FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🐿️

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「意地でも入れてやるんだから」南は走って拾いに行くと、奈緒が残念そうに言った
「あらら、川まで届かなかった。でも今のうちに他の玉ねぎは、石のとこに隠す」
「玉ねぎをきつね色になるまでゆっくりと炒めて甘みを出すんだよ」
 戻ってきた南は、不自然に持ち上がった白い石をどけて、玉ねぎたちを救出すると、テーブルにおいて、誇らしげに右手を腰に据える。
 奈緒は、言葉を返せずにわなわなと震えながら、眉間に深いしわを寄せて変顔をいくつか繰り出し、桃から卵が産まれそうな顔をした。
 そのやり取りを見て、みんなが吹き出す。
「お肉入れよう」奈緒がお肉を探しだした。
 そこにあやがつく。
「お肉は最後。まな板が汚れるから。はい、玉ねぎ切って」
 南の言葉を聞いて、すかさず杏奈がお肉のパックを隠す。
「え~」と奈緒は叫びながら助けを求めるようにみんなを見渡すが、誰も手を差し伸べてはくれない。仕方なさそうに唇を捩じると、しぶしぶ玉ねぎを切り始める――皮付きのまま。ぶっきらぼうに。
「できた。もういや」
 奈緒は半分も切らずに包丁をぺいっと放って、川辺へと逃げる。その途中でふらついて進むのをあきらめ、小石を投げて遊び始めた。
「ほんと、集中力ないんだから」南がぼやく。
 そんな声をしり目に石を選ぶ奈緒に対して、子を呼ぶ母親のように名前を呼んだ。それでも知らんぷりしたこの子は川のほうへ歩いて行き、途中で突然大きくふらついた。
「危ない」
 よたよた前後に揺れて手で羽ばたく奈緒の背中を、務が受け止めた。
「足元、気をつけないと」
「えへへ、ありがとう」
 奈緒が照れ臭そうに笑ったが、務は真剣な顔を崩さなかった。
 川のそばまで連れてきてもらったこの子は、丸まった猫くらいの石に腰かけて、
「よい! よい!」と、何度か石を投げる。そして、「出来ないなぁ」とため息をつく。
「なにが?」
「ぴょんぴょんぴょん、て」
 務が平たい石を投げると、川面を三回たたいて走った。
「そうそれ」奈緒はそう言って、また石を投げる。
 ぼちゃんと沈むのを見て、務があたりを見渡した。
「だめだよ、まあるい石は。それに横から投げないと」
 言われた通りに平たい石を見つけて、しどろもどろしながら、内側から横に投げる。でも弾まなかった。務が見本を見せて、この子が真似をする。だが何度やってもうまく出来ない。
 石を探して後ろを振り返った時に奈緒がかまどのほうを見ると、南たちが用意してきた薪を組んで、着火をよくするための新聞紙と、拾ってきた地衣類を纏う枯れ枝をくべ始めたところだった。
「共同作業って いいもの ですねぇ」
 しみじみと微笑む奈緒は、そういう自分は手伝っていないよね、と言いたげな顔で微かに驚いた務がその後に見せた綻ぶ頬に満足した様子で、再びかまどのほうに視線を戻した。
 茫々とした空には雲一つない。風はまだどことなく冷たかったが、昨日と比べるとだいぶ過ごしやすい気候だった。




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