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二年生の一学期
🐿️
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しばらく終わったことに気がつかなかった奈緒が辺りをきょろり、きょろり、と見渡す。それから頷くと、すぐに出入り口へと向かった。その途中、自動ドアを挟んで外にいた黒桜のサクランボのようにまるくて大きな瞳をした聖子ちゃんカットの生徒と目が合った。自動ドアが開いてすれ違う直前に会釈されたので、会釈を返しながら自動ドアを抜ける。そして、公園の階段を下りて、美術部のコーナーへと戻って行った。
「ただいまぁ」奈緒が声をかけると、心愛が出迎える。
「おかえりー、どうだった? 落合さんの演奏」
「“れげー”だったよ。うーマンボーって か ん じ」奈緒が間を置かずに答える。「なんかねぇ、痛快? とても軽快なリズムで 突然始まったかと思うと、次々と音が 加わってきて、お祭り騒ぎに なった。“ㇳ ン ポ” が 速くて気持ちのいい、弾けるような 音楽で 楽しかった。高揚感あるって言うの? 高揚感って変だけど、うきうきした。それに陽菜ちゃんメインだったよ。指揮者の男子が棒振り回したら、真っ先に弾きだしたの 陽菜ちゃんだったもん。チンチロチンチロチンチロリンって。んふっ、陽菜ちゃんって、参加するの めんどくさそうにしていた割に、とっても楽しそうで、ピンポンポポンピンポンポポンって叩いてた。音の中心で みんなを束ねてるみたいで、格好 よかったよ。わたし、地域交流会、思い出して、バウンズした。思わず バウンズした」
言い終わると奈緒は、コメントに対する返答も待たずに驚愕して前のめる。
「なにそれ、なんか食べてる。ポーップコーンだ、いいな、いいな」
「ケトルコーンですよ。さっき上[飲食エリア]に行って四種類全部勝ってきたんです。成瀬先輩も食べますか?」と彩音が薄黄土色の袋を手に取る。
「もちろんです」奈緒は鼻息荒く、すぐさま答えた。
「それは、プレーンなオリジナルですね」
ベンチに座っている彩音は、自らが差し出した紙袋から一粒取る奈緒に教える。
隣で立って見ていたこよみが四つある紙袋について説明を始めた。
「一応テープで貼り分けてくれました。確か、黄色の水玉が瀬戸内レモン、黒いのが黒胡椒レモン、オレンジ水玉がピーナッツだったかな? 今食べたのには白いのが貼ってあってオリジナル味です。――であってたっけ?」
不安そうに彩音を見る。
「とりあえず順々に食べていってみれば分かるよ、名前からして同じような味にはならないと思うし」
心愛が一粒つまむ。
「オリジナルは、普通の塩味だけど、塩分控えめだね」
「ほんと」それぞれがそう答える。
「次は、瀬戸内レモン味を開けますね」と彩音が開封。
つまみ取った一粒を鼻に寄せた奈緒が、くんくん嗅ぐ。
「かおりはないのに、レモンの酸味がちょこっとするねぇ――ぎゃあ、酸っぱい」
突然叫ぶと、梅干し食べた顔のでかい飛べないヒーローのような口をして、バネのおもちゃのように前後に体を揺すった。そして慌てて、持ってきていた大将のカフェラテを口に含む。
「でもこれ美味しい」と心愛が言う。
「ただいまぁ」奈緒が声をかけると、心愛が出迎える。
「おかえりー、どうだった? 落合さんの演奏」
「“れげー”だったよ。うーマンボーって か ん じ」奈緒が間を置かずに答える。「なんかねぇ、痛快? とても軽快なリズムで 突然始まったかと思うと、次々と音が 加わってきて、お祭り騒ぎに なった。“ㇳ ン ポ” が 速くて気持ちのいい、弾けるような 音楽で 楽しかった。高揚感あるって言うの? 高揚感って変だけど、うきうきした。それに陽菜ちゃんメインだったよ。指揮者の男子が棒振り回したら、真っ先に弾きだしたの 陽菜ちゃんだったもん。チンチロチンチロチンチロリンって。んふっ、陽菜ちゃんって、参加するの めんどくさそうにしていた割に、とっても楽しそうで、ピンポンポポンピンポンポポンって叩いてた。音の中心で みんなを束ねてるみたいで、格好 よかったよ。わたし、地域交流会、思い出して、バウンズした。思わず バウンズした」
言い終わると奈緒は、コメントに対する返答も待たずに驚愕して前のめる。
「なにそれ、なんか食べてる。ポーップコーンだ、いいな、いいな」
「ケトルコーンですよ。さっき上[飲食エリア]に行って四種類全部勝ってきたんです。成瀬先輩も食べますか?」と彩音が薄黄土色の袋を手に取る。
「もちろんです」奈緒は鼻息荒く、すぐさま答えた。
「それは、プレーンなオリジナルですね」
ベンチに座っている彩音は、自らが差し出した紙袋から一粒取る奈緒に教える。
隣で立って見ていたこよみが四つある紙袋について説明を始めた。
「一応テープで貼り分けてくれました。確か、黄色の水玉が瀬戸内レモン、黒いのが黒胡椒レモン、オレンジ水玉がピーナッツだったかな? 今食べたのには白いのが貼ってあってオリジナル味です。――であってたっけ?」
不安そうに彩音を見る。
「とりあえず順々に食べていってみれば分かるよ、名前からして同じような味にはならないと思うし」
心愛が一粒つまむ。
「オリジナルは、普通の塩味だけど、塩分控えめだね」
「ほんと」それぞれがそう答える。
「次は、瀬戸内レモン味を開けますね」と彩音が開封。
つまみ取った一粒を鼻に寄せた奈緒が、くんくん嗅ぐ。
「かおりはないのに、レモンの酸味がちょこっとするねぇ――ぎゃあ、酸っぱい」
突然叫ぶと、梅干し食べた顔のでかい飛べないヒーローのような口をして、バネのおもちゃのように前後に体を揺すった。そして慌てて、持ってきていた大将のカフェラテを口に含む。
「でもこれ美味しい」と心愛が言う。
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