずに登校してきたことに距離を感じて、声をかけられず席についた。
もともと別々の友達もいる。特に気負いすることなく誰とでも分け隔てなく話せる加奈子には、有紀子と共通しない友達も多い。2人の距離が開いてから、有紀子は今日それをまざまざと痛感させられた。高2になってから、自分がまだ一度も話したことのないクラスの男子と加奈子が、とても仲が良いことに気が付いたからだ。
会話の内容もよく分からない。メタル?――とかなんとか言っているが、推察するに音楽のことだろう。有紀子は、テレビに出てくる閣下しか知らない。(なんでいつもあんな恐ろしげな姿をしているのだろう。変な人だなぁ)くらいにしか思ったことが無い。
10万何歳だったっけ? 有紀子には理解できないが、それもまた加奈子にとっては格好よく映っていた。
加奈子は机に座り、少年の様な笑みを浮かべてギターを弾く真似をしながら、お気に入りのバンドについて、大野という男子に語っている。
「このバンドは、最後の方でギターにすごいエッジが利くんだよ。圧巻だよね、ドラムが一気に盛り上げていって、興奮するの。
それから突然止むでしょ? そこからのギターソロが感動的。それから終局めがけて全員で疾走するように演奏するの、聞き終わった時にはなんかもう脱力」
「分かるよ。それなら村上さんって、デスメタルなんかも好きなんじゃないの?」
「うん、好きだよ。このバンドが好きっていうのは無いけど、この曲のこの部分が好きっていうのはある」
大野が持っていた雑誌の写真を指差して、加奈子が続ける。
「このバンドのフレーズがすごく好き。ツインベースが重低音で物語を広げて、サビに入るまでのタメが凄過ぎ。重厚なメロディラインで来るぞ来るぞって、来たー!!!! ってところからの高揚感が堪んないよね」
「この間来日した時ライブに行ったけど、すごかったよ」
加奈子はビックリしてバランスを崩し、机がガタンと音を立てた。
「本当⁉ いいなぁ‼ どんな感じ? ねえ、どんな感じ?」
「ポッドで聴くより全然迫力ある。全身で聴く感じ? 爆音が全細胞を突き抜けていくんだ。全ての毛穴が開いちゃうの。骨伝導ってあるでしょ? あれ以上。皮膚も骨も全身使って聴くんだ。ほら、和太鼓とかデカいスピーカーの音を浴びた時の感じ、あれのスゲーやつ。音の波の衝撃がスゲー」
口をあんぐり開けて食い入るように聞く加奈子は、まるで少年の様だ。
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